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36 ルロイ
しおりを挟む気が付いたら王都の騎士団病院にいた。
意識の無い俺を王都まで運ぶなんて、人権無視だ。
俺が意識を取り戻さないので、医者に診せる必要があったのだが、キトン村には医者がいない。それに原因不明の為、近場にいる医者では診ることができなかったため、王都に連れ帰ったと言われた。
酷い。せっかく魔の森まで行くことかできていたのに。すぐ近くにトニーがいたのに。会えないどころか、また王都に逆戻りだなんて。
俺はそれほど長い間、眠り続けていた。
身体の中に溜め込んだ魔素を使い果たし、身体も酷使したから。
逆に後遺症も無かったのが奇跡だと医者に言われた。それほどボロボロだったみたいだ。
驚いたことに、俺の身体は騎士団に入団する前。それどころか魔素を使うようになる前の色に戻っていた。
日に焼けない白い肌と、銀髪に近い淡い金色の髪に薄く青の瞳。
毎日俺の世話を焼きに来てくれるジャークとフリックからは、儚げな美人になったといわれた。なんだよそれ。
面白いことに、使い果たしてしまったはずなのに、身体の中に魔素があるのが分かる。それも濃く。
倒れたのが魔の森の近くだったから、魔素が漂っていたのだろう。気を失ってはいたけど、無意識に体内へと取り込んだみたいだ。
それなのに俺の色は白いまま。
全ての魔素を一度使い切ったからなのか、身体の中にある魔素が変わった。それは自分がやろうと思ってやったわけじゃなくて、気が付いたらそうなっていた。
今までは魔素を吸い込むと、血と共に全身に巡っているイメージだったけど、今は胸の中央に魔素が集まって塊になっている感じ。
魔素を使おうと思ったら、そこから取り出すイメージだ。
血と共に身体を巡っていた魔素が一カ所に集まったから、外見の変化が無くなったのだろう。
面白いことに、今までよりも魔素が使いやすいし、量も多い。身体能力も上がったように感じる。まだベッドに寝たままだから、ハッキリとは分からないけど。
寝込んでいた俺は、気づくと15歳になっていた。
もう騎士団との契約は切れた。縛られることが無くなった。いつでもトニーの元へと帰ることができる。身体が動くようになったら、すぐに騎士団とはおさらばだ。金も3000万エタあるのだから。
元が丈夫だったから、目が覚めてからの回復は早かった。すぐにベッドから起き上がれるようになった。
明日にはトニーの元へ帰る。ジャークとフリックにそのことを伝えると、待ったがかかった。
今までジャークとフリックが俺を止めることは無かったのに……。なんで?
「お前はスタンピートから国を護った英雄だぞ。ただ働きするのはバカらしいじゃないか」
「ただ働き?」
「そうだぞ、スタンピートのせいで壊されていたかもしれない、いくつもの村や町を救ったんだ。騎士団の給料とは別に報奨が出るぞ。身体を張って止めたんだから、貰うものは貰わなきゃ、勿体ないじゃないか」
「ドラゴンの時みたいに?」
「ああ、あの時は裕福とはいえ辺境伯という一貴族家からの報奨金だったが、今回は王家だ。もっと高額になるはずだ」
「ルロイは命がけで働いてくれた。その対価はちゃんと受け取るべきだ」
二人の言うことは分かった。
本当に、あの時は死ぬかもしれないと思う程に大変だったから。
やったことを認めて貰えるのは嬉しい。
そんなに金に執着はしていないけど、金があるに越したことはない。だって金が多ければトニーに贅沢をさせてやれる。
ただスタンピートの状況や規模、どれほどの被害が出ていたのかを調べるために、報奨の支払いには時間がかかると言われた。
それならば、俺はトニーの元に帰りたい。ドラゴンの時みたいに、入金してもらえればいいから。
それなのに、二人から駄目だと止められた。
今回は国からの報奨になるために、報奨を貰う時は、国王陛下より皆の前で手渡しされるから、直接本人が受け取らなければならない。
ドラゴンの場合は、慰労のパーティー会場でガイドロ辺境伯が俺を賞賛したのが、それに当たるらしい。
俺の耳はちくわだったから、報奨内容を言われたかもしれないけど、聞いちゃいなかった。その後、私兵団に入れとかウザかったから、言われたこと自体、忘れていた。
俺が村に帰っていると、報奨を貰うために、また王都に来なければならない。
報奨の支払い準備ができたと王家から使いの者が呼びに来て、それから王都に行くには、余りにも時間がかかる。
それに報奨の査定が早く終わるかもしれない。
王都から出ることを禁止された。トニーに早く会いたいのに。
イライラしながら王家からの連絡を待っていると、やたらと茶会だ舞踏会だと招待されるようになった。
茶会って何だ? お茶を飲むのに、集まる必要があるのか? それに舞踏会って俺に踊れってことか? 俺は踊りなんか習ったことなんて無いから、踊れるわけがない。
今までは俺のお世話係になってしまっているジャークとフリックが、招待状を持って来る。
もちろん速攻で全て断っている。
「ルロイ、残念ながら今回の招待は断れない」
「なんで?」
「待ちに待った王宮からの招待だ」
ジャークが手に持っている、やたらとキラキラした封筒を振って見せる。
「良かったな、やっと報奨が決まったんだろう。陛下から報奨を貰えば帰れるぞ」
「やった、やっと村に帰れる」
「おいおい、国王陛下に会えるなんて、凄く名誉なことなんだぞ」
喜ぶ俺に、フリックが呆れたような顔をしている。
別に国王陛下になんて会わなくてもいい、俺が会いたいのはトニーだけだ。
「謁見用の服を作らなきゃいけないな。騎士団から紹介状を貰えるそうだから、団長御用達の服屋に行くぞ」
「そういえばルロイは、正装の騎士服を持っていないよな。普通は入団式の時に作るんだけどな」
「えー、面倒くさい」
俺は生まれてこの方、オーダーメイドなんてしたことはない。そんな面倒なことをしないと、王宮には行けないのか。ドラゴンの慰労のパーティーでは、正装を持って行っていなかったからと、全員が制服だったのに。
報奨の査定を待っていたから、俺は村の成人の儀に出ることが叶わなかった。
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