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3 強制力作動
しおりを挟む本日は入学式と言うだけあって、周りには生徒以外にも多くの保護者達がいて、王家の馬車から降りた俺達のことを伺っていた。
注目の的だった。
大声を出して騒いでいる場合ではなかった。俺は慌ててお口チャックをする。
俺より2歳上のアルバンは、今年度から最高学年の3年生になる。
王族のアルバンと知り合いになりたいと思う者は多くいるけど、学園でのアルバンには、側近といわれる人達が多数おり、ガッチリと周りを固めている。そう簡単に近づくことは出来ないって聞いている。
それなのに今のアルバンには、謎のモブが隣にいて、それも親しげだから気になるのだろう。
ビシバシと視線が飛んでくるのが痛い。
さっさと式の行われる講堂へと向かおうと、アルバンを引っ張る勢いで前方へと歩き出す。
そして気が付いた。
周りの人垣よりも少し後方にいたけど、珍しいピンクゴールドの髪だったから目についた。
ヒロインだ!
乙女ゲームのヒロイン、ユリアナ=ハウスに違いない。
画面越しに見ていた時よりも、何倍も実物のユリアナは可憐だった。周りのモブ達に紛れることなく一人だけ輝くように目立って見える。
流石は主人公というだけはある。これがヒロインオーラというものか。
無理だし。
こんなに可愛らしい主人公に対抗しなければならないというのか? 最初から勝敗は決まっているじゃないか。
「ティティ、どうしたの?」
ユリアナを見つめたまま固まってしまった俺に、アルバンが不思議そうに声をかけてくる。
アルバンの問いに答えたいけど、ユリアナから目を外せない。
胸の中に謎の感情が次々と湧き上がってきて身動きがとれない。
どんどんと感情は大きくなってくる。
ギュッと制服の胸元を掴んで耐えようとするけど、治まるどころか酷くなっていく。
俺とユリアナは初対面だ。
俺はユリアナのことを乙女ゲームのヒロインだと思い込んでいるけど、実際は違うかもしれない。この世界が乙女ゲームの中だというのは、俺の妄想なのかもしれない。
だからユリアナに先入観を持つのは間違っている。こんな感情を持つのはおかしいって分かっている。
分かっている。分かっているのに……。
「ティティどうしたんだい、一体誰をそんなに見つめているの? 悪口を言われた? それとも意地悪をした奴がいた? 教えてくれるかい。私が処分してあげるよ」
俺の耳元でアルバンが怖いことを言っているけど、今の俺はそんなことを気にかける余裕なんて無い。
「ティティッ!」
俺は腰に回されていた腕を振りほどくと、アルバンの制止を振り切って、ユリアナへと向かって走る。
人垣をかき分け、ユリアナの目の前までくると立ち止まる。
ユリアナは、いきなり近づいてきた俺に驚いているのだろう、その綺麗な瞳を大きく見開いている。
俺は胸を張ると左手を腰に当て、右手でユリアナをビシリと指さす。
「お前のかーちゃん、でーべーそぉー!!」
高らかに言ってのけてやったのだった。
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