本当は貴方に興味なかったので断罪は謹んでお断り致します。

B介

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ネフェリア、学園編

婚約者候補

「失礼致します。」

生徒会室の扉を開くと、既に全員が揃っていた。その中にはまだメンバーでは無い、ナヴィルリアン皇子の姿もあった。


「エスティリオ…ネフェリアの様子はどうだ?」

重たい口を開いたのはヴィヴァリアンだった。

「はい。やっと明け方熱が下がりましたが、魘されるのは続いています。暫くは休ませる事になるでしょう。」


「そうか…。」


あれから、4日が経とうとしていた。

サリファンと話した後から精神的なものからだろう、高熱が続き、やっと明け方に下がったのだ。

そして、眠る度にあの光景を思い出す様で、魘され、涙を流すネフェリアを抱きしめ、エスティリオが起こすと言う行為が連日続いている。


「ネフェリアの話を聞いた後に判断しようと思ったが、難しいそうだな。トビー・ポンズとフレディー・シュームズは自宅待機とさせた。現在子爵家で監視下の元にいる。」

ヴィヴァリアンは大きく息を吐き、今後の流れを伝える。


「クソッ!!」

アリウスは怒りを露わに壁を殴る。


「あの日は盗難と備品が傷つけられる事が相次ぎ、確実に誰かが私達を謀ってのことだと思います。あの2人が考えられる事ではありません。」

「ああ、子爵から話を伺ったが、フィフィル・カトローザからの指示らしい。」

カウディリアンの意見に頷き、ヴィヴァリアンは新しく入った情報を口にした。


「フィフィル・カトローザ!?」

「ああ。だが、問題を起こした2人の証言のみで情報、証拠が無い。今サリファンに探ってもらっている。」

ヴィヴァリアンは視線をサリファンに送ると、頷きながら書類を手にして立ち上がる。


「あの日、ネフェリアと現場に向かった青年はネロ・アトム、アトム男爵の次男です。彼はフィフィルを崇拝していまして、口を割りませんが、他2人がフィフィルの指示だと子爵に話したようです。相次いで起きた盗難などの現場に、ネロとフィフィルの姿を見た者は居ますが、時間が様々で、罰するには証拠が無く、証言も曖昧です。」


「ネロが口を割ればいいのか?」

冷酷までの無表情と、そしてそれとは異なる、怒りに満ちた瞳を細めるキリウスに、サリファンはゴクリと唾を飲み込む。

彼ならネロの口を割らせることなどたわいも無いだろう。

だが、サリファンは赤い瞳を炎の様に静かに燃やし、キリウスを見つめた。

「無理矢理開かせるのは、もう少し、証拠が揃ってからに致しましょう。今不十分な中で開かせても、そう脅された…と言う逃げるすでを与えてしまいます。…この件は私にお任せください。必ず、暴いて見せます…。」

いつも冷静なサリファンの燃える様な赤い瞳に、キリウスも溜息を吐きつつ承諾した。


「この件はサリファンに任せよう…そして、もう一つ重大な話がある。」

ヴィヴァリアンの発言に一斉に視線が集まる。


「この件のもう一つ厄介な点は噂だ。噂は消そうにも回る。…既に一部生徒の周りでネフェリアが襲われた事も回っている。…現在の噂は、ネフェリアが身体を使い、私達を誑かしたという噂。そして、襲われたというのも曲がって伝わり、お願いすれば身体を開いてくれるというものもある。」


「な!ふざけんな!!」

「アリウス黙れ、話の途中だ。」 

キリウスはアリウスを制すが、叫びたいのは皆同じである。


グッ!と唇を噛み締め、ワナワナ震えるアリウスの背を優しく叩くサリファンも、拳を握り耐えている。


「…そのふざけた噂も信じる者もいるらしく、ネフェリアに執着、崇拝する者は、これを機に動き出すだろう…既に謀った者はプロント家の影が事前に解決した様だ。この影は、国王に今回の事を告げた際に宰相と国王の許可のもと、動いているので、内密にするように。ただ、学園側も生徒の環境を守る義務がある為、影は2名までだ。だから、全ての生徒を監視する事は難しい…。」

「ネフェリアに護衛をつけるのは?もし難しいなら、私が必ずお側に!!」

アリウスは手で心臓を押さえて、ヴィヴァリアンの側に跪くが、ヴィヴァリアンは首を横に振った。


「今までも、ネフェリアの側に着くようにしていたが、今回の問題は起きた。学園に部外者をこれ以上増やすのも難しいだろう。歴史上認められているのは王族のみだ。…それに、噂からはネフェリアを守れない。既に傷付いて魘されるネフェリアをこれ以上傷付けたくは無い。」

ヴィヴァリアンは眉を苦痛に歪めた。

「では、どのように対処するのですか?」

カウディリアンは既に決まっているのだろう、結論を急かした。

カウディリアンの顔の曇りを見て、何かしら勘づいているとヴィヴァリアンは思った。


「…先に言っておく。これは私の独断では無い。国王と宰相と話し合って決めた事だ。エスティリオも既に知っている。」


「兄上!だから何なのです?」

ナヴィルリアンも立ち上がり、ヴィヴァリアンへと詰め寄った。


「…ネフェリアを私とキリウスの婚約者候補と発表する。」

ヴィヴァリアンの発言に息を飲む。

「兄上!!そんな!!納得いきません!」

ナヴィルリアンは険しく目を釣り上げ抗議するが、ヴィヴァリアンは決まった事だと制した。


「…何故…ヴィヴァリアン兄上とキリウスなのですか?」


ワナワナと震えながらも、必死に感情を押し殺し…震える声で問うカウディリアンに、ヴィヴァリアンも深く呼吸をして姿勢を正す。


「一つ説明しておくと、あくまで候補だ。ネフェリアの気持ちを第一優先は変わらない。ただ、噂からや変な事を企てる輩から守るには王族の婚約者という資格が1番いいという事になった。私が婚約者になるのは優先順位と王位継承権順だ。ただ、候補を付けるに当たり、弱さが出る。それでも手を出す輩もいるだろう。だから、現在の学園最強で有り、王宮騎士団団長の長男キリウスにネフェリアの護衛権利と王族との関わりを深くし、使える権限を増やす為に同じく候補となった。」


アリウスは歯を軋ませながら体内にから溢れ出る負の感情と、暴れ叫びたい激情に耐えた。

何故、俺は兄上に勝てないのだ…

ネフェリアが兄上に憧れている事は知っている。


くそ!くそ!

アリウスは己の無力さを呪った。

それは、カウディリアンも同じだった。

「…複数婚約なら、何故私はダメなのですか?」

俯いていたカウディリアンはゆっくりと顔を上げ、ヴィヴァリアンを見る。

その瞳は嫉妬に歪み、ギラつく獰猛な眼差しをヴィヴァリアンに向けた。

「婚約者候補だからだ。」

「候補だから?」

カウディリアンは眉を寄せ、繰り返した。

「婚約者と決定なら、第一、第二皇子の婚約者に手を出せる者はいない。だが、候補とすると争いが生まれる。表だってはいないが、私達、其々に多少なりとも派閥はある。今のところ私が王太子となる事が決定しているが、ネフェリアを候補とするという事は、逆を言えば、どちらかの婚約者か決まっていない。そして、国王をも激愛するネフェリアが選んだ相手が王太子となると思う者も出るだろう。それが争いの種になる可能性は十分にあると国王は判断した。
もう一度言う。まだ候補だ。もしお前達がなりたいのなら、考えろ。私達だって、この様な形でを望んだ訳ではない。
カウディリアンはまず派閥等をどうにかしない限り候補としては選ばれん。」

静まり返る生徒会室、先程まで渦巻いていた感情も鎮まり、皆は思い思いにヴィヴァリアンの言葉を聞き、考えた。

自分に足りないもの、優れているもの、そしてネフェリアの事を。

今現在、学園での信頼度、力、全てに置いてヴィヴァリアン達には敵わない。

現状、2人が選ばれた事は悔しいが、仕方ない事。

拳を握りしめ、まだ候補という僅かな望みに、今後賭けるしかなかった。


「…もう一つ伝えなければいけない事があるのでは?」

静まり返った部屋にエスティリオの冷気を含んだ声が響く。

微かに怒りを含んだ声、そしてエスティリオの冷たい視線がヴィヴァリアンに刺さるのを不安気に皆は見ていた。

「エスティリオ…おまえ…!」

チッ!とヴィヴァリアンは小さく舌打ちをして、エスティリオを睨む。


「この件はプロント家は反対ですので…国王並びにヴィヴァリアン様とキリウス様の意見ですので、皆に話さないのは不公平でしょう。」


まだ何かあるのかと、これ以上落ち込む何かが…皆の瞳が揺れる。


ヴィヴァリアンとキリウスは視線を合わせて、頭を抱えた。


「貴方がたが、言い難いのなら私が言いましょう。」


「エスティリオ!」

ヴィヴァリアンが止めるのを聞かず、エスティリオは話始めた。

「彼らはネフェリアと閨を共にすると言っております。」

「なんだと!?」
「兄上!!」

流石に耐えきれず、感情のままカウディリアン、ナヴィルリアンは立ち上がり、アリウス、サリファンは顔を青白くし、目を見開いた。

「……医師の診断では、精神的ショックが強く、以前にも同じような形で高熱を出したようだ。…幼き頃からの恐怖と合わさり、現在熱のせいもあるが、眠る時間が増え、魘されの繰り返しだ。傷を消すには、その記憶を上書きするのが良いのでは…と…。」

ヴィヴァリアンは手で顔を覆い、先程とは違い、声が少しずつ小さくなっていった。


「だからって無理矢理抱くのですか!?」

「違う!!無理矢理ではない!!ネフェリアにきちんと確認を取ってからだ!!」

ナヴィルリアンの言葉にヴィヴァリアンは反応し、声を荒げた。

「確認って!王族からの申し出を断れる訳ないでしょう!!」

カウディリアンの言う事は最もで、ヴィヴァリアンは言葉を詰まらす。

「だから、プロント家はその件に反対しましたが、もう既に決定しております。ですが、私もネフェリアへの交渉の場に同席し、ネフェリアが断った後は閨の話も無くす事で同意となりました。ですので、例え権威を使えど、ネフェリアが嫌がった場合はプロント家は王族に牙を向くこととなります。…皆様に話したのは、貴方達もネフェリアを想うので有れば、ネフェリアの決断見守りなさいと申すためです。私共の力が足りず、ネフェリアを守れなかった事が、この様な結果を産んだのです。」

カウディリアンは膝から崩れるようにソファに座り込んだ。

アリウスは頭を抱え、蹲る。

サリファンは、ただ呆然と前を向いていた。

ナヴィルリアンは立ち尽くし、唇を血が滲む程噛み締めた。


ヴィヴァリアンの発言もエスティリオの言う意味も理解できるが、受け止める事が出来なかった。

どこにぶつけて良いか分からないドロドロしたものが溢れ出そうなのをただただ耐える事でその日は終えた。


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