乙女ゲームの強制力を舐めていました。このまま立派な悪役令息になってしまいそうです。

棚から現ナマ

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番外編 乙女ゲームの日常(後編)

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「ティティ」
ぼんやりと楽しそうな3人を見ていたら、名前を呼ばれてギクリと身体が強張った。
いつの間にか背後にアルバンが立っていた。それも腕を組んで俺を睨んでいる。

昼休みになったから、アルバンが食事に誘いに来てくれたのだろう。
アルバンは、よく1年B組に来てくれる。というか休み時間の度に来てくれる。
アルバンに会えるのは凄く嬉しいけど、来すぎだとは思う。

「ユリアナの行動は、ワザとなのだと何度も言っているだろう。ティティの気を引くために近くで転んで見せているのだから、関わったらいけないと何度も言っているのに、また手を貸そうとしていたよね」
「え、いや、あの……」
何度もユリアナが俺の近くで転ぶものだから、アルバンはユリアナの自作自演だと言っている。
そして、その度に俺に関わらないようにと注意する。

俺がユリアナに意地悪をしていないと、アルバンは分かってくれている。俺のことを信じてくれる。そのことが、とっても嬉しい。
だけどユリアナはワザとじゃないのを分かってはくれない。乙女ゲームの強制力とは言えないし……。
俺は困ってしまう。

「ティティ」
「だっ、駄目だから。教室で抱きしめたら駄目だ!」
返事をしないことにアルバンが、俺へと腕を伸ばす。

あの入学式以来、アルバンには遠慮というものが無くなった。元々なかったかもしれないが、所かまわず抱きしめようとしてくる。
俺もアルバンに抱きしめられるのは嫌じゃない。というか嬉しい。絶対言わないけど。
でも駄目だ。こんな教室の真ん中で、他の生徒達が、こちらを見ているというのに抱きしめられるなんて、恥ずか死ぬ!

あの時だって……。
入学式の後のことを思い出し、俺は真っ赤になってしまう。
講堂の前で、多数いた生徒達や側近達に注目されていたのに、ラブシーンもどきをやってしまった。
それに、式が終わるやいなや、アルバンから拉致られた俺は、馬車に押し込められると、王宮にあるアルバンの私室に連れ込まれた。
王子妃教育の為に、たびたび王宮に通っているから慣れてはいるんだけど……。アルバンと一緒だと、周りの人達の目が生暖かくなるんだよ。

「だからぁ、俺とユリアナは初対面だってば。ユリアナは特待生入学するぐらいに優秀だって、噂で聞いていただけだよ」
アルバンの私室で、ユリアナに暴言を吐いたことを追求されるのかと思ったら、暴言のことよりも、なぜユリアナと知り合いなのかをしつこく聞かれた。
アルバンにガッチリと腰を抱えられて膝抱っこされた。それも対面だから逃げられない。

アルバンが納得してくれるような答えを俺は返すことができない。だって前世の記憶だなんて言えるわけがない。頭の中を疑われるだけだ。

「ん……」
俺の態度にじれたのか、いきなりキスをされる。それも深い。
強引に入って来るアルバンの舌が俺の口内を好き勝手に動き回る。
アルバンの胸に両手をついて距離を取ろうとしても無駄で、より強く抱きしめられる。

ビクリ。
キスに翻弄されていると、アルバンの手が上着の裾から入って来た。
アルバンの胸をこのまま押し続けるべきか、侵入してきた手を止めるべきか。
そんな逡巡をしていると、器用にシャツをたくし上げ、直に素肌に触れられる。

キスだけでも力が抜けそうなのに、肌に直接与えられる刺激に、意識が飛びそうだ。
キスは続いていたはずなのに、いつの間にかアルバンの唇は、俺の首筋や鎖骨へと移動していた。
素肌を撫でていた手は、俺の服を脱がせていく。

「私のティティ、愛しているよ」
「お、俺も。俺もアルバンが好きぃ……」
いつもだったら恥ずかしくて言えない言葉が、スルリと口から出てしまう。
アルバンの胸に縋りつく

「本当に?」
微笑んでいるのに笑っていない瞳を向けられ、ぼんやりしていた意識が一気に戻る。オシッコちびるかと思った。

それからは思い出したくない。
『アルバンだけが好き』『アルバン以外は好きにならない』などなど。
色んな恥ずかしい言葉を言わされた。
それも目を見ていないとか、心が籠っていないとか、いちゃもんを付けられては何度も何度も強要された。
抵抗したり恥ずかしがったりすると、その度に際どい所を撫でられたり舐められたりして、最後には泣きながらアルバンに縋りついた。
恥ずか死ぬ。

その後、さんざんやることやられた俺は、ルバンに抱きしめられたまま眠ってしまい、王宮にお泊りコースになってしまった。
夕飯も食べていないのに。

次の日の朝、周りからの生温かい目で見られながら朝食を食べなきゃいけない俺のことを、アルバンはおもんばかってはくれない。
せっかくの王宮の料理なのに味がしない。美味しかったけどさ。


「ティティ、ユリアナには関わらないって約束して」
恥ずかしいことを思い出して俯いてしまった俺に、アルバンの声が届く。俺を抱きしめようと、また腕が伸ばされる。

「分かっているってば」
アルバンの胸に手を突っ張って、伸ばされる腕から逃れる。

それなのに……。
あんな目には二度と会いたくないと思っているのに、どうしてもユリアナが気になってしかたがない。いつの間にか目で追ってしまう。無意識なんだから俺は悪くない。これもゲームの強制力なのかもしれない。
目ざといアルバンに気づかれて、その度私室に連れ込まれている。

俺は、乙女ゲームの強制力で悪役令息になってしまっている。
ただ、ヒロインに意地悪するよりも、恥ずか死ぬ目に会ってしまっているのだった。



――― ――― ――― ―――


※ これにて終わりです。
ありがとうございました。




※ 10月22日午後8時20分より、新しいお話を投稿します。
『獣人国王の婚約者様』です。
女性向けのお話です。
大人しくて、なかなか自分の思いを口に出せない貴族令嬢と、プロポーズを受け入れてくれたと思い込んでしまった獣人の王様とで、すれ違いしてしまう両片思いのお話です。
それほど長いお話ではありません。10話前後になると思います。
よろしければ、見てやって下さい。

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感想 3

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みんなの感想(3件)

m
2024.10.14 m

かわいい悪役令息様にめろめろです♡
最後まで楽しみにしております☺️

2024.10.15 棚から現ナマ

感想をありがとうございます。

迫力の無い悪役令息です。

本日最終回ですが、番外編が続きます。
最後まで、お付き合いお願いします。

解除
ヨミ
2024.10.14 ヨミ

暴言のチョイスが可愛すぎる( ૢ⁼̴̤̆ ꇴ ⁼̴̤̆ ૢ)~ෆ
サイコー!www

2024.10.14 棚から現ナマ

感想をありがとうございます。

箱入りボンボンのティティちゃんにすれば、目一杯の暴言だと思われます。

短編で、すぐに終わってしまいますが、番外編の最後まで、お付き合いお願いします。

解除
鼻から牛乳
2024.10.12 鼻から牛乳

ナイス暴言w
何度も読み返しちゃってますw

2024.10.13 棚から現ナマ

感想をありがとうございます。

もうすぐ悪辣(?)な悪役令息になります。

お付き合い、よろしくお願いします。

解除

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