何故私が呼ばれたの?彼らに望まれたチート級聖女!

B介

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「キャー!!高嶺様素敵!!」


朝稽古なのに、なんだこの観客数はと、頭を掻く顧問を他所に、見事な突きを決めて、騒がれるその人物の勝ちが決まる。

礼をして、面を外すと現れる見事なまでの美貌に、ほう…と熱い吐息が周りから漏れる。

「痛い、臭い、重いの三拍子の剣道部がまさかの観客で道場の周りが埋め尽くされるとは…何回見ても慣れないな。」


顧問40歳は、毎度の観客と化した生徒を一瞥して溜息を漏らす。

「先生、私日直なのでそろそろ…」

汗を輝かせて、駆け寄る生徒の放つ光の眩しさに目を細めながら、許可を出す。

「良いぞ、行け!他は切り返しを一往復したら、掃除な!」


「「ハイ!」」



「ごめん!先行きます!」

片手を顔の前に出し、すまなそうに謝り、そそくさと更衣室に向かう花田高嶺。

そんな彼女の背をポーッと見つめる部員と観客に顧問の檄が飛ぶ。


「おら!!チャッチャとしろ!!」

慌てて、並ぶ部員と、興味を無くした観客は道場から消えていった。


シャワーを浴びて、半乾きの艶やかなショートヘアを揺らしながら、教師へと急ぐ。

教室はまだ早いはずなのだが、大半の生徒が揃っていた。

「おはよう、皆早いね。」

あまり動かない美貌を、口角を少し上げて笑みを作る。

「おはよう!高嶺さん!日直を手伝うよ。」

「いや、俺が!!」

ワラワラと群がろうとする男らの間に入る女子生徒。


「高嶺!花瓶の花変えておいたよ?」

「職員室から日誌も!」


鼻息荒い女子達に男子はドン引き、高嶺も若干引き気味だが、率先して手伝ってくれた事は嬉しい。


「ありがとう。山木さん、田中さん。」


早めに戻ってきたが、やる事はほとんどなく、175センチの身長を使い、黒板を綺麗にする。


この女性の中、いや男性の中でも高い方に当たる身長と黒髪の真ん中分けのショートヘアのせいで、男性と間違えられる事もある。

大体は視線を下げて制服のスカートにて気づくのだが。

白い肌、瞳は大きいがキリリとした切れ長の目に、通った鼻筋、薄く赤い唇。

誰もが目を奪われる美貌と、スラッと細長い手足と、細いウエストに豊満な胸。

ゴクリと唾を飲み込みたくなる様な、プロポーション。

その上で運動神経抜群、全国5位の秀才といった敵無しのチートと言っても過言で無い。

その上、そんなチートを持っていたとしても奢らず、全てに精一杯取り組む姿と、困っている人への手助け、優しさに妬みさえ生まれない。


ただ、もし欠点と言えるものがあるのなら、滅多に動かない表情と、頼まれると断れない性格だろう。


泣きながら、一度デートをしてくれと他校の女子に頼まれ、デートして唇を奪われた事も最近の話だ。

ワンチャン土下座すれば…と、ゲスい考えの男子から守るのがファンクラブ女子の仕事なのである。


愛想はないが、朝稽古で疲れていても真面目に授業を受ける姿は教師にも評判が良い。

親を早くに無くし、厳しい祖父に育てられたからか、甘えることを知らず、表情が硬いのかもしれないと、教師達は話していた。

武道場をいくつも持つ祖父は出来て当たり前だと、5歳から厳しい修行を用いて育てていた事は彼女の小学、中学から引き継がれ高校の担任も知っている。それほど彼女は有名なのだ。

TVも見る事は許されず、コミュニケーションの取り方も話についていけず、常に困った様子が伺えた。

友人と言えるかわからないファンクラブの子達と遊べたのも高校からで、初めてのカラオケには目を見開いていたらしい。


しかも、歌も疎く、タンバリンを鳴らす姿が可愛いと動画に高値がついたらしい。


そして、厳しい祖父も亡くなり、1ヶ月。道場は従兄弟や親戚が受け持ち、高嶺は家と自分で稼げる様になるまでの遺産を手にした。



そんな彼女を見守りつつ、卒業したら…とゲスい考えを持つ先生もちらほら。




そんな彼女に事件は起きた。
授業を終え、また部活へと走り、1人の家に帰るのも慣れた頃だ。


更衣室のシャワーで簡単に流した程度じゃ満足できず、家の風呂で長風呂し、ホカホカの熱い身体にタオルを巻き、コーヒー牛乳をコクコクと飲み干した瞬間、いきなり足元が光り出したのだ。

流石のチート高嶺でも、この予想外の出来事には対処出来ず、咄嗟にタオルをしっかり抑えただけでも褒められたものだ。


そして訳もわからない光と共に、皆の高嶺はこの世界から姿を消した、瞬間だった。







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