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婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。
人間、どんなに辛くてもヤケになんかなるもんじゃない。
自暴自棄になった後っていうのは大体ヤケになる前よりエライ目に遭うものだ。
例えばそれは、今の俺のように。
「おまえは私に何か不満があるのか?」
ドン、と寝室の壁に背中を叩きつけられた体勢で、俺の顎くらいの位置から睨み上げてくる傾国の美貌。
頭のてっぺんは俺の鼻先くらい。別に小柄な訳じゃない。むしろ、この国の男の平均身長より高い。俺の一族が更にデカいだけだ。
襟足に掛かるくらいの長さの金髪はシャンデリアの光を反射していて、陶器のように滑らかな肌には傷ひとつ見当たらない。スッと通った高い鼻に、やたらと艶やかな薄めの唇。
そしていつ見ても吸い込まれそうな、二重で切れ長のクールな赤い目。
ケチの付けようの無い圧倒的なまでの美は、この国の女や男やらを虜にしまくっている。もっともそれは、こんなに怒っていなければ、だ。
不機嫌そうに顔を顰めると分かりやすく人波が引いていく。不思議に思って聞いてみたら、なんと怖いんだそうだ。いきなり剣を突きつけてきたりしないのに。
まぁ、俺の前では大体いつも怒っているしそれは全然いいんだけども。
じゃあ何が問題かっていうと、風呂上がりでやたらと良い匂いがしたり、バスローブから覗く鎖骨が目に毒過ぎたりすることだ。随分とはっきりしたエロい妄想が頭を駆け巡って、とてもじゃないが直視出来ない。
何でこんな恰好で俺の寝室に来たんだ。
いや、本当はちゃんとわかってる。
初夜だからだ。
このドエライ美人と、俺の。
でも侍女の人にメモ書き渡したし、初夜を辞退する無作法のお詫びに安眠効果のあるポプリも付けたのに。
そうしたら何故か本人がやって来て、部屋に戻って貰う暇もないままに壁ドンされている。そっと顔を逸らそうとしたらガッと顎を掴まれた。爪は綺麗に切り揃えられているけどちょっと痛い。太くてゴツゴツした指じゃないのに意外と握力があるんだななんて変な感心をした。
「不満はあるのかと聞いている。質問に答えろ、アースィム・アル=クライシー」
「ふ、服を、着てからッ」
「答えろ」
「ひえ!近い近い近い!!」
この国には馴染みの無い俺のフルネームを呼ぶ、尋問するような厳しい声。
しどろもどろに言ったらグッと身を寄せられて、思わず情けない悲鳴を上げた。
文武両道な王太子殿下は細身だけどしっかり筋肉がついていて、必死に目を瞑らないと色気の塊のような艶めかしい胸筋が見えてしまう。その肩を押し退ける事すら出来ない俺の顔は、たぶん真っ赤だ。
「アースィム」
「ひ」
顎を掴んでいた手が、輪郭をなぞる。
バスローブなんていう洒落た物を着る文化の無い国の人間である俺は、足首まである長い腰巻き姿。
ウチの伝統衣装で黒地に赤い刺繍が入ったコレは特に気に入っている。気に入っているんだけど、今日は止めとくべきだった。何故かって?半裸の上半身の上を白い手が這っているからだ。
「アースィム、私に触れられるのは不快か?」
「そんな訳ないけどほんとダメだって!」
「何故?」
張り出た胸板を滑り、六つに割れた自慢の腹筋を辿る指。
囁くような問い掛けと共に唇に吐息が触れて、ガチガチに緊張しながらもつい喉が鳴った。これ以上は不味い。とても不味い。さすがにムスコが元気になってしまうと、手を止める為に慌てて目を開けた、ら。
「私はおまえに触れたい」
唇が触れ合いそうな距離で切なく揺れる赤い瞳と目が合った。
俺のなけなしの理性は、ぶつんっと焼き切れた。
王太子であるセオドアと出会ったのは二か月と少し前、セオドアの国が国境で隣国とドンパチやっていた時だ。
俺は完全に部外者だったけど、この国の敵である隣国の王家には恨みつらみしかなかった。
隣国と隣合っている弱小国の王子として友好の為に結ばれた婚約を、一方的に破棄されたからだ。
別にウチから頼んだ訳じゃない。
隣国の先王の熱意に負けて交わした約束だった。
祖父や父に何度門前払いを食らってもめげない先王を尊敬していた。
山の獣一頭すら一人じゃ狩れないけど、強い男だと思った。
それも含め、兄弟の中で一番温厚な俺が婿入りすることになっていたから、側近や従者──というか、単に幼馴染み達と遥々ひと月も掛けて辿り着いたっていうのにだ。
歓待どころか労う言葉の一つもなく、何年かぶりに会った姫は俺を見るなりどこだかの貴族の息子と真実の愛を見つけた、顔も見せないような褐色肌の野蛮人は無理だと泣いた。
目から下を隠す口布も、鍛え上げた上半身を晒す裾の長い腰巻き姿もウチの正装だ。それでも一応気を遣って、普段は付けないジャラジャラした金のネックレスみたいなのや腕輪までしてお洒落して来たのに。せめて言い方くらい考えて欲しかった。褐色の何が悪いって言うんだ。泣きたいのはコッチだ。
友好の意味知ってる?と思わず出かかった言葉は、周りを取り囲んだ何十人もの騎士達と、姫を嗜めるでもなく俺達をさっさと追い出し始めた兄王を前に呑み込んだ。
ちなみにウチにいる時以外は大陸共通語か滞在している国の言語を話すことを徹底されているから、この時の俺達は隣国の言葉を使っていた。単一民族国家で山々に囲まれている小さな国の言語なんて、誰も知らないし。
ごく稀に言語学者が死屍累々の様相でやって来たりするけれど、客人がいると年端もいかない子どもすら大陸共通語しか話さなくなる。俺達は物心がつく前から色んな国の言語を叩き込まれているから楽勝だ。
交流を目的にしている訳じゃない。単純に、戦で作戦が漏れないようにする為だ。
ウチの事情は少し特殊だけど、外国人を迎えたり会ったりする時は大陸共通語を使うのが最低限の礼儀だと教えられた。隣国の先王にだ。彼は流暢な共通語を使っていた。
だというのにだ。
今目の前にいる人間達は俺達の文化を尊重もせず、外から来た人間はこの国の言葉を話して当然とばかりに大陸共通語を使わない。案内の使用人すらそうだった。
まさか話せない訳でもないだろうし、どう考えても見下されている。
王族や偉そうな貴族達を前に、破棄されて良かったかな?とチラッと思ったし、ここで剣を抜くのは簡単だった。
俺を虫けらみたいな目で見ている王の首を奪るのも周りの騎士を蹴散らすのも、幼馴染み達に掛かれば容易いだろう。
だけど俺は、友好の為に来たんだ。
戦になったら女子供からジジババまで好戦的なウチの民達が我先にと戦線に立ってしまう。敵国のものとは言え、無駄に死体の山を築くのはダメだ。それに今は収穫期だ。せっかく出来た作物が腐る。
ヤッちまおうぜと殺気立つ幼馴染み達を宥め、俺は実にアッサリと退いた。ブーブー言う声は睨み付けて黙らせた。
慰謝料だの何だのの話し合いをする気なんて最初からなかったようだから、居座っても気分が悪くなるだけだ。金品が欲しい訳でもないし。
だがしかし。
尊敬する隣国の先王も俺達の文化も蔑ろにされ、はいそうですかと帰っていいものか。
それにこれは、鎖国状態のウチがようやく重い腰を上げて他国との国交を開始してみようとした、大切な第一歩だったんだ。
何よりも、ここまでコケにされてすごすご引き下がったと知られたら母や姉や女達に総ブーイングを食らい、いよいよ結婚相手なんて見つからなくなる。
ウチの民は非常に好戦的なせいで、強い男=モテる男。強い女=モテる女なんだ。
抱き寄せただけでポキッと折れてしまいそうな姫に未練は無いけども、売られるケンカも受け流し逃げ惑っていた俺は正直モテない。二十三にもなってお付き合いもした事がない。一応第三王子なのに。
つまりは姫しか結婚のアテがなかった。国同士の約束だし大丈夫だと信じきっていた。
それなのに、挙式を目前にしてこの仕打ち。
俺はヤケになった。
タイミング良くドンパチが始まったから、幼馴染み達を引き連れて戦場に乱入した。
派手に名乗りを上げて、憎たらしい隣国の兵をバッサバサ斬った。二、三日してから我に返った後は斬られて痛い思いをしたくなかったから頑張って斬った。
怪我が無くて元気なのは何よりだけど、幼馴染み達は笑いながら剣を振っていた。どうかしてる。国民全員こんなだから戦闘狂だの野蛮人だの言われるんだ。
俺は子どもの頃から痛いのも喧嘩も苦手だった。産まれる場所を完全に間違えている。
ウチを弱小国家と馬鹿にしてかかる盗賊団や国相手のドンパチで見慣れているから、血だの生首だのは平気なんだけど。
それなのに何だか気がついたら最前線にいて、今更離脱することも出来ずに更にヤケになって。
派手に武勲を立てとけば一人くらい嫁に来てくれるだろうと、俺は開き直って頑張って斬りまくった。
そうしている内にこの国の兵士?騎士?達が、なんやかんや兵糧を分けてくれたり、わざわざテントを張ってくれたりするようになって、ちゃんと大陸共通語も使ってくれて。
隣国では一切受けなかったその優しさに少し泣いた。
そんなある日に出会ったのが、セオドアだ。
人形みたいな顔で負傷兵を見舞うその姿に、随分場違いな奴が来たなと思った。仲良くなった最前線の指揮官に聞いたら、なんと王太子だという。
本当に何しに来たんだ。危ないじゃないか、なんて思っていた俺は、松明の灯りに揺れる赤い瞳に射抜かれ、ちびちび呑んでいた酒をうっかり溢した。心臓がギュンってなって、未知の感覚に首を捻る。
「アースィム・アル=クライシー。何が目的で我が国へ助力する?金か?国交か?」
「んだコイツ……」
「オレらの大将を呼び捨てにしやがったのか?今」
「ヤッちまうか?」
「コイツも痛い目見せてやろうぜ大将」
その冷ややかな声にざわりと殺気立った幼馴染み達。
普段は陽気で気の良いヤツらは、何せ短気。
不穏な単語が飛び交うのをどうどうと宥めるのも慣れたものだ。
俺を入れてもたったの五人しかいないけど、主に幼馴染み達の頭がどうかしている戦いっぷりを目の当たりにしている指揮官は真っ青になっている。俺は友情を交わした相手の胃を痛め付ける趣味も、親切にしてくれている兵士達を涙目にさせて喜ぶ趣味も無い。なので、恥を捨てて素直に白状した。
「一方的に婚約破棄されて、このまま帰っても嫁が来ない」
「それがどうした」
「一泡吹かせるついでに名前売ったら結婚出来るかな、と」
「そりゃムリだ大将!」
「国に帰ったんじゃいつまで経っても嫁なんか決まらねーよ!」
思って。
そう言い切るより早くゲラ笑いし出した幼馴染み達に思い切り眉を寄せた王太子を、慌てて連れ出した。俺がモテないのは事実だけど変に勘繰られたら堪らない。
松明の横、難しい顔で佇む姿を眺める。
見たことが無いくらいに美人な男だけど、本当に人形みたいだ。
不機嫌な、厳しい顔を繕った人形。
「先の話が真実だろうがこちらから助力を乞うた訳じゃなかろうが、これだけ手柄を立てられて何も返さない訳にはいかない。……貴殿らが参戦してから、随分と戦死者が減っていると聞いている」
冷え冷えした感情の無い声。
燃え盛る炎に合わせて揺れる、赤い瞳。
その顔には隠しきれない疲労が滲んでいる。
苦しいんだなと思った。
この王太子は、負傷兵と擦れ違う度に辛そうだ。それで場違いだと感じたんだ。
戦場なんだから、生きているだけで儲けものなのに。
聞く所によると、宣戦布告も何も無いままにいきなり始まった隣国からの侵略戦争らしいし、本当は戦なんかしたくないんだろう。俺だってヤケにさえなってなかったら怪我するかもしれないこんな場所にわざわざ来たりしない。
「望みを言え」
大きい国の王太子ともなると素直に感情を吐き出すこともままならないのか。
ウチはみんな感情的だし戦で死人が出たこともない。
だから考えたことがなかったけど、幼馴染みの内の一人でも死んだらと思っただけでものすごく辛くなった。それなのにこの王太子は、沢山の民の死を抱え込んで耐えている。強い、とても強い男だ。
「聞いているのか、アースィム・アル=クライシー」
立っている王太子をだらしなくしゃがみ込んで見上げる。馴染みのない発音だろうに、もう一度呼んでくれたのが何だか嬉しくてヘラっと笑った。
「俺は嫁が欲しいだけだよ」
「私には姉妹はいない」
「お姫様はもういいって」
夜の間は戦闘が無いからと、少し飲み過ぎたかもしれない。酒には強いつもりなんだけど。
しゃがんだ足に組んだ両腕を乗せて、その上に更に片頬を乗せて、俺は笑った。
「勝手に参戦して好きに暴れてるだけだし、本当に何にもいらないんだ。でも、なるべく早く終わらせるから」
「……何?」
ウサギみたいな真っ赤な目が訝しげに細まったのに、笑いを引っ込めて呟く。
「だってあんた、さっきからずっと泣きそうだ」
「………」
「全員守るとは言えないけど、あんたの為にもう少し頑張ってみるよ」
そう言った俺に、王太子は何も言わなかった。
それから三日後、幼馴染み達を引き連れて本陣を奇襲した俺は、なんとかって名前の総指揮官を討ち取った。
他所の国の戦だから、一応ちゃんと降伏するかって聞いた。ウチの国に押し掛けて来たヤツらに対するみたいに問答無用で襲いかかったりはせず、戦場の礼儀は守った。
その頃にはすっかり頭から抜けていたが、その総指揮官はあの姫の真実の愛の相手だったらしい。
今なら許してやるとか寝返れば姫を譲るとかなんか色々喚いてて、幼馴染み達がとうとうキレ始めたからササッと首を頂戴した。命惜しさに手放せる程度の関係なら、姫もすぐに立ち直るだろうしいいかなって。
それに勝敗はついたんだ。
指揮官レベルならまだしも、雑兵まで手当たり次第斬るのは良くないと思う。
戦は終わりましたよって分かりやすいように剣に首刺して、隣国の兵達が項垂れたり、どこかホッとしたような顔を見せたりする中を堂々と歩いて戻った俺は、何故か英雄扱いされた。
よ、英雄!モテ男!と囃し立てる幼馴染み達。
産まれてからずっとの付き合いだけど、初めてイラッとした。
「見事だ、アースィム」
「ただいま。ありが──」
危ないから帰れって言っているのに居座っていた王太子に出迎えられ、ガッと二の腕を引き寄せられたかと思ったら、次の瞬間には目の前にドエライ美人。
口と口が触れ合っている。
指笛やら歓声やらで沸き立つ周りは、まるでお祭り騒ぎだ。
人生初めての口付けは唇が触れ合っただけですぐに離れた。
俺は呆気に取られたまま、たぶんコレは違うと手に持っていた生首付きの剣を幼馴染みにパスする。
「えぇと、あの……テオ?」
たったの三日間で愛称を呼ぶようにはなっていたけど、決してこういう感じじゃなかったはず。
俺は赤くなっている顔を隠すことも出来ないまま、一体どういうつもりなんだと目の前の男を見た。
「望みを叶えてやる」
「望み?」
訳が分からず首を傾げる俺に、王太子は初めて笑顔を見せた。
ニッと口端を引き上げる、不敵で不遜な笑み。
「私の婿にしてやると言っているんだ。有り難く思え」
「ムコ?…………婿⁉︎なんで!?」
目を丸くしたら声を立てて笑い出す。
やっと泣きそうじゃなくなった。
冗談が言えるようになったんだな、なら頑張って良かったと、情けなく眉を下げながらホッとした。
そう、冗談だと思っていたんだ俺は。
だからすぐ帰ろうとしたのに、凱旋式に英雄が出なくてどうするだとか、戦勝祝いくらい付き合えだとか言われている内にダラダラと二ヶ月くらい経っていて、今朝起きたらニヤニヤした幼馴染み達に伝統衣装とじゃらじゃらアクセサリーで着飾らされた。
それなのに口布は奪われて首を傾げていた俺が、引き摺られるようにして連れて行かれたのは立派な教会で。
左右を占める大勢の歓声に戸惑っていたら、真ん中の奥にいたセオドアに手招きされた。なんだなんだと素直に近付いた俺は、はっきり言って迂闊過ぎた。
セオドアは全身を白い服に包み、秀でた額を見せるように金髪を後ろに撫で付けている。そのせいで瞳がいつもよりはっきり見えて、じっと見上げてくる熱量にたじろいだ。
まさか、とそこでようやく気付いた俺が、慌てて逃げようとしても時既に遅し。
同じくウチの国の正装をした幼馴染み四人組が入り口に陣取っていて、あたふたする俺に一切構わずに牧師の声が朗々と響き渡る。
冷や汗を流しつつ赤くなるという器用な真似をしていた俺は、いつだかのように二の腕を掴まれて唇を塞がれた。
周囲が賑やかに囃し立て紙吹雪や花びらが飛び交う結婚式は、見慣れたウチの国のもの。
幼馴染み達から聞いたのかななんてぼんやりとしている間にお披露目パーティーもされて、王弟だったらしい最前線の指揮官とか貴族の息子だったらしい兵士達とかに改めて盛大に祝われた。
この国、偉い人間が前線に出張り過ぎじゃないか?隣国の総指揮官は奥の奥、ずーっと奥の方で女達を侍らせ天幕から出て来やしなかったのに。
一瞬そんな事を思ったけど、よく考えなくてもウチもこの国と同じだったから気にしない事にした。
でも、結婚は別の話だ。
大いに気になる。
こんな馬鹿でかい国の王太子と弱小国の第三王子が結婚していいはずがない。だって子ども出来ないし、セオドア側に何のメリットも無い。また侵略されたりしたらウチの民が喜んで駆け付けるだろうけど、それだって自分より弱い指揮官に従ったりしないから扱い難いだけだ。
セオドアのことは嫌いじゃない。
泣いて欲しくないなぁなんて思って苦手な戦いも頑張った。
頑張った、けど。
せっせと寝所を整えたり、なんか良い香りの香を焚いたり酒を用意したりしていた侍女の人達に、風呂に入れられそうになって慌てて断って。
初夜でございますから、といつもより早い時間にいそいそと去ろうとした一人に身も蓋も無く縋りついた俺。
初夜の意味くらいは知っている。
でも女相手にもしたことないし、この国の手順とか作法とか何も知らないし、あんな綺麗なセオドアに触るなんてと口走り、生温い目で見てくる侍女の人にメモ書きと手作りの安眠ポプリを渡して欲しいと確かに伝えたのに。
「アースィム」
ここでようやく、積極的過ぎるセオドアのせいで理性が吹っ飛んだ冒頭に戻る。
その身体を掻き抱いて肩に顔を伏せて半泣きだ。こんなことするなんて俺は何て恥知らずなんだ。
だってそうだろう?
どう考えたってセオドアには良い事なんか一つも無い。
どんなに英雄だと持ち上げられたって俺は国に戻ったらただの意気地なしの弱虫だ。あの程度の働きならウチの民なら誰だって出来る。
実際、幼馴染み達は俺よりずっと多くの敵を屠っていたし、俺は飛んで来る弓を引っ掴んで投げ返して小隊の指揮官っぽいのヤったり、怪我をしたこの国の兵士を下がらせる時間を少し稼いだくらいだ。
だから本当は英雄でも何でもなくて、単に王子だったから幼馴染み達が譲ってくれただけ。
そんな俺が、色々呑み込んで踏ん張って立つ強い男に触っていい訳がない。
「アースィム」
「テオは王太子だろ。慣れない戦で気分がアガってるだけだ」
「戦争でやたらと昂揚するのはおまえの国の民だけだ。一緒にするな」
「それはそうかもしれないけど……」
うだうだと言い募る俺にセオドアが溜息を吐いた。
それから、あやすように頭を撫でられる。
「何がそんなに不安なんだ」
「……絶対後悔するだろ」
「おまえがか?」
「テオがだよ!」
なんで俺が後悔するんだって驚きながら顔を上げたら、ほんの少し目を見張ってから小さく笑った。
仕方ないというような、擽ったそうな笑い方。
周りの人間に対する人形でも、小言ばかりの不機嫌顔でもない。
初めて見たそれに目を奪われる俺の背に両手が回って、今度はセオドアがコツンと肩に額を寄せてきた。
「て、テオ」
「おまえがどうしてそんなに自信が無いのかは知らないがな」
また赤くなる俺にグッと腰を押し付けて囁く、蜜のような声。
「おまえが好きだ。だから四の五の言わずに側にいろ」
今度こそ本当に理性が飛んだ俺は、ベッドどころか何だか高そうな絨毯の上でセオドアを抱いて怒られ、それならとせっせとベッドに運んで朝まで抱いた。また怒られた。
真っ赤になって怒るセオドアが何だかものすごく可愛く見えてヘラヘラする俺に、諦めたのか呆れたのかは分からないけど。
立てないと言う彼を運んで風呂に入って、抱き締めて昼過ぎまで寝た。
その後会った幼馴染み達は、ニヤニヤもゲラ笑いもしなかった。
男と結婚する文化はウチには無いのに、大将良かったなって祝ってくれた。
国の家族や民から山程届いたという手紙に更に感動して大泣きして、そんな俺を発見したセオドアと幼馴染み達が危うく一触即発の状況になった。どっちが泣かせたとか子どもの喧嘩じゃあるまいし。
俺が笑ったら、すぐに双方の殺気は収まったけど。
「テオ」
鼻を啜りながらセオドアを包み込む。
ドエライ美人で可愛くて強くて頼もしい、俺の大切な人。
「なんだ。やはりコイツらに泣かされたのか?素直に吐いた方が身の為だぞ」
「違うよ」
どんな心配の仕方だと呆れた幼馴染み達が部屋から出て行ったから、俺は唇を軽く触れ合わせて笑った。
「好きだよ、セオドア。改めてこれからよろしく、って、えぇ!?何で泣くんだ!?嫌だった!?」
ポロポロ宝石みたいな涙を流し始めたセオドアに慌てふためき、ぎゅっと抱きついてきたから抱え上げてベッドに座った。ら、頭を両手で掴まれ、濃厚な口付けされて、なんやかんやで一日中布団から出なかった。
「初めて好きと言っただろう」
いつも怒るか小言を言うか尋問するかのセオドアに、恥ずかしそうに目を逸らしながらそんな風に言われたら盛り上がってしまっても仕方がない。
まぁ、泣いたのが恥ずかしかっただけなのはわかってる。セオドアは基本的に照れたりしない。
「これからは何回でも、毎日でも、好きだなって思う度に言うよ。好きだよ。大好きだ、テオ」
「………」
なんだか俺の方が恥ずかしくなって照れ笑いしたら、引っ張り上げた布団で容赦なく埋められた。
二度目は絶対にごめんだけど、もしかしたら人生で一回くらいはヤケになってみても、いいのかもしれない。
※
往生際悪くいつまでもごちゃごちゃと抜かす隣国との賠償金や領土割譲の話し合いをようやく終えたと思ったら、今度は元は姫の婚約者なのだからアースィムを返せと言ってきた。その強さと容姿を噂に聞いた姫の要望らしい。
どこまで私のアースィムを貶めれば気が済むのだと苛立ったのは何も私だけでなかった。
ヤッちまおうぜと据わった目で私を焚き付ける彼の幼馴染み達により、アースィムの両親へ助力を乞う事になったのだが。
いても気になるだけだからと悉く派兵を却下され、我が国からは使者である叔父上とその身の回りの世話をする騎士数人しか出陣していない。
諸手を挙げて参戦したのは兵でも何でも無い一般国民数十とそれらを引き連れた彼の兄二人、妻二人、幼馴染み三人だけだと言うのに、隣国は実にあっさりと永久属国に降った。戦場でアースィム達の強さを目の当たりにしていた騎士達が我先にと逃げ出した為だ。完全に彼らの手柄である。
調印式も付き合い、叔父上の背後から睨みを利かせてくれた義兄二人。
しかし細身の女は相手が出来ず、そこで活躍したのは二人の妻と女達だ。
アースィムに一番良く似ているという長兄に纏わりつき始めた件の姫は、長兄の妻と女達に引き摺られ容赦なく扱かれたらしい。
女とはいえ歴戦の戦士の扱きである。
姫は当然の如く一日も耐えられず、大陸一戒律が厳しい他国の修道院へ放り込んだとの事。あそこなら脱走も出来ない。実に頼もしい義姉上達だ。
そして、得られる税収などは全て渡すと告げた叔父上は、管理が出来ないからいらないと断られた。
大事な弟を馬鹿にされたからやり返してやっただけだと笑われたそうだ。
国交を開かなかった謎に満ちた国は何とも欲が無い一族が治めていると叔父上は肩を竦めたが、私はそうだろうなと納得した。クルシュの王族や民に欲なんて物があったらとっくに大陸を手中に治めているだろう。
以来、彼らとは度々手紙や使者のやり取りなどをして、なかなか良好な関係を築いていると満足していたのだが。
「そこで何をしている」
昼食の為に執務室から出てすぐ。
食堂に向かう廊下の途中、貴族の女どもに囲まれているアースィムを見つけてグッと眉間に皺が寄った。
「テオ!今迎えに行こうと思ってたんだ」
私を見るなり表情を明るくしたあたり、どうせまた困っていたのだろう。
女慣れしていないせいか、アースィムはああやって囲まれたら逃げられない。本人曰く、振り払ったりしたら折れそうで怖いらしい。あの肉食獣共がそんな貧弱な訳はないといくら言っても聞かない。
一体いつからそうしていたのか知らないが、今日も腕やら胸元やらに女共がベタベタと張り付いていた。
私が何度も言い聞かせたおかげであの破廉恥極まりない民族衣装は着ていない。アレを見るのは私だけで良い。
その為日中はこの国の一般的な紳士服に身を包んでいるのだが、布越しだろうと気に入らないものは気に入らない。令嬢の慎しみといったものについて度々苦言を呈しても変わらないのなら、本格的に次の会議の議題に上げる必要がある。
「散れ」
苛立ちを隠さずに命じた。
私には一応令嬢らしく礼をするくせに、去り際まで未練たらしくアースィムの手に触る。出入りを禁じてやろうか。
「アースィム様、良いお返事をお待ちしておりますわ」
「あー、はい。一応、聞いてみます」
(──は?)
何だ、その照れたような顔は。
毎食共にしたがるおまえの為に執務を調整している私に堂々と浮気宣言でもするつもりか。
押されると弱いアースィムと強引に結婚した自覚はあるが、もう半年が経っている。毎晩夜も共にしている上、私の朝が早くなければ一度で終わらない。
だというのに、今更やっぱり女が良いなどと宣うつもりではないだろうな。
大体、戦場や騎士達への指導では全く隙を見せないというのに、相手が女なだけで何故ああも隙だらけになるのだ。
毎日毎日必ずどこかで捕まっては救いを求めて私を見てくる。あの過保護な幼馴染み連中がいない時は出歩くなと再三言っているのに、どうして言う事を聞かないのだ。だから絡まれベタベタベタベタ触られるのだろうが。
私の苛立ちは最高潮に達した。
「テオ?食堂はそっちじゃ、」
暢気な手首を掴み、私達の寝室へ向かう。すれ違った側近の訳知り顔な溜息にすら苛々する。
部屋に入るなり胸ぐらを引き寄せて唇を押し付けた。驚きに目を開いた後、ヘラっとだらしのない笑顔を浮かべたアースィムの両手が腰に添えられる。
「ん…、んっ……」
半年前までは口付けすらした事がなかった男は、戦いだけでなくこちらの才能もあったらしい。
舌を擦り合わせ歯列をなぞる動きに鼻に掛かった息が漏れる。そうするともっと聞きたいとばかりに更に深まるものだから、唇が離れる頃には仕掛けた私の方が息を乱してしまう。
どうにも納得がいかないまま流した視線の先、アースィムは濡れた己の唇を舌先で舐め取っていて、それがまた様になるだけに腹立たしいことこの上ない。
「ごはん、ここに運んでもらおうか?」
「不要だ。おまえを寄越せ」
「ダメだよ。午後はまだ仕事だろ?」
最初の頃は私が触れるだけで顔を赤くしていたくせに。
半年間毎日抱き合っていれば嫌でも慣れるだろうが、非常に気に入らない。あっさりと身を離すのにも腹が立つ。さては私との行為に慣れて、抱いたことが無い女に興味が移ったのか。
「おい。女を囲えると思うなよ」
侍女を呼ぼうとする背に自分でもそうと分かる程に冷えた声を放った。
動きを止め、背を向けたままのアースィムがゆるりと首を傾ける。何を言われたか理解していないような幼げな仕草だ。鋭く舌を打つ。
そういう、剣を持った時の雄々しさがまるでない普段の動きの一つ一つが、女共が騒ぐ原因だと何故分からないのか。
見慣れない褐色肌と逞しく大柄な体躯に初めは遠巻きにしていたと言うのに、貴族の男には無い純朴さに加え宝物のように扱ってくれるとクルシュ国の面々はただでさえ引く手数多だ。
アースィムと同じく、単純に折れそうだと考えているからなのだろうと理由を察してはいるが黙っている。閉鎖的な貴族達が好意的なのならば喜ばしい事であり、わざわざ反発を招く必要は無い。触ったら折れそうと言われて嫌な顔をする女はいないだろうが、喜ばせてやるのも癪に触る。
中でも群を抜いているのがアースィムだった。
私の伴侶だというのに女共は隙をついては茶会に誘い、私の伴侶なせいで男を相手に出来ると考えた騎士や文官共までさり気なく城下街を案内しようとする。
戦場で親交を深めたという叔父もいたく気に入っているようで、そろそろこの国の侍従を置いてやったらどうだと笑顔で自分の息子を進めてくる。許可する訳がないだろう。
そもそも、アースィムに色々と自覚が足りていない事が原因だ。
彫りの深い顔立ちは甘く整っていて、この国にはない漆黒の髪と瞳に、無駄なく引き締まった肉体美。
ヘラヘラしていると柔らかく、けれどひとたび剣を持てば野生の獣のような鋭さを放つ、その緩急。
何かとあれば幼馴染みの方がと言うが、自分より弱い者には従わない国民性だと話したのは他でも無い彼自身。
アースィムが真実彼らより劣っているならば、あそこまで素直に従ったりはしないだろう。
幼馴染みの彼らはこの国においてもアースィムの言葉しか聞かないのだ。なのに何故その矛盾に気が付かない。
モテないと度々言っていたのも可笑しな話しだ。そう思いながら結婚の承諾を得る為に送った使節団は、あちこちから野次を飛ばされ妨害されて相当な苦労をしたらしい。
案内に幼馴染みの二人がついてくれていなければ死人が出ていたと、帰って来た使節団長は窶れた顔をしていた。
曰く、アースィムは確かに国内での対人戦は逃げ回るが、無理やり引っ張り出された侵略者への戦では無双だとか。
さもありなん。
先の戦争では四人の幼馴染みを弓や剣から守りながら、我が国の兵を退かせる余裕すら見せたのだ。 それも傷一つ負わずにだ。
守る必要が無ければもっと軽々と敵を屠るのだろう。その強さは神がかっている。
要するに、嫁ぎたい女が多すぎて牽制し合い戦いに明け暮れ、肝心のアースィムをおざなりにした結果が自分は不人気だというあの思い込みを招いたのだ。
何とも愚かな話だが、おかげで私が彼を婿に出来た。会った事もないクルシュの女達には感謝している。
おまけにだ。初対面の私にあんな殺し文句を平然と言い放つ男だ。
褒美も何も要らない、ただ私を泣かせない為に戦うなどと一体どういう了見だ。泣いたりはしないと思いながらもすっかり目が離せなくなってしまったではないか。
それだというのに何故、無自覚なのか。
天然ほどタチが悪いものは無いとは度々耳にしていたが、確かにその通りである。
「テオ?一体何の話を」
「いいか。離婚もしてやらないからな。おまえは老衰で死ぬまで私のものだ」
ようやく動きを再開したアースィムが戸惑いを露わに戻って来る。ギリギリと歯軋りをしながら言ってやったのに、その顔に浮かんだのは満面の笑み。
さすがに虚を突かれた私をそろそろと抱き寄せて、額を合わせてきた。
「うん、ずっとテオのものにしてて欲しい」
「………」
「俺、セオドアのことが本当に好きなんだ。これ以上ないっていつも思うのに、毎日昨日より好きになる」
初恋だからかな、なんてはにかむアースィムを前に、無様にも私は、言い返す言葉を完全に失った。
結局運ばれて来た昼食を共にした後、部屋を出る前に私もそうだと呟いたらベッドに引き込まれた。
午後の執務は急遽休みにした上に朝になっても腰が立たなかったが、後悔はしていない。
後日聞き直した所によると、あの女共は幼馴染み達を紹介してくれと強請っていたらしい。
アイツらも結婚かなと嬉しそうにする姿に舌を打つ。それならあれ程アースィムに触るのは可笑しいと気が付けと叱りつけた。
幼馴染みをダシにする姑息さにまた苛々した私は、結婚から半年経ってようやく、今度からは一人で行動しないと誓わせることに成功した。
王子として産まれ、立太子してから数年を経ている私だが。
こんなに思い通りにならず世話を焼かせる人間は、早々いない。
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