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35. カロリナ、なにかに巻き込まれた。
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村に入ると店らしきものがあった。
でも、誰もいない。
野菜や果物などの商品は置かれている。
無人販売だ。
通貨がないから販売じゃないか?
「好きなだけ持ってゆきな!」
後ろから声がした。
家の路地にビーチチェアーのような椅子に腰かけているおばさんであった。
「初にお目に…………」
「堅苦しいあいさつはいらないよ。店の品は好きなだけ持ってゆきな」
「ありがとうございます」
「そこの奥様、少しお訪ねしてもよろしいでしょうか?」
「何だい」
「屋敷に来られるお客様は何人になられるのでしょう」
「さぁね、さっぱり判らないさ。行きたがる奴も、行きたがらない奴もいるからね。女・子供を入れて300人。それ以上は増える事はない」
「承知しました」
「その八百屋の隣の店は肉屋だ。奥に扉の地下室に取れたてボアの肉が入っている。それも好きに使っていいよ」
「その横の荷車をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「好きにしな!」
オルガとおばさんの話は終わったようだ。
「おばさんは何をやっているの?」
「見て判らないかい。のんびりしているのさ!」
「仕事はないのかしら?」
「私は飯炊き女さ。あんたらが来てくれたので暇になった。ありがたいことさ」
飯炊き女が座っている奥には大きな家があり、笑い声や叫び声が聞こえた。
「この奥は酒場になっている。猟師は暗い内から狩りに出て、獲物を仕留めたら帰って来て肉を解体する。それが終わると、あ~やって酒を飲んでいるのさ」
「私が入っても」
「子供は駄目だ!」
カロリナは入れてくれないらしい。
酒が欲しい訳ではない。
そのおつまみを味見したかった。
「餓鬼が酒を飲むものじゃない。オレンジにしな!」
「オレンジがあるの?」
「反対側の路地を抜けるとオレンジの木が生えている。熟れている奴なら好きなだけ持っていいさね」
「ありがとう。すぐに行きます」
カロリナが走り出すとオルガが慌てた。
エルもすぐに追い駆け、屋根の上にいた影も移動する。
路地を抜けると急に霧が立ち込める。
真っ白になった。
真っ白な中を進むがオレンジの木など見当たらない。
もう少し歩いてゆく。
オレンジの木ではなく、家が見えてきた。
霧の中にぽっかりと家が一軒?
ドタン!?
蹴られた勢いで扉を突き破って一人の男が飛ばされて落ちてくる。
男はごろごろと転がった。
「おい、おい、おい、あたいの妹に手を出そうとはいい度胸だ。死ぬ覚悟はできているのだろうな!」
「死ぬつもりはない」
男は起き上がった。
が、女が飛んで回し蹴りで男を吹き飛ばした。
過激な女だ。
ダンジョンに入って鍛えているカロリナの目で追えない。
男もよく生きているな!?
女は指をぽきぽきと鳴らしながら近づいてゆく。
「まだ、痛い目にあいたいのか?」
「俺にくれ! 妹を俺にくれ!」
わぁ、中々な熱愛家なのね!
カロリナはちょっと感動。
「エリザ、イザベア、クロア、いったい何人目だ」
「今度は本気だ」
「どの口で言う。全員に本気、本気、本気、次こそ本気か?」
「俺はいつだって、ほん…………」
男が叫ぶと言い終わらない内に腹を蹴られ、倒れた所で何度も踏み付ける。
男の顔も体もボロボロだ。
死んでいない方が不思議だ。
死ねばいい!
カロリナも心の底からそう思う。
側室、側女は仕方ない。
男の甲斐性だ。
順列を付けない男は最低とお母様も言っていた。
カロリナもそう思う。
「さぁ、落とし前をどうつけてやろう」
「俺は本気だ」
「まだ、言うか。その根性だけが認めてやろう。よし、いいだろう。なら試してやろう。そこに転がっている死体を墓まで連れて行って埋めてきな」
「それでいいのか!」
「あぁ、それだけだ。だが、墓には先客がいる。ちゃんと説得できれば、すぐに終わる。このティンポル・ディムスで駄目ならキャリハッド・ヴィコルスに行きな。そこも駄目ならティンポル・コナンだ。その次はイムログ・ファダ、最後にキル・ブリージャ辺りか」
「どういう意味だ」
「説得に失敗すれば、埋めさせて貰えない。だが、それだけ回れば、どこかに埋めさせて貰えるだろう」
「どうやって連れていけば?」
「背負ってゆくに決まっている」
死体は肉もタダれたゾンビのような姿をしている。
これを背負うのはかなりの苦痛だ。
近づくだけで鼻に異臭が襲った。
「これを背負えと!」
「嫌なら止めても構わん。妹はやらん」
「墓に埋めたら許してくれるな」
「埋まられたならな!」
男は我慢して背負うようだ。
それをカロリナは茫然と見ていた。
基本的に無関係だし。
「おい、そこの稚児。見届け人となってくれ!」
「どうして私が?」
「迷っているのであろう。帰り道を教えてやるぞ」
「道は教えて欲しいが、それに付き合う義理はない。私にメリットもないわ」
「ははは、確かに義理はないな。ならば、この七色の林檎をやろう」
カロリナは目を輝かせた。
見たこともない林檎。
だが、きっと美味いに違いない。
そう予感した。そう確信できた。理由は判らないがきっとそうだ。
「美味そうだ」
「あぁ、絶品だ」
涎が垂れてくる。
何ともいえないほのかな香りが漂ってくる。
「くれ、金は払う」
「金はいらん。見届け人になれ!」
「判ったわ。こいつがその死体を墓に埋めるのを見届ければいいのね」
「では、頼んだ」
そう言うと女が消えた。
林檎を置いてゆけ!
カロリナは残念がった。
仕方ない。
早く終わらせよう。
ふり返ると男が死体を背負っていた。
「で、墓はどこにあるのですか?」
「俺も知らん」
行き成り、途方に暮れた。
墓場も判らずにどうしろというのだ?
そう思っていると、ぎぎぎと死体の腕が動き、どこかを指差した。
あっちに墓があると!
「では、行ってみましょう」
「まだ、墓があるとは決まった訳ではないだろう」
「他に当てもないなら行けばいいのです」
「子供は気楽に行ってくれる。こいつ、意外と重い。無駄に歩きたくない」
「ぐだぐだと言ってないで行きますよ。それとも一生そこで立っていますか?」
「判った」
男が死体を背負いながらカロリナの後に続いた。
でも、誰もいない。
野菜や果物などの商品は置かれている。
無人販売だ。
通貨がないから販売じゃないか?
「好きなだけ持ってゆきな!」
後ろから声がした。
家の路地にビーチチェアーのような椅子に腰かけているおばさんであった。
「初にお目に…………」
「堅苦しいあいさつはいらないよ。店の品は好きなだけ持ってゆきな」
「ありがとうございます」
「そこの奥様、少しお訪ねしてもよろしいでしょうか?」
「何だい」
「屋敷に来られるお客様は何人になられるのでしょう」
「さぁね、さっぱり判らないさ。行きたがる奴も、行きたがらない奴もいるからね。女・子供を入れて300人。それ以上は増える事はない」
「承知しました」
「その八百屋の隣の店は肉屋だ。奥に扉の地下室に取れたてボアの肉が入っている。それも好きに使っていいよ」
「その横の荷車をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「好きにしな!」
オルガとおばさんの話は終わったようだ。
「おばさんは何をやっているの?」
「見て判らないかい。のんびりしているのさ!」
「仕事はないのかしら?」
「私は飯炊き女さ。あんたらが来てくれたので暇になった。ありがたいことさ」
飯炊き女が座っている奥には大きな家があり、笑い声や叫び声が聞こえた。
「この奥は酒場になっている。猟師は暗い内から狩りに出て、獲物を仕留めたら帰って来て肉を解体する。それが終わると、あ~やって酒を飲んでいるのさ」
「私が入っても」
「子供は駄目だ!」
カロリナは入れてくれないらしい。
酒が欲しい訳ではない。
そのおつまみを味見したかった。
「餓鬼が酒を飲むものじゃない。オレンジにしな!」
「オレンジがあるの?」
「反対側の路地を抜けるとオレンジの木が生えている。熟れている奴なら好きなだけ持っていいさね」
「ありがとう。すぐに行きます」
カロリナが走り出すとオルガが慌てた。
エルもすぐに追い駆け、屋根の上にいた影も移動する。
路地を抜けると急に霧が立ち込める。
真っ白になった。
真っ白な中を進むがオレンジの木など見当たらない。
もう少し歩いてゆく。
オレンジの木ではなく、家が見えてきた。
霧の中にぽっかりと家が一軒?
ドタン!?
蹴られた勢いで扉を突き破って一人の男が飛ばされて落ちてくる。
男はごろごろと転がった。
「おい、おい、おい、あたいの妹に手を出そうとはいい度胸だ。死ぬ覚悟はできているのだろうな!」
「死ぬつもりはない」
男は起き上がった。
が、女が飛んで回し蹴りで男を吹き飛ばした。
過激な女だ。
ダンジョンに入って鍛えているカロリナの目で追えない。
男もよく生きているな!?
女は指をぽきぽきと鳴らしながら近づいてゆく。
「まだ、痛い目にあいたいのか?」
「俺にくれ! 妹を俺にくれ!」
わぁ、中々な熱愛家なのね!
カロリナはちょっと感動。
「エリザ、イザベア、クロア、いったい何人目だ」
「今度は本気だ」
「どの口で言う。全員に本気、本気、本気、次こそ本気か?」
「俺はいつだって、ほん…………」
男が叫ぶと言い終わらない内に腹を蹴られ、倒れた所で何度も踏み付ける。
男の顔も体もボロボロだ。
死んでいない方が不思議だ。
死ねばいい!
カロリナも心の底からそう思う。
側室、側女は仕方ない。
男の甲斐性だ。
順列を付けない男は最低とお母様も言っていた。
カロリナもそう思う。
「さぁ、落とし前をどうつけてやろう」
「俺は本気だ」
「まだ、言うか。その根性だけが認めてやろう。よし、いいだろう。なら試してやろう。そこに転がっている死体を墓まで連れて行って埋めてきな」
「それでいいのか!」
「あぁ、それだけだ。だが、墓には先客がいる。ちゃんと説得できれば、すぐに終わる。このティンポル・ディムスで駄目ならキャリハッド・ヴィコルスに行きな。そこも駄目ならティンポル・コナンだ。その次はイムログ・ファダ、最後にキル・ブリージャ辺りか」
「どういう意味だ」
「説得に失敗すれば、埋めさせて貰えない。だが、それだけ回れば、どこかに埋めさせて貰えるだろう」
「どうやって連れていけば?」
「背負ってゆくに決まっている」
死体は肉もタダれたゾンビのような姿をしている。
これを背負うのはかなりの苦痛だ。
近づくだけで鼻に異臭が襲った。
「これを背負えと!」
「嫌なら止めても構わん。妹はやらん」
「墓に埋めたら許してくれるな」
「埋まられたならな!」
男は我慢して背負うようだ。
それをカロリナは茫然と見ていた。
基本的に無関係だし。
「おい、そこの稚児。見届け人となってくれ!」
「どうして私が?」
「迷っているのであろう。帰り道を教えてやるぞ」
「道は教えて欲しいが、それに付き合う義理はない。私にメリットもないわ」
「ははは、確かに義理はないな。ならば、この七色の林檎をやろう」
カロリナは目を輝かせた。
見たこともない林檎。
だが、きっと美味いに違いない。
そう予感した。そう確信できた。理由は判らないがきっとそうだ。
「美味そうだ」
「あぁ、絶品だ」
涎が垂れてくる。
何ともいえないほのかな香りが漂ってくる。
「くれ、金は払う」
「金はいらん。見届け人になれ!」
「判ったわ。こいつがその死体を墓に埋めるのを見届ければいいのね」
「では、頼んだ」
そう言うと女が消えた。
林檎を置いてゆけ!
カロリナは残念がった。
仕方ない。
早く終わらせよう。
ふり返ると男が死体を背負っていた。
「で、墓はどこにあるのですか?」
「俺も知らん」
行き成り、途方に暮れた。
墓場も判らずにどうしろというのだ?
そう思っていると、ぎぎぎと死体の腕が動き、どこかを指差した。
あっちに墓があると!
「では、行ってみましょう」
「まだ、墓があるとは決まった訳ではないだろう」
「他に当てもないなら行けばいいのです」
「子供は気楽に行ってくれる。こいつ、意外と重い。無駄に歩きたくない」
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