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四月:終わりの始まり
第4話:兆し
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この世界は残酷である。物事が不条理に、不定期に、やって来る。この世の出来事はなんのカウントダウンもなしにやってくる。そんな世界が生きやすいかと聞かれれば「NO」だ。生きやすいはずがない。桧山快は今日起きた"大変なこと"について考えているとそんな思想が思い浮かぶ。
ー君たちには是非、地球崩壊の原因を暴き止めて欲しいー
新担任・鳥束翼から放たれた今日一のパワーワード。今思っても、いや、いつ思ってもあり得ないとしか考えようがない。そう言われた大半の人間がそう思うだろう。もちろん快もその中の一部である。「ハァ」色々考えるとため息が漏れた。
「どうしました?体調でも崩しましたか?」
全神経が脳にいっていたかの様にようやく前が見えた感覚になる。ハッとして横を見ると青い眼球が2つ、こちらを覗き込んでいる。
「うるさい、今日のことで色々考えちまったんだよ」
薄く光る青い双眸には小さな文字やグラフが蠢いている。人工知能に脳を支配されている冬真は人並み外れた頭脳と情報量を引き換えにいくつかの感情を失っている。愛情と悲しみが感じられないらしい。それ以外の感情は普段の生活で感じていることが読み取れる。
「そう、ですよね。私も同様の意見です。ですがあまりに煮詰めるのは良くないことかと。それに、あの人が嘘を吐いているかも分かりませんし」
「だよな、俺も全て信じてるわけじゃないけど、第一印象として、あの人が嘘をつくとは思えないな」
「まぁ、考えるのは何事も始まってからですね」
ー帝英学園 学生寮"プレミアムブース"ー
快と冬真は二十三家専用の学生寮"プレミアムブース"に戻ってきた。高校生23人が生活するには広すぎるような空間にいつも暇をもて余す。全フロア赤い絨毯と黄色に近い金色の壁に埋めつくされている。レストランやコンビニも入っていて、温泉も広い。パソコン室や体育館も附属しているほどの完成度だ。まさしく高級ホテルと学校の一部を融合させたような場所だ。快と冬真は部屋に戻らずパソコン室に入る。パソコン室には白と黒の入り交じった頭髪の光谷祐希が光る液晶を見つめていた。
「よぉ、祐希。何やってんだ?」
快が祐希の背後から声をかけるとピクリと反応し、こちらを振り返る。
「んー、ちょっと今日の件について気になったから調べてたんだ」
「やはりあなたもですか。で、何か気づいたことは?」
「うーん、とりあえず現時点で発生している地球の異常現象は全部で4つ」
祐希は快と冬真に指を4つ立てて見せ、現象の数を提示する。そしてすぐに冬真がその答えを示す。
「大量の酸性雨、台風の大量同時発生、水中生物の大量死、奇虫の大量発生の4つですね」
快はその答えを聞いて素直に思ったことを苦笑しながら言った。
「冬真の言葉のあやかもしれないけど随分と"大量"が多いんだな」
冬真は少しムッとして言い返す。
「茶化さないでください。ですが実際、それほどに危険な環境の変化が起こっているんですよ」
「そんじゃ一つ」
快も祐希の様に人差し指を立てる。
「どっかのアホが薬品でもばらまいた説」
「それはないですね。薬品で魚などの生物を殺したり奇虫を発生させることができても、人の手で台風を起こしたり酸性雨を降らせるのは不可能に限りなく近いです」
割とメジャーな説を言ってみたものの冬真に当然のように否定される。
「ま、僕からはもう無いな、この情報量じゃ仕方ない」
「同意見です。私は人工知能とはいえあくまで人間ですから」
情報無しでは仕方なし、と「降参」と言わんばかりに祐希と冬真は両手を挙げる。帰ろうと言って祐希はマウスを操作しシャットダウンをクリックする。
「ちょー待てよ、ネタ尽きんの早くない?」
扉の方から大きい声が飛んでくる。冬真が顔をしかめて振り向く。
「電樹…何しに来たんですか?」
「つれないねー、俺はパンパンになった君らの脳ミソを見兼ねて知恵貸しに来ただけだよー」
ヘラヘラ笑いながらパソコン室に入ってくる宮川電樹は前の席に勢いよく座り、得意げに語り始める。
「人間の仕業じゃねーってことはそれ以外に目を向ける!ようは動物か宇宙人ってことになる!」
「ここに来て最も可能性の少ないものを…」
快は処置なしといった感じで両手をあげる。電樹はムッとして指を快に突きつける。
「いいか!宇宙人が居ないって言えるのは俺らが地球に住んでるからだ!未知ってのはいくらでも否定できるだけでなく知らねえ限りなんぼでも肯定出来るんだ!」
成る程、その存在が証明されない限りいくらでも夢を語れるということか、と快は心の中で頷いた。
「一理ありますね。ですが今のところ最も可能性の低い考えですが、視界を捉えておいて損はないですね」
「僕もありだね」
冬真と祐希は納得したのか電樹の意見を肯定する。すると背後から扉の開く音がして4人は振り向く。
「私もありだと思うよー、電樹の意見ってのが癪だけどね」
栗色の長髪の靡かせて甘海怜奈が入ってくる。
「怜奈、つーか何でもう風呂入ってんだよ。まだ夕飯前じゃん」
「いーじゃん別に、自由が売りの高校だから帝英行こーって中学の時誘ってきたのはどこのどいつですかー?」
「うるさい」
快と怜奈は小学校時代からの縁であり賊に言う幼なじみだ。
「情報も無いのにそんな事考えてても意味ないじゃん、そんな事よりさ、ちょっと退いて祐希」
「どわっ」
怜奈は無理矢理祐希を椅子から引きずり落とす。
「学園都市に新しくできたスイーツ屋さん!ここ行ってさ誰か奢ってよ」
怜奈はにっこりと笑って四人の方を向く。
「イヤだよ絶対!」
価格の欄を見て四人は声を揃えて反論する。これからどんな危険が襲ってくるか分からない、けどこういうなんでもない日が一番良い、快はそう思って仲間と下らない話を始める。その頃パソコン室のテーブル下には赤く点滅するLEDのついた機械が駆動していた。
「ふーん、想像より良い出だしだ。ここからは僕の教育能力次第だな。ん?」
ワイヤレスイヤホンを片耳に男・鳥束翼はバイブするスマホを持ち、通話に応答する。
「やぁ君か。順調だよ。少し危ない場面もあったけどどうにかやりきったよ。」
通話相手が何か話しているらしく鳥束は黙る。
「わかった。ところで核に動きは?」
そう聞き、しばらくすると鳥束は笑みを浮かべる。
「やはりまだか、焦ることはないよ。まだ何も始まっていないのだから」
この言葉にはどんな意味があるのか。核とは何なのか。3年A組の冒険はまだ始まらない
ー君たちには是非、地球崩壊の原因を暴き止めて欲しいー
新担任・鳥束翼から放たれた今日一のパワーワード。今思っても、いや、いつ思ってもあり得ないとしか考えようがない。そう言われた大半の人間がそう思うだろう。もちろん快もその中の一部である。「ハァ」色々考えるとため息が漏れた。
「どうしました?体調でも崩しましたか?」
全神経が脳にいっていたかの様にようやく前が見えた感覚になる。ハッとして横を見ると青い眼球が2つ、こちらを覗き込んでいる。
「うるさい、今日のことで色々考えちまったんだよ」
薄く光る青い双眸には小さな文字やグラフが蠢いている。人工知能に脳を支配されている冬真は人並み外れた頭脳と情報量を引き換えにいくつかの感情を失っている。愛情と悲しみが感じられないらしい。それ以外の感情は普段の生活で感じていることが読み取れる。
「そう、ですよね。私も同様の意見です。ですがあまりに煮詰めるのは良くないことかと。それに、あの人が嘘を吐いているかも分かりませんし」
「だよな、俺も全て信じてるわけじゃないけど、第一印象として、あの人が嘘をつくとは思えないな」
「まぁ、考えるのは何事も始まってからですね」
ー帝英学園 学生寮"プレミアムブース"ー
快と冬真は二十三家専用の学生寮"プレミアムブース"に戻ってきた。高校生23人が生活するには広すぎるような空間にいつも暇をもて余す。全フロア赤い絨毯と黄色に近い金色の壁に埋めつくされている。レストランやコンビニも入っていて、温泉も広い。パソコン室や体育館も附属しているほどの完成度だ。まさしく高級ホテルと学校の一部を融合させたような場所だ。快と冬真は部屋に戻らずパソコン室に入る。パソコン室には白と黒の入り交じった頭髪の光谷祐希が光る液晶を見つめていた。
「よぉ、祐希。何やってんだ?」
快が祐希の背後から声をかけるとピクリと反応し、こちらを振り返る。
「んー、ちょっと今日の件について気になったから調べてたんだ」
「やはりあなたもですか。で、何か気づいたことは?」
「うーん、とりあえず現時点で発生している地球の異常現象は全部で4つ」
祐希は快と冬真に指を4つ立てて見せ、現象の数を提示する。そしてすぐに冬真がその答えを示す。
「大量の酸性雨、台風の大量同時発生、水中生物の大量死、奇虫の大量発生の4つですね」
快はその答えを聞いて素直に思ったことを苦笑しながら言った。
「冬真の言葉のあやかもしれないけど随分と"大量"が多いんだな」
冬真は少しムッとして言い返す。
「茶化さないでください。ですが実際、それほどに危険な環境の変化が起こっているんですよ」
「そんじゃ一つ」
快も祐希の様に人差し指を立てる。
「どっかのアホが薬品でもばらまいた説」
「それはないですね。薬品で魚などの生物を殺したり奇虫を発生させることができても、人の手で台風を起こしたり酸性雨を降らせるのは不可能に限りなく近いです」
割とメジャーな説を言ってみたものの冬真に当然のように否定される。
「ま、僕からはもう無いな、この情報量じゃ仕方ない」
「同意見です。私は人工知能とはいえあくまで人間ですから」
情報無しでは仕方なし、と「降参」と言わんばかりに祐希と冬真は両手を挙げる。帰ろうと言って祐希はマウスを操作しシャットダウンをクリックする。
「ちょー待てよ、ネタ尽きんの早くない?」
扉の方から大きい声が飛んでくる。冬真が顔をしかめて振り向く。
「電樹…何しに来たんですか?」
「つれないねー、俺はパンパンになった君らの脳ミソを見兼ねて知恵貸しに来ただけだよー」
ヘラヘラ笑いながらパソコン室に入ってくる宮川電樹は前の席に勢いよく座り、得意げに語り始める。
「人間の仕業じゃねーってことはそれ以外に目を向ける!ようは動物か宇宙人ってことになる!」
「ここに来て最も可能性の少ないものを…」
快は処置なしといった感じで両手をあげる。電樹はムッとして指を快に突きつける。
「いいか!宇宙人が居ないって言えるのは俺らが地球に住んでるからだ!未知ってのはいくらでも否定できるだけでなく知らねえ限りなんぼでも肯定出来るんだ!」
成る程、その存在が証明されない限りいくらでも夢を語れるということか、と快は心の中で頷いた。
「一理ありますね。ですが今のところ最も可能性の低い考えですが、視界を捉えておいて損はないですね」
「僕もありだね」
冬真と祐希は納得したのか電樹の意見を肯定する。すると背後から扉の開く音がして4人は振り向く。
「私もありだと思うよー、電樹の意見ってのが癪だけどね」
栗色の長髪の靡かせて甘海怜奈が入ってくる。
「怜奈、つーか何でもう風呂入ってんだよ。まだ夕飯前じゃん」
「いーじゃん別に、自由が売りの高校だから帝英行こーって中学の時誘ってきたのはどこのどいつですかー?」
「うるさい」
快と怜奈は小学校時代からの縁であり賊に言う幼なじみだ。
「情報も無いのにそんな事考えてても意味ないじゃん、そんな事よりさ、ちょっと退いて祐希」
「どわっ」
怜奈は無理矢理祐希を椅子から引きずり落とす。
「学園都市に新しくできたスイーツ屋さん!ここ行ってさ誰か奢ってよ」
怜奈はにっこりと笑って四人の方を向く。
「イヤだよ絶対!」
価格の欄を見て四人は声を揃えて反論する。これからどんな危険が襲ってくるか分からない、けどこういうなんでもない日が一番良い、快はそう思って仲間と下らない話を始める。その頃パソコン室のテーブル下には赤く点滅するLEDのついた機械が駆動していた。
「ふーん、想像より良い出だしだ。ここからは僕の教育能力次第だな。ん?」
ワイヤレスイヤホンを片耳に男・鳥束翼はバイブするスマホを持ち、通話に応答する。
「やぁ君か。順調だよ。少し危ない場面もあったけどどうにかやりきったよ。」
通話相手が何か話しているらしく鳥束は黙る。
「わかった。ところで核に動きは?」
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