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42. カロリナは平常運転、何てこった!
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カロリナは屋敷(王宮)から出た。
その瞬間に皆が息を飲んだ。
空を見上げた。
目の前にはあるハズのない島全体を包み込むような巨大な木が広がっていたからだ。
そう、世界樹の木を直視した。
「えっ、どういうこと?」
「大きな木です」
「あの場所は庭園だったハズですよね」
「はい、そうです」
「目の錯覚ではありませんね!」
「そうだとすると集団幻覚ということになります」
「カロリナ、どういうこと説明してよ」
「知らないわ」
「猫さん、犬さんが一杯です」
「そうね!」
「これほど多くの獣人を見るのははじめてでございます」
「私もよ!」
そうだ!
町の風景もがらりと変わっていた。
それだけではない。
人種ではなく、獣人や亜人が圧倒的に多い町に変わっていた。
錯覚や幻覚幻聴ではないのは判る。
「けけけ、驚くことはないさ。妖精王が妖精界と人界の間に作られたユグドラシルの世界さね」
「妖精王が作ったの?」
「そうさ、世界樹の木を核にして7精霊の力を借りて、この世界を創造されたのさ」
「妖精の国とは、ここの事なのね!」
「けけけ、そういうこと。世界の裏側。あたいら達からすれば、人の世界の方が裏側だが、妖精、獣人、亜人が住む楽園がここだ」
表の屋敷(王宮)の周りには人家が並び、人口の半分である5,000人が暮らしているのでそれなりに活気のある町であった。
しかし、この裏の世界では、表の世界が閑散としている印象を受けるくらい町は賑わっている。
所狭しと市が立ち、獣人や亜人が店を開いていた。
赤いとんがり帽子を被った妖精のコニが自慢する。
「この島は妖精王に使える妖精の住処さ! 王宮で使う様々な衣装や祭具を作って納めている。ドワーフ共は宝具や剣、鎧を作っている。そして、各地に住む妖精、獣人、亜人たちが妖精王に様々な品を納めて来ている」
「納めているというより、売り買いをしているようにしか見えませんわ」
「ここに来れば何でもある。必要な物を交換してそれぞれの村に持ち帰っているさ」
コニの説明では、家や店を持っているのは妖精王に使える者のみ。
その他の村の者は路上で露店を立てている。
王宮に仕える小人族が多いらしい。
そのためか赤、白、黄色など様々なとんがり帽子を被った小人族を見かける。
もういいだろうと思ったのか、コニが歩きはじめた。
カロリナ達はそれに付いてゆく。
しかし、すぐに脱線した。
「こ、こ、これはクゲルココの実ではありませんか!」
「カロリナ様、それは何?」
「御婆様から一度貰ったことのあるとても美味しい木の実です。ミスホラ王国の特産と聞いていました。でも、昨日の郷土料理に出てきません。町のどこにも見かけないのでがっかりしていました。こちらの世界にあったのね!」
「お嬢ちゃん、買うなら早くしてくれ!」
「買います。買います」
カロリナはエルから金貨を受け取って渡した。
しかし、あまり反応はよくありません。
金貨を睨んで渋い顔をした。
「金貨は好かれない。1,000枚で1個という所か!?」
「それは暴利でしょう」
「こんなものを貰っても使い道がない」
「カロリナ様、これは如何でしょう」
「これは?」
「胡椒が入った小袋です。野営の料理に使えるのでいくつか持って来ております」
胡椒袋を見せると、獣人の目の色が変わった。
「これは胡椒か!」
「そうよ。どう、これなら交換できる」
「できる。というより、させてくれ!」
思わぬ好感。
エルが両手一杯のクゲルココの実を持つことになった。
それもカロリナが食べる為にエルに持たせているだけであり、その3倍の量がエルの魔法袋に入っている。
カロリナはそれを食べながら変わった物を見つけると足が止まった。
「ねぇ、クゲルココの実と交換できる?」
「そうだな。クゲルココの実1個とこれ4つなら交換してもいいぜ!」
「じゃぁ、3個と交換して」
「あいよ」
さらに何か見つけると足が止まる。
路上の店主は獣人や亜人ばかりだ。
コニが嬉しいのか、頬を緩ませて苦笑いを零した。
ラファウが聞く。
「何か、おかしいですか?」
「あんたとこの姫さんは肝が据わっているな!」
「そう見えますか?」
「かなりの人間を案内したが、ここに来るとおどおどして警戒心が上げる奴ばかりだった。最初から和んでいる奴をはじめて見た」
「当然です。我らのお嬢様です」
獣人や亜人を警戒しないカロリナに好感を持ったようだ。
妖精種の血が混じっているのは察していた。
西の妖精族は人種と同じくらい偏見が酷く、獣人や亜人を下に見る傾向が強かった。
実に珍しい。
赤いとんがり帽子を揺らして複雑層に笑っていたのだ。
しかし、その笑顔もすぐに消える。
「おい、いつまで買い物をしているつもりだ!」
「次に来られるか判らないのよ。最優先事項です」
「何しにここに来たのか判っているのか?」
「もちろん、食べ歩きです」
コニは目が点になった。
国王の馬鹿息子ドムノ・ヒイリイを助けて、ゴブリン・エンペラーが率いる2万匹の大軍を打ち払う。
それを可能にする為に七精霊の加護を貰いにやってきた。
決して妖精の国に『食べ歩き』に来たのではない。
「ドムノさん、アンブラに美味しい店を紹介して頂けませんか?」
「も、もちろんです」
「さぁ、案内して!」
「あちらです。アンブラさん」
カロリナはドムノを味方に引き入れて食べ歩きを再開した。
「ちょっと待て、何てこった!」
目的を忘れてドムノが率先して店を紹介する。
ちょっと引く影だが、その仕事は護衛だ。
影を出汁にしても怒る様子もない。
従者エルはいつでもカロリナの味方で止める訳もなく、アザとニナは一緒に楽しんでいる。
ニナを密かに思うジクはニナのことで頭は一杯だ。
カロリナをよく知るマズルはそうそうに諦め、子供達が走り出した後を追う。
盲信するルドヴィクはただ付いてゆき、智者であるラファウは思考する。
この行動に何の意味があるのか?
もちろん、意味などない。
ただ、美味しい物を食べたいだけである。
「おい、ちょっと待て! 何の為に来たのか判っているのか?」
コニは焦った。
しかし、もうカロリナを止められる者は誰もいなくなった。
珍しい食べ物がカロリナを待っていた。
その瞬間に皆が息を飲んだ。
空を見上げた。
目の前にはあるハズのない島全体を包み込むような巨大な木が広がっていたからだ。
そう、世界樹の木を直視した。
「えっ、どういうこと?」
「大きな木です」
「あの場所は庭園だったハズですよね」
「はい、そうです」
「目の錯覚ではありませんね!」
「そうだとすると集団幻覚ということになります」
「カロリナ、どういうこと説明してよ」
「知らないわ」
「猫さん、犬さんが一杯です」
「そうね!」
「これほど多くの獣人を見るのははじめてでございます」
「私もよ!」
そうだ!
町の風景もがらりと変わっていた。
それだけではない。
人種ではなく、獣人や亜人が圧倒的に多い町に変わっていた。
錯覚や幻覚幻聴ではないのは判る。
「けけけ、驚くことはないさ。妖精王が妖精界と人界の間に作られたユグドラシルの世界さね」
「妖精王が作ったの?」
「そうさ、世界樹の木を核にして7精霊の力を借りて、この世界を創造されたのさ」
「妖精の国とは、ここの事なのね!」
「けけけ、そういうこと。世界の裏側。あたいら達からすれば、人の世界の方が裏側だが、妖精、獣人、亜人が住む楽園がここだ」
表の屋敷(王宮)の周りには人家が並び、人口の半分である5,000人が暮らしているのでそれなりに活気のある町であった。
しかし、この裏の世界では、表の世界が閑散としている印象を受けるくらい町は賑わっている。
所狭しと市が立ち、獣人や亜人が店を開いていた。
赤いとんがり帽子を被った妖精のコニが自慢する。
「この島は妖精王に使える妖精の住処さ! 王宮で使う様々な衣装や祭具を作って納めている。ドワーフ共は宝具や剣、鎧を作っている。そして、各地に住む妖精、獣人、亜人たちが妖精王に様々な品を納めて来ている」
「納めているというより、売り買いをしているようにしか見えませんわ」
「ここに来れば何でもある。必要な物を交換してそれぞれの村に持ち帰っているさ」
コニの説明では、家や店を持っているのは妖精王に使える者のみ。
その他の村の者は路上で露店を立てている。
王宮に仕える小人族が多いらしい。
そのためか赤、白、黄色など様々なとんがり帽子を被った小人族を見かける。
もういいだろうと思ったのか、コニが歩きはじめた。
カロリナ達はそれに付いてゆく。
しかし、すぐに脱線した。
「こ、こ、これはクゲルココの実ではありませんか!」
「カロリナ様、それは何?」
「御婆様から一度貰ったことのあるとても美味しい木の実です。ミスホラ王国の特産と聞いていました。でも、昨日の郷土料理に出てきません。町のどこにも見かけないのでがっかりしていました。こちらの世界にあったのね!」
「お嬢ちゃん、買うなら早くしてくれ!」
「買います。買います」
カロリナはエルから金貨を受け取って渡した。
しかし、あまり反応はよくありません。
金貨を睨んで渋い顔をした。
「金貨は好かれない。1,000枚で1個という所か!?」
「それは暴利でしょう」
「こんなものを貰っても使い道がない」
「カロリナ様、これは如何でしょう」
「これは?」
「胡椒が入った小袋です。野営の料理に使えるのでいくつか持って来ております」
胡椒袋を見せると、獣人の目の色が変わった。
「これは胡椒か!」
「そうよ。どう、これなら交換できる」
「できる。というより、させてくれ!」
思わぬ好感。
エルが両手一杯のクゲルココの実を持つことになった。
それもカロリナが食べる為にエルに持たせているだけであり、その3倍の量がエルの魔法袋に入っている。
カロリナはそれを食べながら変わった物を見つけると足が止まった。
「ねぇ、クゲルココの実と交換できる?」
「そうだな。クゲルココの実1個とこれ4つなら交換してもいいぜ!」
「じゃぁ、3個と交換して」
「あいよ」
さらに何か見つけると足が止まる。
路上の店主は獣人や亜人ばかりだ。
コニが嬉しいのか、頬を緩ませて苦笑いを零した。
ラファウが聞く。
「何か、おかしいですか?」
「あんたとこの姫さんは肝が据わっているな!」
「そう見えますか?」
「かなりの人間を案内したが、ここに来るとおどおどして警戒心が上げる奴ばかりだった。最初から和んでいる奴をはじめて見た」
「当然です。我らのお嬢様です」
獣人や亜人を警戒しないカロリナに好感を持ったようだ。
妖精種の血が混じっているのは察していた。
西の妖精族は人種と同じくらい偏見が酷く、獣人や亜人を下に見る傾向が強かった。
実に珍しい。
赤いとんがり帽子を揺らして複雑層に笑っていたのだ。
しかし、その笑顔もすぐに消える。
「おい、いつまで買い物をしているつもりだ!」
「次に来られるか判らないのよ。最優先事項です」
「何しにここに来たのか判っているのか?」
「もちろん、食べ歩きです」
コニは目が点になった。
国王の馬鹿息子ドムノ・ヒイリイを助けて、ゴブリン・エンペラーが率いる2万匹の大軍を打ち払う。
それを可能にする為に七精霊の加護を貰いにやってきた。
決して妖精の国に『食べ歩き』に来たのではない。
「ドムノさん、アンブラに美味しい店を紹介して頂けませんか?」
「も、もちろんです」
「さぁ、案内して!」
「あちらです。アンブラさん」
カロリナはドムノを味方に引き入れて食べ歩きを再開した。
「ちょっと待て、何てこった!」
目的を忘れてドムノが率先して店を紹介する。
ちょっと引く影だが、その仕事は護衛だ。
影を出汁にしても怒る様子もない。
従者エルはいつでもカロリナの味方で止める訳もなく、アザとニナは一緒に楽しんでいる。
ニナを密かに思うジクはニナのことで頭は一杯だ。
カロリナをよく知るマズルはそうそうに諦め、子供達が走り出した後を追う。
盲信するルドヴィクはただ付いてゆき、智者であるラファウは思考する。
この行動に何の意味があるのか?
もちろん、意味などない。
ただ、美味しい物を食べたいだけである。
「おい、ちょっと待て! 何の為に来たのか判っているのか?」
コニは焦った。
しかし、もうカロリナを止められる者は誰もいなくなった。
珍しい食べ物がカロリナを待っていた。
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