転生天馬は乙女に寄り添う

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第一章

転生したら…………ペガサスかよ

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 体が重い……。
 頭はボーッとするし、指先と足先の感覚が曖昧で動かす気が全く起きない。
 俺、どうなったんだろう……。

 ゆっくりと目を開けてみる。
 目の前には…………草。花。木。
 けど森じゃない。林でもなければ草原でもない。
 なぜなら、更に視線を奥に向けると灰色の岩肌と、雲が揺蕩たゆたっていた。
 どうやらここは、自然豊かな山の上らしい。



(「起きたのね、可愛い坊や」)



 頭の中に、直接話しかけられているみたいだ……。



(「大丈夫? 立てる?」)



 立つ……?
 立つ前に、起き上がらないと…………。
 あれ? 俺、体の構造おかしくないか?

 明かに人間の体じゃない。
 違和感は確かにあるのに、自分の体はきちんと動かし方を知っている。

 まずは前脚。
 ゆっくり曲げ伸ばしして感じを確かめる。
 柔らかい草の感触は良く分からないけど、しっかりと地面に足を付いていることは分かった。

 力はっ、うまく、入らないけど……なっ……!

 前脚がプルプルしてる。
 それでも何とか踏ん張って半分だけ体を起き上がらせた。しかし、すぐに膝が折れて倒れてしまった。



(「頑張って、坊や!」)



 優しくも厳しい女性の声に励まされ、ガクガク震えてもつれる前脚をもう一度、今度はさっきよりも気合を入れて踏ん張った。



(「凄いわ坊や! その調子よ!」)



 顔や頭、体を舐められている……。
 でも、不思議と嫌じゃない。むしろ安心する。

 くそっ! 恐らく母親なんだろうけど、女に慰められんのは俺のポリシーに反するんだよっ……!!

 後脚に力を入れて、不格好ながらも立ち上がった。



(「凄い! 立ったわ! 流石わたくしの子!」)



 凄い舐められてる(物理)けど、ひとまず安心だな…………って、なんでこんなに急いで立つ必要があったんだろう?



『うぬ。これで全員無事に転生し、意識を持ったわけじゃな』



 ふと、頭の中に神様の声がした。



『……いやいや、それはそなたらに長生きをして欲しいからで…………そんなこと言われても、転生のし直しは無理じゃよ』



 どうやら他の三人の内の誰かが文句を言っているらしい。きっと夏帆か辰巳のどっちかだろうけど……。



『……切り替えが早いのぅ。そなたらのステータスは、「ステータス」と念じれば頭の中に浮かび上がるのじゃ。【鑑定】のスキルも同様じゃ。では、青春を謳歌するんじゃぞ!』



 まるで言い逃げのような感じだったけど、それ以降は何も聞こえてこないから本当に言い逃げたんだろう。

 念じれば良いのか?


(《ステータス》)



《名前:なし
 種族:幻獣種 ペガサス
 LV:1
 HP体力:100
 PW攻撃力:150
 DF防御力:120
 SP素早さ:200
 MP魔力:1000
 称号:『転生者』、『幻ノ魔獣マボロシノマジュウ
 スキル:【水属性魔法】Lv.1
     【風属性魔法】Lv.1
     【雷属性魔法】Lv.2
     【重力魔法】Lv.2
     【回復魔法】Lv.1
     【剛力】Lv.1
     【俊足】Lv.1
     【HP自動回復】Lv.1
     【MP自動回復】Lv.3
     【物理攻撃耐性】Lv.1
     【魔法攻撃耐性】Lv.2
     【誘惑耐性】Lv.1
     【視覚強化】Lv.1
     【魔力感知】Lv.2
     【思考加速】Lv.1
     【索敵】Lv.1
     【領域支配】Lv.1

     【鑑定】
      (称号:『転生者』特典、ユニークスキル)
     【念話】
     【威圧】
     【暗視】
     【第六感】
     【幻獣浄化ゲンジュウジョウカ
      (称号:『幻ノ魔獣』特典、固有スキル)
スキルポイント:1800》



 …………凄いのかどうか分からないけど、きっと凄い。
 っていうか、俺、ペガサスなのか?
 羽の生えた馬……だよな?
 名前が天馬だから、とか下らない理由だったら、あの"神様"はやっぱり信用ならないな。

 しかし、首の付け根と言うか、人間で言うところの肩甲骨辺りにある違和感の正体が分かった。
 力を入れるとぎこちないながらも動くことは確認できたが、空を飛べるようになるまでは時間が掛かりそうだった。

 そして、問題は二重で【鑑定】が使えるのかどうか……。
 ひとまずは頭の中に浮かび上がっている"幻獣種"について【鑑定】を掛けられるか検証してみる。


(【鑑定】)



《幻獣種=幻の魔獣。世界でも数頭、多くても十数頭しか確認されていない希少な魔物》



 どうやら二重鑑定は可能みたいだ。



(「坊や……」)



 すっかり忘れてたけど、立ち上がってからほとんど動かなくなった俺を母親……は心配してるんだろうか?

 声の聞こえた方へ顔を向けると、綺麗な青みがかった白色の有翼馬ペガサスが膝を折ってこうべを垂れていた。

 俺は一瞬迷って声を掛けようとした……けど、声は出なかった。

 なんでだ? …………【念話】のスキルがあるって事は、もしかしてペガサスって喋れないのか?!

 自問する形じゃなく、相手に問い掛けるようにして心の中で喋った。



(「母、さん……?」)



 出来た……。



(「坊や。いえ、有翼馬ゆうよくばの次期王よ……」)



 は?



[称号:『次期王』を獲得しました。称号:『次期王』特典として、【種族統率】Lv.1を獲得しました]



 は?
 ちょっと待て。色々話が進みすぎてついていけないんだけど?



(「次期王って、何?」)

(「私達ペガサスの中で、一番魔力量が多い者が次期王になるしきたりなのです」)



 つまり、今この世界にいるペガサスの中で俺が一番魔力量が多いってことか。



(「それに、生まれながらに聡明である貴方様なら、当然の事かと思います」)



 母親が急によそよそしい態度になった。
 転生したから生まれたてでも前世の18年分の知識はあるわけだし、ペガサス内で……というか、この世界基準での俺の強さが分からないけど、神様はステータスにも恩恵を与えるみたいな事言ってたし、きっと同種族の中では抜きんでた値なんだろう。
 と言うか……。



(「母さん。他のペガサスは何処にいるんだ?」)

(「次期王の貴方が呼べば、皆集まるでしょう」)



 呼ぶってなんだ? 状態なんだが……?

 もしかしてと思い、先ほど称号でゲットした【種族統率】について【鑑定】をしてみた。



《【種族統率】Lv.1=同種族において一定の権限が与えられる。
 Lv.1交信コンタクト 同種族間での交信が可能》



 凄い曖昧なスキルだった。
 でも、交信か……。同種族だけだとしても意外と便利かもな。


(【種族統率】)


((「あー……聞こえるかな? 俺は、ペガサスの次期王だ。いきなりで悪いけど、今から集まってもらいたい。種族の数を把握しておきたいんだ」))

((「…………分かりました」))



 どうやら通じたらしい。
 暫くすると何処からともなくバサバサという羽ばたき音が聞こえてきた。

 って、音がうるさっ!?

 俺が今いる山は雲が眼下にあるくらいだから標高は高い。にも関わらず、彼らは更に上空からゆっくりと下降してきた。

 気圧とかどうなってんだよ。



(「ペガサス一同、馳せ参じました」)

(「あ、うん……。ありが、とう……ございます……」)



 思わず敬語になるくらい壮観な光景。
 目の前には白を基調としたペガサスが達がきちんと隊列を組んで並んでいた。
 数にして12頭。
 4頭1組フォーマンセルが3隊。
 その中でも真っ白という言葉が似合うペガサスが一歩前に進み出て、俺に対して頭を下げた。



(「えっと……これで全部?」)

(「一頭、足りませんがそれは気にしないでください」)

(「つまりは……俺と、母さんと、君達12頭と、もう一頭。合計15頭がペガサスの総数ってことか?」)

(「そうなります」)



 この世界の広さがわからないけど、きっと絶対少ないんだろう。



(「他にご質問は?」)

(「ああ、えっと……本当に俺で良いのか?」)

(「申し訳ありません。意味を図りかねます」)



 ここに来る前から凄く丁寧な言葉遣いだけど、だからこそそれが刺々しく聞こえる……。
 俺の気のせいかも知れないけど、だからこそ、はっきりさせておきたい。



(「ペガサスの次期王が俺で良いのか? もしも今後、俺より優れた魔力量を持つものが現れるとするだろ? そうしたら迷わずお前らはそっちに行くだろ。それは別に全然構わない。けど、もしも現れなかったら……? こんな生まれて間もない俺に仕えるのはしゃくだろ? 俺だって同じ立場だったら嫌だね。だから、正直に言って欲しい。俺に従えないって奴はもう解散してくれ。俺に従う、もしくは俺の力を暫く様子見するやつはこのまま残ってくれ」)



 はぁ……。あんまり喋るの得意じゃないんだけど、これも仕方ない。
 『背後にも気を付けろ』っていうのが、戦場で大事なことだってなんかの本にも書いてあったし。
 俺、凄い頑張ったわー。

 密かにため息を吐きながら、他のペガサス達の行動を待つ。
 みんな戸惑っているのか暫くは誰も動かなかったが、真っ白なリーダー格のペガサスが小さく頭を下げて、ゆっくりと離れて飛び立って行った。
 すると、一頭。また一頭と飛び去って行き…………。



(「……結果、残ったのはあんただけか」)

(「皆、今の王を慕っておりますから……」)

(「母さんは、何で残った?」)



 そう。残ったのは俺を産んだ母親のペガサスだけだった。



(「私の愛する坊やですもの」)

(「そっか…………。ありがとう」)



 どの世界に行っても、母親ってのは変わらないらしい。
 まあ本の中に限らず、現実世界でも実の子を殺そうとする親や、本当に殺す親だって存在はするけど、俺を産んでくれたこの馬母親は良い親だ。



(「……ところで、俺の父親は?」)

(「現有翼馬の王です」)

(「……え? って事はなに? 俺、ペガサスの王子なのか?」)

(「人間風に言うとそうなります」)



 つまり、王様に従うのは良いけど、生まれたばかりの王子(次期王)には従えないって言われたことになる。

 冷淡というか何というか……。
 人間みたいに地位が全てとは思ってなかったけど、魔物や魔族って力が全てだと思ってなかったから、少しだけショックを受けている……っぽい。
 俺自身のことだけど、よく分からない感情だった。



(「次期王……どうされますか?」)

(「……ちょっと、一人になりたい」)

(「畏まりました。御用があればお呼びください」)



 母親は恭しく頭を下げて、ゆっくりと徒歩で山のある方角とは別の方角にある草原へと去っていった。

 今後の方針は未定という事で、ひとまずスキルの確認を先にする事にした。

 敵を知り、己を知れば百戦危うからず……だっけ? 


(【鑑定】)



《【水属性魔法】Lv.1=水属性の魔法を使用出来る。
 Lv.1 水球ウォーターボール

 【風属性魔法】Lv.1=風属性の魔法を使用出来る。
 Lv.1 風球ウィンドボール

 【雷属性魔法】Lv.2=雷属性の魔法を使用できる。
 Lv.1 雷球ライトニングボール
 Lv.2 雷弾ライトニングショット

 【重力魔法】Lv.2=重力魔法を使用出来る。
 Lv.1 重力操作グラビティ
 Lv.2 重力球グラビボール

 【回復魔法】Lv.1=回復魔法を使用出来る。
 Lv.1 治癒ヒール

 【俊足】Lv.1=レベルアップ時、ステータスのSPにスキルレベル×100のプラス補正が掛かる。

 【剛力】Lv.1=レベルアップ時、ステータスのPWにスキルレベル×100のプラス補正が掛かる。

 【HP自動回復】Lv.1=MPを自動で回復する。
  スキルレベルに応じて効果が上がる。
 Lv.1 5秒毎にHPの1%を回復

 【MP自動回復】Lv.3=MPを自動で回復する。
  スキルレベルに応じて効果が上がる。
 Lv.1 5秒毎にMPの1%を回復
 Lv.2 3秒毎にMPの1%を回復
 Lv.2 5秒毎にMPの3%を回復

 【物理攻撃耐性】Lv.1=物理攻撃に耐性が付く。
  スキルレベルに応じて効果が上がる。

 【魔法攻撃耐性】Lv.2=魔法攻撃に耐性が付く。
  スキルレベルに応じて効果が上がる。

 【誘惑耐性】Lv.1=誘惑のデバフに耐性が付く。
  スキルレベルに応じてデバフに掛かる確率が下がる。
 Lv.1 95%

 【視覚強化】Lv.1=視覚範囲が強化される。
  スキルレベルに応じて効果範囲が広がる。

 【魔力感知】Lv.2=あらゆる魔力を感知する。
  スキルレベルに応じて効果範囲が広がる。

 【思考加速】Lv.1=思考能力が加速される。
  スキルレベルに応じて効果が上がる。

 【索敵】Lv.1=敵の情報を探し出す。
  スキルレベルに応じて効果が上がる。
 Lv.1 僅かに離れた距離の敵の大まかな位置を把握

 【領域支配】Lv.1=一定の領域に支配権が与えられる。
  スキルレベルに応じて効果範囲が広がる。
 Lv.1 自分を中心に半径1メートル

 【種族統制】Lv.1=同種族において一定の権限が与えられる。
 Lv.1交信コンタクト 同種族間での交信が可能。

 【鑑定】(称号:『転生者』特典、ユニークスキル)
 =神羅万象を知る事が可能。

 【念話】=声帯を使わず思念で会話する。

 【威圧】=相手に恐慌の状態異常を付与する。
     (使用者の魔力量とレベルに依存)

 【暗視】=暗いところでも視界を確保する。

 【第六感】=危険を予知する。

 【幻獣浄化ゲンジュウジョウカ】(称号:『幻ノ魔獣』特典、固有スキル)
 =ありとあらゆる毒物を浄化する。》



 ひとまず全てのスキルを二重鑑定した結果がこれだった。
 レベルが付いてるやつと付いてないやつの差は、きっとそこでスキルの成長が終わってるからとかだろう。
 そういう察しの良さや順応性は、漫画もラノベも読み漁った俺が唯一誇れる長所かもしれない。

 さて、あとはスキルポイントの用途だな……。


(【鑑定】)



《スキルポイント=スキルレベルを上げたり、新たなスキルを獲得する事が出来る。適性によって必要なスキルポイントに差がある》



 これも予想した通りの鑑定結果だった。

 今のところ欲しいスキルとかが思いつかないんだよな。転生したばっかりだし、敵と戦ってもいないから自分の能力分かんないし。

 という事で、生まれたてで上手く歩けないままなのも嫌だから、自分の体を慣らすのも含めて周囲を簡単に散歩してみることにした。
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