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第一章
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少し埃っぽいような、けれどスパイスやドライフルーツの良い香りのする倉庫で、マスターが今から一体何をするのかドキドキしながら待っていると、マスターはおもむろに首から下げている透明な石を外してみせた。
…………ん?
てっきり、漫画やアニメみたいにマスターが不思議な光に包まれて実は子供の姿は仮の姿で、本当は俺たちみたいな魔物でしたとか、封印していた魔力が溢れかえって吹き飛ばされたりを覚悟してたんだが?
マスターの見た目に変化は見られない。
もしかして筋力が凄くてりんごを片手で粉々にしたり、デコピンで地面を砕いたりできるようになったとか?
そんな妄想に近い想像を膨らませている後ろでは、ファスティアが成り行きを見守るように静かに佇んでいた。
「天……ペガサス。オレの目を見てみろ」
(「目? あ……。虹彩が、虹色になってる」)
元は普通の焦茶色だったマスターの瞳が、光を当てたダイヤモンドのように虹色に輝いていた。
「めずらしいだろ。せかいでもオレだけらしい」
(「はー……。凄い。まるで…………」)
「まるで? ペガサスくんはこの子の目をどう思う?」
(「あー、いや、宝石みたいだなーと」)
ファスティアに聞き返されて言葉に詰まった。
前世で虹色の瞳を持つキャラクターを羅列しようとしたが、咄嗟に【念話】を個人用に切り替えることすら忘れて呟きそうになってしまった俺は、当たり障りのない答えを言うことで何とか誤魔化した。
ファスティアの観察眼を侮ることはできない。下手にフラグを立ててマスターにまで迷惑をかけるのは俺も望んではいないからな。
マスターは俺が何を言おうとしたのかなんとなく察していたのか、話題を変えるために淡々とした声で話を続けてくれた。
「オレは父さんや母さんをこえるかのうせいがあるらしい」
「アースはギフテッドなのよー。この綺麗な瞳はその証だと思っているの。何でも出来てしまうから、何にでも成れるの。歳の割にしっかりしてるから大丈夫だとは思うけど、何があるかわからないから隠させているのよ」
(「犯罪に巻き込まれる可能性もあるってことか」)
「理解が早くて助かるわー」
中身がマスターだから俺もさほど心配はしてないが、誘拐に人身売買、下手すると某漫画の一族みたいに目玉だけくり抜かれて……なんてこともあり得る。
特に今のマスターはたった5歳の子供だ。イクスやファスティアを超える可能性はあっても、未来の話であって今現在はどうしようもない。
両親が両親だけにそんなアホなことする輩はほぼほぼ居ないと思うが、魔法に溢れたファンタジーなこの世界でも絶対は無いだろう。
「オレのこのまほうぐは【変化】の力がこめられている。これがあれば、つばさくらいはかくせる」
首飾り……もとい、魔法具を差し出しながらマスターが説明してくれた内容は、今の俺にはとてもありがたい物だった。
(「良いのか?!」)
「いつまでも道具にたよってたら、成長できない」
「あらあら。それは私がいつも言ってるセリフよねー?」」
「母さん!」
あの無口で無愛想なマスターも、5歳児になった今は母親に対しては年相応の顔を見せるようで微笑ましい。
「とにかく、オレはもう【変化】をおぼえたから、これはお前にやる」
「アース、話し方が粗雑になってるわよー」
「……君にあげる」
「はい。よく出来ましたー」
母親の教育の成果……か?
「全く、私もイクスも普通に話しているのに、どこでこんな荒っぽい話し方を覚えちゃったのかしら?」
それは間違いなく前世の記憶だな。
母親の教育も、前世で過ごした年月には敵わない。
異世界で転生しても、きちんと前世が活きているという事実が、俺以外の存在で実感できてなんだか嬉しかった。
「うちにくるお客さんから、おぼえた」
「……そう。なら、その人たちは出禁にしなきゃダメね」
(「さすがにそれは……」)
「なーに? うちの教育方針に他人が……って、私ってば魔物相手に何を言っているのかしら」
やらかしたか?
マスターも余計なこと言うなっていう目で見てくるし、これ以上墓穴掘る前にとっとと退散した方が良いな。
(「それ、首に掛けてもらえるか?」)
「あ、ああ。わかった。母さん」
「そうね。でも、その前にペガサスくんの鬣を少し貰えるかしら?」
(「良いけど、どうするんだ?」)
「今の紐だと短いし、何よりこの魔法具は常に魔力を流し続ける必要があるのよ」
ファスティアの説明だと【変化】の魔道具は常に一定の魔力を流し続ける必要があるという。
マスターは別の魔道具を使って魔力を供給し続けていたが、俺は別の魔道具を使うより、自身の肉体の一部を使う方が効率が良いらしい。
魔族の肉体の一部は、本体が生きていれば魔力を帯び続ける。つまり、俺の鬣で魔道具の紐を作れば、俺から切り離されたとしても魔力を供給し続けてくれるというわけだ。
この仕様を活用しているものは他にもあり、硬度と柔軟性の相反する性質を持つケイブスパイダーの蜘蛛糸は衣服に織り込ませれば防御力が上がる。家畜の一種として牛や羊に並んで蜘蛛が居るのと知ったときは「異世界ってやっぱ凄いんだな」と思った。
あとは魅力を上げる香水。これはゾディアカルト聖王国で貴族の令嬢が大枚を叩いてでも手に入れたい代物で、希少な魔植物であるチャーミーフラワーの蜜を香水にしたものだ。一滴使えばごく自然な流れで意中の相手と恋愛に発展できるらしい。
(スピカが持ってて、説明付きで自慢されたなー。アリーも持ってたのは、やっぱり年頃の女子って感じで可愛かった)
チャーミーフラワーの香水は個体が死んでも暫くは良い香りがするらしいけど、誘惑の効果は無くなっているという。
確か人間は香りで相性の良し悪しを判断する生き物だったはずだから、誘惑の効果が無くても純粋に香水としての香りだけで恋愛に発展しそうなものだけど、乙女としては1パーセントでも効果が上がる心の拠り所が欲しいんだろうな。
分からなくはないが、女心は複雑で奇怪だ。素直に鵜呑みにすると痛い目を見るということを知っているのは、苦い経験だ。
……って、なんでこんな話をしてるんだ。俺は。
「やっぱり鬣はダメかしら? 尻尾より魔力伝導率が高いと思うのよねー。一番良いのは両方貰えると嬉しいのだけど」
変な考えを頭から追い出して、違和感が無いようにファスティアに返答する。それでも読心術で見破られてそうだが、見栄で無理やり取り繕った。
(「鬣……だけなら」)
「……そう。残念」
心底残念そうなファスティアに申し訳ないと心の中で謝罪をしながら、頭を少し下げて鬣を差し出した。
「じゃあ遠慮なく貰うわねー」と言いながらどこからか取り出したハサミでショキショキと切っていく。
……あれ? これ、意外と切られてないか?
「母さん。それくらいで良いとおもう」
「えー。もう少しないと」
(「ファスティア? え、ちょっと……アース? 俺の鬣どうなってるんだ?」)
「上の方がみじかくて、下にいくほど長い。けっこうシャレてる」
(「一応見た目を気にして切ってくれたのか」)
「当たり前よ。なんてったってペガサスくんよ? いついかなる時でも幻獣種の名に恥じない姿をしていて欲しいわー」
「母さんはペガサスとかグリフォン、フェンリルにはかっこうよくいてほしいとおもってる」
(「なるほどな」)
どこまでいっても女性は乙女である、と。
「これだけあれば十分ねー。ふふっ。パパッと作ってくるわー」
切った鬣を大事そうに布に包んだファスティアはウインクとともにそう言って倉庫を出て行こうとしたが、「そうそう」と一言付け足して行った。
「アースに何かしたら許さないわよ?」
(「絶対にしない!」)
氷点下の微笑みで今度こそ倉庫を後にしたファスティアに、心の底からの返答を彼女に飛ばした。
【念話】は相手が見えていれば届く。見えていなくても相手の姿を正確に思い浮かべられれば届けられる。
俺は未だ目の前に居ないと念話が届かないから必死だった。
「くっくっく……。そんなひっしにならなくても、天馬は母に気に入られたからころされることはないぞ」
だからか、素になったマスターに笑われてしまった。
(「そんなに笑うなよ」)
「しかたないだろ。お前の話しかたもかたくるしくていわかんしかないぞ」
(「そうなのか? 俺は普通に話してるんだけどな。人間に届くと堅苦しく聞こえるのか」)
「にんげん、か。ガキがいっちょまえにまものにそまったな」
(「そういうマスターこそ、子供の姿が似合ってるぞ」)
他愛無い言い合い。まるでお互いの魂を確かめるような、とても懐かしいやり取りだった。
(とりあえず、一人は見つけられることができた)
確かに目標に向かって前進したという事実が、前世の自分を知っている人物に出会えたという安心感が、何よりも嬉しかった。
「なつかしさに花をさかせるのもいいが、母がもどってくる前にいろいろとはなしておいたほうがいいだろう」
(「賛成」)
俺とマスターは、包み隠すことなくお互いに何があったのかを話し合った。
神様がこの世界に俺たちを転生させた経緯は同じ。ただ、マスターは魔物ではなく人として転生させることにしたのは、前世で生きた時間の違いだと神は言ったらしい。
まあ、若くして死なせてしまったお詫びに寿命の長い魔物に転生させるって言ってたしな……。
マスターも魔物よりも人として生きたかったから良かったと言っていて、もしも魔物にと言われたら断ってでも人間に転生するつもりだったとも言った。
あとは俺とマスターが出会うまでのお互いの生き方なんかを掻い摘んで報告した。
最後に、マスターから『神へのアクセス権』についての話になった。
「オレはまだつかってないが、天馬はどうだ?」
(「俺も同じ。何に使ったら良いか分からないし、何よりこういうチート能力はここぞという時に取っておきたいタイプだ」)
「だとおもった。が、ごしょうだいじにとっておくものでもないことはわかるな?」
(「それを言われると痛いんだが?」)
レア度の高いアイテムを使うのが勿体無くて、結局使わずに努力と根性でクリアしたゲームが結構ある。
使ったら楽にクリアできたとか、使わないと時間の無駄だとか辰巳に言われたことも多々あるけど、俺はアイテムを使ってサクサク攻略するよりPSを磨いてクリアしたい。
今生きてる世界はゲームでもなんでもなく現実で、死んだら終わりの世界なのも理解してるけどな。
「天馬がそういうせいかくなのしってるからな。オレのけんげんをお前にやるよ」
(「は? そんなこと出来るのか?」)
「やる」
格好良いなおい。
若い頃は舎弟とか絶対居ただろうって辰巳が噂してたのもあながち間違いじゃ無いかもな。
「かみへのアクセスけんを使いたい。ここにいる天馬だけかいわにまぜろ」
『あーあー、これでペガサスにも儂の声が聞こえるじゃろう?』
(「ああ。ばっちりとな」)
『して、そなたは儂に何を望む?』
「ここにいるペガサスに、オレのけんりをわたしたい」
『ふむ……』
しばしの沈黙。
これは……ダメなパターンなんだろうか?
神の出方を今か今かと待つ俺たちの心境は、揺れる瞳と尻尾が物語っている。
『うむ。まあ良いじゃろう』
「本当か?」
『嘘はつかんよ』
(「裏を返せば真実も言わない。なんてことはないよな?」)
『疑り深いのう。だがしかし、まあ……相応の対価は貰うことになるが、それでも良いなら譲渡を許可してやるぞい』
「たいか……。なにをさし出せばいい?」
(「マスター! そんな簡単に決めて良いのか?」)
「ようきゅうが気に入らないなら、ペガサスにはわるいけどじょうとのはなしはなかったことになるだけだ。そのかわり、お前たちがオレのたすけがひつようなときに、いつでもかけつけられるような力をかみにねがう」
(「マスター……」)
なんて素晴らしい大人な対応なんだ……。今は子供だけど。
でも、俺たちが死んでしまったのはマスターの所為じゃない。にも関わらず、その場にいた大人としての責任感がマスターをここまでさせるのだろうか?
だとしたらこの話は俺にとってはありがたいが、過ぎたもののような気がするのも事実だ。そこまで甘えて良いのだろうか?
(「マスター、あのさ」)
「なんだ? ひつようないとか言いたいのか?」
(「そこまでは言わないが、甘やかしすぎじゃないかと……」)
素直な気持ちをそのまま言っただけなのに、マスターはニヒルに笑って見せた。
「これがさいごの大人のつとめだ。お前はいらなくとも、オレのきょうじのためにやらせろ」
マスター!!!
俺もこんな大人になりたい。
ファスティアに言われたように父さんももちろん尊敬してるけど、俺は死んだ母さんのちょっと強引でも相手に重荷を背負わせないような、そんな格好良さに憧れてるんだ。
いつか返そう。この恩を。マスターが遠慮しないような格好良い方法で。
(「分かったよマスター。貰えるなら、ありがたく貰っとくよ」)
「おう」
『なんと心の良い人間たちじゃ! 儂は年甲斐もなく感動したぞ! 本来なら譲渡は相応の対価を貰う。今回はアースの転生特典である【優等生】を対価としようと思っていたが、お主にはそのまま授けておく。まあ何もなし、というわけにはいかんから経年変化はさせるがの』
「つまり、ほとんど今とかわらないままってことか?」
『そうなるの』
破格の待遇だな。
神様は見ているっていうことが、現実に目の前で行われているのか。
『では、アースの権利を複製し、ペガサス……ふむ、今はキリオスと名乗っておるのか。ならばペガサス改めキリオスに授ける』
(「わざわざ複製するのか?」)
『儂とコンタクトを取った時点でアクセス権は行使しとるからの。複製して譲渡する形になるのじゃ。その複製の過程で対価を貰うんじゃよ』
(「へぇ」)
なんか手順が面倒だな。抜け道があれば楽なんだが。
『うむ。これでキリオスはアクセス権を2回使えるようになったぞ』
(「あんまり実感がないな」)
「なにはともあれ、これでお前がムチャしてもくびのかわ2まいはつながったな」
(「あははは……。そうならないよう気を付ける」)
マスターに釘を刺されてこの話は終わりかと思っていたら、神の方からまだ何か話があるようで、名前を貰ったは良いけど呼ぶ人が少なすぎて反応が遅れる。
『キリオスよ』
(「……俺か」)
『アクセス権を2回分持っておるからといって、お主が権利の複製をすることを禁じる』
(「あ、やっぱり?」)
『当たり前じゃろ。システムが崩壊するわい。何より面倒じゃ』
(「システム化されてるんだ……。あ、でも複製できることを他人に教えるのはセーフか?」)
『グレーゾーンじゃが、まあ一人だけなら良いじゃろ』
一人だけ、か。
確かこの世界に来てからすぐ、アクセス権を使ったやつが居るはずだ。もしかしたらさっきのマスターみたいにオフレコで使った奴もいるかもしれないが、神の発言から察するに一人は絶対に権利を使ってない奴がいるってことだ。
美貴、夏帆、辰巳の誰が使って誰が使ってないのか。
次に会うのが誰なのか。むしろ使ってない奴にアタリを付けて探すか。
『くれぐれも悪用するでないぞ』
(「分かってるって」)
「天馬はそんなやつじゃない」
『そうそう。神である儂からのアドバイスじゃ。出自や前世を探られたくないのなら、お互いの呼び名を直した方が身のためじゃぞ』
最後にそう言って神とのアクセスが途切れた。
核心を突いたアドバイスに、さすが神だなと心の中で感謝した。
「オレもむかしのクセで天馬ってよんでたな。今は……キリ……なんだ?」
(「キリオス」)
「なんだそのへんななまえ」
(「こっちの世界じゃ普通なんだろ。運と巡り合わせらしいぞ、アース」)
「そうか。よろしくなキリオス」
二人で新しい名前と姿にしみじみしていると、常時発動している【自動地図】でこちらに近付いている緑色の点を捉えた。
脳みそが一個だけだから、会話に集中したりしてると【自動地図】を気にしてる余裕がないのがネックだな。
アラート機能とかあったら良いが、無いものねだりするよりマルチタスクをこなせるようなスキルを見付けて取得するか。
そしてゆったりした声と共にファスティアが室内に入ってきた。
…………ん?
てっきり、漫画やアニメみたいにマスターが不思議な光に包まれて実は子供の姿は仮の姿で、本当は俺たちみたいな魔物でしたとか、封印していた魔力が溢れかえって吹き飛ばされたりを覚悟してたんだが?
マスターの見た目に変化は見られない。
もしかして筋力が凄くてりんごを片手で粉々にしたり、デコピンで地面を砕いたりできるようになったとか?
そんな妄想に近い想像を膨らませている後ろでは、ファスティアが成り行きを見守るように静かに佇んでいた。
「天……ペガサス。オレの目を見てみろ」
(「目? あ……。虹彩が、虹色になってる」)
元は普通の焦茶色だったマスターの瞳が、光を当てたダイヤモンドのように虹色に輝いていた。
「めずらしいだろ。せかいでもオレだけらしい」
(「はー……。凄い。まるで…………」)
「まるで? ペガサスくんはこの子の目をどう思う?」
(「あー、いや、宝石みたいだなーと」)
ファスティアに聞き返されて言葉に詰まった。
前世で虹色の瞳を持つキャラクターを羅列しようとしたが、咄嗟に【念話】を個人用に切り替えることすら忘れて呟きそうになってしまった俺は、当たり障りのない答えを言うことで何とか誤魔化した。
ファスティアの観察眼を侮ることはできない。下手にフラグを立ててマスターにまで迷惑をかけるのは俺も望んではいないからな。
マスターは俺が何を言おうとしたのかなんとなく察していたのか、話題を変えるために淡々とした声で話を続けてくれた。
「オレは父さんや母さんをこえるかのうせいがあるらしい」
「アースはギフテッドなのよー。この綺麗な瞳はその証だと思っているの。何でも出来てしまうから、何にでも成れるの。歳の割にしっかりしてるから大丈夫だとは思うけど、何があるかわからないから隠させているのよ」
(「犯罪に巻き込まれる可能性もあるってことか」)
「理解が早くて助かるわー」
中身がマスターだから俺もさほど心配はしてないが、誘拐に人身売買、下手すると某漫画の一族みたいに目玉だけくり抜かれて……なんてこともあり得る。
特に今のマスターはたった5歳の子供だ。イクスやファスティアを超える可能性はあっても、未来の話であって今現在はどうしようもない。
両親が両親だけにそんなアホなことする輩はほぼほぼ居ないと思うが、魔法に溢れたファンタジーなこの世界でも絶対は無いだろう。
「オレのこのまほうぐは【変化】の力がこめられている。これがあれば、つばさくらいはかくせる」
首飾り……もとい、魔法具を差し出しながらマスターが説明してくれた内容は、今の俺にはとてもありがたい物だった。
(「良いのか?!」)
「いつまでも道具にたよってたら、成長できない」
「あらあら。それは私がいつも言ってるセリフよねー?」」
「母さん!」
あの無口で無愛想なマスターも、5歳児になった今は母親に対しては年相応の顔を見せるようで微笑ましい。
「とにかく、オレはもう【変化】をおぼえたから、これはお前にやる」
「アース、話し方が粗雑になってるわよー」
「……君にあげる」
「はい。よく出来ましたー」
母親の教育の成果……か?
「全く、私もイクスも普通に話しているのに、どこでこんな荒っぽい話し方を覚えちゃったのかしら?」
それは間違いなく前世の記憶だな。
母親の教育も、前世で過ごした年月には敵わない。
異世界で転生しても、きちんと前世が活きているという事実が、俺以外の存在で実感できてなんだか嬉しかった。
「うちにくるお客さんから、おぼえた」
「……そう。なら、その人たちは出禁にしなきゃダメね」
(「さすがにそれは……」)
「なーに? うちの教育方針に他人が……って、私ってば魔物相手に何を言っているのかしら」
やらかしたか?
マスターも余計なこと言うなっていう目で見てくるし、これ以上墓穴掘る前にとっとと退散した方が良いな。
(「それ、首に掛けてもらえるか?」)
「あ、ああ。わかった。母さん」
「そうね。でも、その前にペガサスくんの鬣を少し貰えるかしら?」
(「良いけど、どうするんだ?」)
「今の紐だと短いし、何よりこの魔法具は常に魔力を流し続ける必要があるのよ」
ファスティアの説明だと【変化】の魔道具は常に一定の魔力を流し続ける必要があるという。
マスターは別の魔道具を使って魔力を供給し続けていたが、俺は別の魔道具を使うより、自身の肉体の一部を使う方が効率が良いらしい。
魔族の肉体の一部は、本体が生きていれば魔力を帯び続ける。つまり、俺の鬣で魔道具の紐を作れば、俺から切り離されたとしても魔力を供給し続けてくれるというわけだ。
この仕様を活用しているものは他にもあり、硬度と柔軟性の相反する性質を持つケイブスパイダーの蜘蛛糸は衣服に織り込ませれば防御力が上がる。家畜の一種として牛や羊に並んで蜘蛛が居るのと知ったときは「異世界ってやっぱ凄いんだな」と思った。
あとは魅力を上げる香水。これはゾディアカルト聖王国で貴族の令嬢が大枚を叩いてでも手に入れたい代物で、希少な魔植物であるチャーミーフラワーの蜜を香水にしたものだ。一滴使えばごく自然な流れで意中の相手と恋愛に発展できるらしい。
(スピカが持ってて、説明付きで自慢されたなー。アリーも持ってたのは、やっぱり年頃の女子って感じで可愛かった)
チャーミーフラワーの香水は個体が死んでも暫くは良い香りがするらしいけど、誘惑の効果は無くなっているという。
確か人間は香りで相性の良し悪しを判断する生き物だったはずだから、誘惑の効果が無くても純粋に香水としての香りだけで恋愛に発展しそうなものだけど、乙女としては1パーセントでも効果が上がる心の拠り所が欲しいんだろうな。
分からなくはないが、女心は複雑で奇怪だ。素直に鵜呑みにすると痛い目を見るということを知っているのは、苦い経験だ。
……って、なんでこんな話をしてるんだ。俺は。
「やっぱり鬣はダメかしら? 尻尾より魔力伝導率が高いと思うのよねー。一番良いのは両方貰えると嬉しいのだけど」
変な考えを頭から追い出して、違和感が無いようにファスティアに返答する。それでも読心術で見破られてそうだが、見栄で無理やり取り繕った。
(「鬣……だけなら」)
「……そう。残念」
心底残念そうなファスティアに申し訳ないと心の中で謝罪をしながら、頭を少し下げて鬣を差し出した。
「じゃあ遠慮なく貰うわねー」と言いながらどこからか取り出したハサミでショキショキと切っていく。
……あれ? これ、意外と切られてないか?
「母さん。それくらいで良いとおもう」
「えー。もう少しないと」
(「ファスティア? え、ちょっと……アース? 俺の鬣どうなってるんだ?」)
「上の方がみじかくて、下にいくほど長い。けっこうシャレてる」
(「一応見た目を気にして切ってくれたのか」)
「当たり前よ。なんてったってペガサスくんよ? いついかなる時でも幻獣種の名に恥じない姿をしていて欲しいわー」
「母さんはペガサスとかグリフォン、フェンリルにはかっこうよくいてほしいとおもってる」
(「なるほどな」)
どこまでいっても女性は乙女である、と。
「これだけあれば十分ねー。ふふっ。パパッと作ってくるわー」
切った鬣を大事そうに布に包んだファスティアはウインクとともにそう言って倉庫を出て行こうとしたが、「そうそう」と一言付け足して行った。
「アースに何かしたら許さないわよ?」
(「絶対にしない!」)
氷点下の微笑みで今度こそ倉庫を後にしたファスティアに、心の底からの返答を彼女に飛ばした。
【念話】は相手が見えていれば届く。見えていなくても相手の姿を正確に思い浮かべられれば届けられる。
俺は未だ目の前に居ないと念話が届かないから必死だった。
「くっくっく……。そんなひっしにならなくても、天馬は母に気に入られたからころされることはないぞ」
だからか、素になったマスターに笑われてしまった。
(「そんなに笑うなよ」)
「しかたないだろ。お前の話しかたもかたくるしくていわかんしかないぞ」
(「そうなのか? 俺は普通に話してるんだけどな。人間に届くと堅苦しく聞こえるのか」)
「にんげん、か。ガキがいっちょまえにまものにそまったな」
(「そういうマスターこそ、子供の姿が似合ってるぞ」)
他愛無い言い合い。まるでお互いの魂を確かめるような、とても懐かしいやり取りだった。
(とりあえず、一人は見つけられることができた)
確かに目標に向かって前進したという事実が、前世の自分を知っている人物に出会えたという安心感が、何よりも嬉しかった。
「なつかしさに花をさかせるのもいいが、母がもどってくる前にいろいろとはなしておいたほうがいいだろう」
(「賛成」)
俺とマスターは、包み隠すことなくお互いに何があったのかを話し合った。
神様がこの世界に俺たちを転生させた経緯は同じ。ただ、マスターは魔物ではなく人として転生させることにしたのは、前世で生きた時間の違いだと神は言ったらしい。
まあ、若くして死なせてしまったお詫びに寿命の長い魔物に転生させるって言ってたしな……。
マスターも魔物よりも人として生きたかったから良かったと言っていて、もしも魔物にと言われたら断ってでも人間に転生するつもりだったとも言った。
あとは俺とマスターが出会うまでのお互いの生き方なんかを掻い摘んで報告した。
最後に、マスターから『神へのアクセス権』についての話になった。
「オレはまだつかってないが、天馬はどうだ?」
(「俺も同じ。何に使ったら良いか分からないし、何よりこういうチート能力はここぞという時に取っておきたいタイプだ」)
「だとおもった。が、ごしょうだいじにとっておくものでもないことはわかるな?」
(「それを言われると痛いんだが?」)
レア度の高いアイテムを使うのが勿体無くて、結局使わずに努力と根性でクリアしたゲームが結構ある。
使ったら楽にクリアできたとか、使わないと時間の無駄だとか辰巳に言われたことも多々あるけど、俺はアイテムを使ってサクサク攻略するよりPSを磨いてクリアしたい。
今生きてる世界はゲームでもなんでもなく現実で、死んだら終わりの世界なのも理解してるけどな。
「天馬がそういうせいかくなのしってるからな。オレのけんげんをお前にやるよ」
(「は? そんなこと出来るのか?」)
「やる」
格好良いなおい。
若い頃は舎弟とか絶対居ただろうって辰巳が噂してたのもあながち間違いじゃ無いかもな。
「かみへのアクセスけんを使いたい。ここにいる天馬だけかいわにまぜろ」
『あーあー、これでペガサスにも儂の声が聞こえるじゃろう?』
(「ああ。ばっちりとな」)
『して、そなたは儂に何を望む?』
「ここにいるペガサスに、オレのけんりをわたしたい」
『ふむ……』
しばしの沈黙。
これは……ダメなパターンなんだろうか?
神の出方を今か今かと待つ俺たちの心境は、揺れる瞳と尻尾が物語っている。
『うむ。まあ良いじゃろう』
「本当か?」
『嘘はつかんよ』
(「裏を返せば真実も言わない。なんてことはないよな?」)
『疑り深いのう。だがしかし、まあ……相応の対価は貰うことになるが、それでも良いなら譲渡を許可してやるぞい』
「たいか……。なにをさし出せばいい?」
(「マスター! そんな簡単に決めて良いのか?」)
「ようきゅうが気に入らないなら、ペガサスにはわるいけどじょうとのはなしはなかったことになるだけだ。そのかわり、お前たちがオレのたすけがひつようなときに、いつでもかけつけられるような力をかみにねがう」
(「マスター……」)
なんて素晴らしい大人な対応なんだ……。今は子供だけど。
でも、俺たちが死んでしまったのはマスターの所為じゃない。にも関わらず、その場にいた大人としての責任感がマスターをここまでさせるのだろうか?
だとしたらこの話は俺にとってはありがたいが、過ぎたもののような気がするのも事実だ。そこまで甘えて良いのだろうか?
(「マスター、あのさ」)
「なんだ? ひつようないとか言いたいのか?」
(「そこまでは言わないが、甘やかしすぎじゃないかと……」)
素直な気持ちをそのまま言っただけなのに、マスターはニヒルに笑って見せた。
「これがさいごの大人のつとめだ。お前はいらなくとも、オレのきょうじのためにやらせろ」
マスター!!!
俺もこんな大人になりたい。
ファスティアに言われたように父さんももちろん尊敬してるけど、俺は死んだ母さんのちょっと強引でも相手に重荷を背負わせないような、そんな格好良さに憧れてるんだ。
いつか返そう。この恩を。マスターが遠慮しないような格好良い方法で。
(「分かったよマスター。貰えるなら、ありがたく貰っとくよ」)
「おう」
『なんと心の良い人間たちじゃ! 儂は年甲斐もなく感動したぞ! 本来なら譲渡は相応の対価を貰う。今回はアースの転生特典である【優等生】を対価としようと思っていたが、お主にはそのまま授けておく。まあ何もなし、というわけにはいかんから経年変化はさせるがの』
「つまり、ほとんど今とかわらないままってことか?」
『そうなるの』
破格の待遇だな。
神様は見ているっていうことが、現実に目の前で行われているのか。
『では、アースの権利を複製し、ペガサス……ふむ、今はキリオスと名乗っておるのか。ならばペガサス改めキリオスに授ける』
(「わざわざ複製するのか?」)
『儂とコンタクトを取った時点でアクセス権は行使しとるからの。複製して譲渡する形になるのじゃ。その複製の過程で対価を貰うんじゃよ』
(「へぇ」)
なんか手順が面倒だな。抜け道があれば楽なんだが。
『うむ。これでキリオスはアクセス権を2回使えるようになったぞ』
(「あんまり実感がないな」)
「なにはともあれ、これでお前がムチャしてもくびのかわ2まいはつながったな」
(「あははは……。そうならないよう気を付ける」)
マスターに釘を刺されてこの話は終わりかと思っていたら、神の方からまだ何か話があるようで、名前を貰ったは良いけど呼ぶ人が少なすぎて反応が遅れる。
『キリオスよ』
(「……俺か」)
『アクセス権を2回分持っておるからといって、お主が権利の複製をすることを禁じる』
(「あ、やっぱり?」)
『当たり前じゃろ。システムが崩壊するわい。何より面倒じゃ』
(「システム化されてるんだ……。あ、でも複製できることを他人に教えるのはセーフか?」)
『グレーゾーンじゃが、まあ一人だけなら良いじゃろ』
一人だけ、か。
確かこの世界に来てからすぐ、アクセス権を使ったやつが居るはずだ。もしかしたらさっきのマスターみたいにオフレコで使った奴もいるかもしれないが、神の発言から察するに一人は絶対に権利を使ってない奴がいるってことだ。
美貴、夏帆、辰巳の誰が使って誰が使ってないのか。
次に会うのが誰なのか。むしろ使ってない奴にアタリを付けて探すか。
『くれぐれも悪用するでないぞ』
(「分かってるって」)
「天馬はそんなやつじゃない」
『そうそう。神である儂からのアドバイスじゃ。出自や前世を探られたくないのなら、お互いの呼び名を直した方が身のためじゃぞ』
最後にそう言って神とのアクセスが途切れた。
核心を突いたアドバイスに、さすが神だなと心の中で感謝した。
「オレもむかしのクセで天馬ってよんでたな。今は……キリ……なんだ?」
(「キリオス」)
「なんだそのへんななまえ」
(「こっちの世界じゃ普通なんだろ。運と巡り合わせらしいぞ、アース」)
「そうか。よろしくなキリオス」
二人で新しい名前と姿にしみじみしていると、常時発動している【自動地図】でこちらに近付いている緑色の点を捉えた。
脳みそが一個だけだから、会話に集中したりしてると【自動地図】を気にしてる余裕がないのがネックだな。
アラート機能とかあったら良いが、無いものねだりするよりマルチタスクをこなせるようなスキルを見付けて取得するか。
そしてゆったりした声と共にファスティアが室内に入ってきた。
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