ポラリス~導きの天使~

ラグーン黒波

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第四章・小さな偶像神

【第十節・二心銃】

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 スピカとベファーナ、そしてティルレットによる【箱舟】側の力を削る為の芝居だと判明し、止血や増血施術とペントラの説教を数分挟み、改めて【箱舟】の核となる部分を探すこととなった。ベファーナの施術が終り、立ち上がって軽く上半身を捻り確認する。痛みや立ち眩みも無い。専門職のシスターとは違い、応急処置程度だと本人は言っていたが歩き回っても問題無さそうだ。
 ティルレットの切り傷やレイピアによる肩の刺し傷も気になったが、既にスピカが彼女の手当てを済ませていた。白黒メイド服は引き裂けたままではあるが、呪詛の蠢く黒い肌が黒い生地の部分へ保護色のように馴染んでいる。出血もしていないようだ。

「感謝」

「いえいえ、でも自分の身はもっと大事にしてください。ボクもそこまでやれとは言ってませんし……」

「司祭は人一倍観察力のあるお方。欺くとなると、相応の情熱は必要でしょう。不肖の未熟さもございますが、結果が肩傷一つと引き換えならば十分と言えましょう」

「自分で自分の肩に刺さなくても、普通に放り投げるとか――」

「――盲点でした」

「おい」

 そんな二人のやり取りを見て苦笑いする。状況は決してよくはないが、はぐれた者達と合流することができたのは大きい。有力な情報も手に入った。あとはベファーナがどれほどの情報を抱えているか――

「――それ程多くないネ。【箱舟】本体はこの世界の奥底に在ったコト、【箱舟】へ直接干渉するには地上の何処かにある【きかい】を操作する必要があるコト、もう一度ウチが【箱舟】に直接干渉するのは無理なコト……こんな所かナ。今度は嘘じゃないヨッ!!」

「新人が取り込まれた可能性があるというのも?」

「イーヒッヒッヒッ!! それは語弊だよポーラ君ッ!! 彼女は彼女の意思で、【箱舟】を取り込んだのサッ!!」

 彼女の説明によると、僕の部下である丸眼鏡が特徴の新人【天使】が地下深くに沈んでいた【箱舟】と接触し、取り込んだ状態で地上を徘徊しているとのこと。ベファーナは直前にスピカと【箱舟】を【機能】として結びつけることは出来たが、それは【偽りの契約】関係であり、完全に【箱舟】を欺くことは出来なかった。当初の計画はスピカを【箱舟】へ完全に結び付けることで支配下に置き、停止させる流れだったらしい。しかしほとんどを取り込まれ、強引に結び付けた結果が今のスピカの状態である。
 【防衛機能】として僕らとあえて敵対的に立ち振る舞い、戦闘によって有限である【箱舟】の力を引き出し削ぐことはできたが、残り八割は本体を取り込んだ新人【天使】が有している。ベファーナは彼女に接触するよりも何処かにある【きかい】を探すことを提案したが、主導権を握る彼女の意思で【箱舟】を停止させることは出来ないのだろうか。
 ちらりと僕の顔を見たベファーナが右人差し指をくるくると回すと、周囲に散乱した細かい石や硝子が指先へ集まり、何かを作り上げていく。数秒でそれは足、コート、長い髪に翼を形作り――新人【天使】とよく似た小さな人形が出来上がった。

「それは?」

「ナァに、タダのお守りのようなものサ。精神世界でどれほど君の身を守ってくれるかまでは保証しかねるガ、何もないよりはましサ。彼女と直接接触しようと思うのなラ、懐に忍ばせておき給エ」

「……やはり、彼女自身も危険な状態なのですか」

「普段気弱で大人しい生き物が一番強くなッテ、簡単に道を踏み外す瞬間はいつだと思ウ? 正義感や使命感に駆られた時サ。【善意の悪】ほど厄介な物はナイ。どんな犠牲を出してでも実行しようとするからネ。例え最も信頼する君の声だとしてモ、彼女はもう止まれないかもしれなイ。親友として警告だけはしておこウ」

「これに頼る状況にならないことを望みますが……ありがとうございます」

 ベファーナが差し出した人形を受け取――ろうとしたが、ペントラが割って入り彼女の手から人形を取り上げる。ペントラはむっとした表情でそのまま屈み視線を合わせ、ニヤニヤと笑うベファーナの鼻をつまむ。

「ま~たポーラを上手い事騙して利用するんじゃないだろうねぇ? いくらこいつが単純で怒らないからって、あんたの玩具じゃないんだよ。【魔女】の作るもんなんてアタシら【悪魔】でも意味不明な物だらけだけど、これは知ってる。強力な【呪返し】さね」

「イーヒッヒッヒッ!! ご名答ッ!! けど嘘はついてないだろウッ!? そうカッカしないでくれないカ、カワイイ鼻がとれちゃうヨッ!!」

 【呪返し】……聞いたことはある。元となる本人の魔力を込めて指輪や人形を作り、所有者が本人から魔術による傷害を受けた際、そのまま傷害を与えた本人へと肩代わりさせる古い高等魔術だ。昔は要人の暗殺防止策にも採用されていたが、本人限定であることや魔術以外の攻撃は通り抜けてしまう点、強力な物となると本人の魔力をより多く要する効率の悪さから、現在習得している魔術師はほとんどいない。
 お守りという言葉は正しいが……本物の【魔女】が作った品。肩代わりした際、新人【天使】がどれほどの傷を負うか予想できない。ペントラの推察も一理ある。
 彼女はベファーナの鼻から指を離し、機嫌のよくない顔でこちらを見て鼻をつまむ。

「ポーラもっ!! ホイホイ得体の知れない物を貰ったり、さっき騙した奴をすぐ信用したりするんじゃないよっ!! あんただって、丸眼鏡ちゃんが傷付くのは本望じゃないでしょうにっ!?」

「そ、それはそうですが……ベファーナさんなりの気遣いでしょうし、全く信用しないのも――ペントラさん痛いです、鼻が折れます」

「と・に・か・くっ!! 【魔女】に頼るのは本当の最終手段だっ!! さっきは力を貸してもらったけど、心を読めない相手の言葉をそのまま鵜呑みにするのは危険さねっ!! あの子を説得するにしろ【きかい】を探すにしろ、全員無事に【箱舟】から出るっ!! それがアタシ達の目標だよっ!!」

 彼女は手のひらに乗せていた人形をそのまま握り潰す。……脆かったのかペントラの握力がすごいのか、人形は簡単に砕けて砂となり、彼女の手の隙間から零れ落ちていく。それを後ろで見守っていたベファーナは「ワオッ!!」と声を上げ、悲しむどころか愉しんでいるように見えた。

「まず【箱舟】を停止させる【きかい】を探しながら、丸眼鏡ちゃん含めた四人と合流するよ。本体抱えたあの子に直接会わないことにはどうとも言えないし……いいね?」

 ペントラは僕の鼻から指を離し、背を向け十字路になっている街道へ歩き出す。怒気はこもっているが、それはこちらに向けられたものではない。ティルレットと話していたスピカが駆け寄って来る。

「ペントラさんが怒っているのは、ボクらが騙したからですよね。……ボクとティルレットも半分騙されていましたが……ごめんなさい」

「いいえ、怒っているのはそうさせてしまった自分自身にでしょう。皆さんへの怒りは先ほどの説教で発散されたでしょうし、ペントラさんもよく新人へ気をかけてくれてましたから。……ベファーナさんに、ここまで何度も助けてもらったのは本当です。【箱舟】が完全に取り込まれずに済んだのは、お二人のお陰なのは彼女もわかっています。スピカさんが成長していたのは驚きましたが」

 ふふっと笑い、スピカは両手を腰に当てて胸を張る。

「どうです二十歳のボクは? 五年もすればボクだってアーヴェインの名に恥じない、立派なレディになれるんですよ。身長もお兄さんと同じくらいですし、更に数年すれば追い越してしまうかもしれません。そこの成長しないちびっ子【魔女】よりも、魅力的だと思いません?」

 姿は変われど中身は十五歳の少女のまま。しかし【天使】として【地上界】で過ごすこと十年。少女の成長を間近で体感するのは初めてのことで、少し背伸びをするスピカの姿を見て心が温かくなる。きっとヴォルガード氏が見られたら、涙を流して喜ぶに違いない。
 これからあなたの残した娘は、とても美しく成長します。五年、十年――いえ、寿命を迎えられる時まで、僕は彼女を導きましょう。ここまであなたの目が届いているかはわかりませんが、どうかあなたの家族と共に愛娘の成長を見守ることをお許しください。

「……とても美しく成長されました。五年後が楽しみですね」

「………………」

 感想を述べるとスピカは顔を真っ赤にして、両手で顔を隠してしまう。お気に召さなかったのだろうか?

「あの、スピカさん?」

「いやぁ、ごめんなさい……急に恥ずかしくなっちゃいましてぇ……父や母が生きていたら、きっとお兄さんのように笑ってくれたり、泣いて喜んだのだろうなと」

「イーヒッヒッヒッ!! 自爆してやーんノッ!!」

「うっ、うるさいですよっ!!」

***

 遠目でスピカとベファーナが頬をつねり合う様子を眺め、少し肩の力を抜いて微笑む。
 成長したスピカは可憐な少女から素敵な女性になっていた。中身はまだまだ子供だが、五年十年と歳を重ねるにつれ淑やかな大人の女性へと成長するだろうさ。その時彼女の隣に立っているのは……やっぱりポーラが一番お似合いなのかもしれない。スピカを見て微笑み、それを恥ずかしがる光景を見て、アタシはそう思ってしまった。

「色恋【悪魔】」

「あん? なにさね情熱女――って近いよっ!!」

 声に反応し振り向くと無表情の白い顔が目の前にあり、本能的に危機感を覚え一歩下がる。美人だから余計に怖い。あれだ、無表情で美人な人形に一瞬ビビるのと同じ感覚だね。
 アタシの反応に興味を持つ様子なく、ティルレットは話す。

「スピカお嬢様はポラリス司祭を大変慕ってはおられますが、司祭とお嬢様の関係はいわば義兄妹、義親子のようなもの。互いに深い信頼や愛はあれど、恋心とは違うものにございます。勘違いなさらぬよう、先に申し上げておきます」

「……は?」

「それ程の情熱を持ちながら、今だ想いを伝えられていない様子。あなたと司祭を阻む障害など殆ど無いに等しいでしょうに。身を固め、家庭を持たれた方が互いに有益かと思われますが」

 いつもの抑揚のない声で、アタシの心を読んだかのように釘を刺して……いや、背中を押してる? というかどいつもこいつも、アタシの個人的な恋心に頭突っ込み過ぎじゃないかね。ロマンあふれる冒険家のアラネアはともかく、一番興味無さそうな奴にまで言われる日が来るとはねぇ。そんなにアタシは分かりやすいのか。

「アタシは……あいつやスピカちゃんが幸せならそれでいいさね。でも、大事な人と幸せになるって約束したから、いつかは伝えなきゃっても思ってる。それより、今をどうするかじゃないのかい? また屋上へ上って探――」

「――もう一歩後ろへ」

 ティルレットはアタシの胸をとんっと軽く左手で突き飛ばし、いつの間にか右手握られていた白いレイピアで宙を素早く突いた。金属が固い物体に当たった時の高音と同時に、アタシの足元の地面が大きく削れる。敵からの攻撃――遅れて聞こえた爆発音は恐らく発砲音。遠距離からの狙撃かい。

「街道奥にある建物屋上。他にも路地、障害物の陰などに複数潜んでおります。不肖、ティルレット。この場を移動することを提案いたします。許可を」

 言い終えると同時に屋上へレイピアを向けた姿勢のまま、ティルレットは上半身を少し逸らす――彼女の背後の地面が弾け、抉れる。マジかこの情熱女、矢よりも速い弾が【見えてる】のか。軌道はある程度予測しているのかもしれないがこの距離、躱すならまだしも初撃をレイピアで捌けた理由がつかない。
 音を聞きつけ、離れていたポーラとスピカも建物に身を隠しながら駆け付ける。

「すないぱー? アー、ハイハイ。あいつらだネ」

 ベファーナはツギハギ帽子を揺らして緊張感無く箒へ跨り、ティルレットの頭上へ出る。そして屋上を指差し、ニタニタ笑いをしながらパリパリと指先に小さな雷球を作ると、高らかに宣言した。

「今から君らの頭上に雷を落とスッ!! 五秒くれてやルッ!! 死にたくなければ武器を棄てて大人しく出てきなさーイッ!! イーチッ!! ニーイッ!! サ――」

「ひいいいいぃっ!?」

「降伏だっ!! 降伏するっ!! お前たちの仲間だとは知らなかったんだぁーっ!!」

 阿鼻叫喚を喚き散らしながら白い服装に身を包んだ人間が両手を上げ、路地や建物の陰から飛び出てくる。皆短い金髪に似たような顔立ちで違和感を覚えたが、兄弟かね。屋上の射手も律儀に立ち上がって両手を上げているらしく、次弾が飛んでくることはなかった。

「イーヒッヒッヒッ!! ちゃんと学んでてお利口ダッ!! ベファーナ先生が花マルあげちゃうヨッ!!」

「すみません、何度も何度も」

 高笑いする【魔女】の横で、白装束の人間達へポーラは謝辞を述べながら頭を垂れる。……どういうこったい。

***

 遠くで発砲音が聞こえた。近くで警備隊側とアレとの戦闘が起こっているのか、それとも他の奴らか。建物の反響音が大き過ぎて、位置までは正確に割り出せない。街灯から街灯へと飛び移っていたアラネアが糸を利用し、一気に建物の屋上へ上がる。音源の方角を確かめる為か。ローグメルクと共に立ち止まり、彼からの報告を待つ。

「どっかでドンパチやり合ってるんすかね?」

「……嫌な予感がするのは確かです。アラネアさんの返事を待ちましょう」

 十数秒足らずでアラネアは細い路地へ足場となる糸を階段のように数本渡しかけ、華麗に地上へと降りてきた。

「ちょうど俺たちが目指している【白の一団】の方向だね。屋上で両手を挙げて立っているのが見えたよ。戦闘音も聞こえないし、そう遠くはないみたいだ。アレなら悲鳴や銃声も上がってそうなもんだけど」

「お嬢や司祭達かもしれないっすねっ!! すぐ向かいやしょうっ!!」

「ん? ――あれは……犬?」

 アラネアが街道の奥で動く複数の黒い点を、目を細め眺めながら呟く。四足歩行に尻尾を生やした黒い動物が、地面の臭いを嗅ぐ姿勢で頭を下げ、街道上で集まっているのが見えた。犬――……にしては、体格がおかしいようにも感じる。近くの建物や建造物の大きさからして、人の二倍程度はあるのでは?
 数秒その様子を皆で眺めていると群れの一頭が突然吠え、十数頭は路地や街道へと散っていく。ただそれだけだ。だが奴らの去った後、地面には大量の赤い何かが散乱しているのが目に入る。白い棒状の突起物が飛び出て――肉塊か、あれは。

「急ぎましょう。奴らに嗅ぎつけられたかもしれない」

「賛成」

「同じくっす」

 アラネアは再び街灯へと跳び乗り、ペースを上げて先行する。ローグメルクは私を再び小脇に抱え、早馬以上の速力で硬い街道を蹴りそれに続く。人間よりも多少速い程度の速力では簡単に置き去りにされてしまう。不本意で不格好ではあるが、形振り構っている暇はない。
 【白の一団】が今私達の持てる最大の手掛かり。身内の不始末は、私がつけさせてもらう。

 直角の街道を曲がり、【鉄の箱】が大量に並ぶ敷地を跳び抜け――建物を挟んだ一本向こうの街道を並走する犬の集団が視界に入る。先回りはギリギリ間に合うが、間髪入れず襲われたら守り切れない。

「――いたっすっ!! 司祭にティルレット、ベファーナもいるっすねっ!!」

 街道の直線状、【白の一団】と話しているポラリスやペントラ達の姿。距離は相当離れているが、ティルレットは既にこちらを見ている様子で、既にレイピアを構え臨戦態勢。濁った吠える声が真横の路地から聴こえ、こちらへ走り抜けようとしてくる黒い犬達――このままでは後ろに付かれる。

「路地っすっ!!」

「任せてっ!!」

 先行していたアラネアが街灯上で方向転換し、飛び跳ねながらローグメルクの指した路地へ糸を出すのが一瞬見えた。真後ろから引っかかったであろう犬達の鳴き声と、上手く回避した犬の足音が複数耳に入る。後方を確認――している暇は無いか。だが対象を殺しても問題ないのであればアレが使える。背中へ【信仰の力】を流し、【不可視の剣】を五本、六、七、八、九――十本作り上げる。

「真後ろに複数です。そのまま止まらず、皆さんの元へ駆け抜けてください」

 音を頼りに、対象のいるであろう場所へ【不可視の剣】浮遊させ――突き立てた。

「――――――ッ!?」

「へぇっ!? な、なにが起こったんすかっ!?」

「いいからっ、振り返らず走れっ!!」

 硬い地面へ体を強く打ち付け転がる音と、獣と人が入り混じった悲鳴。足音の数が二つに減る。全ては処理しきれなかった。次は――駄目だ、間に合わない。左右の路地から更に来るのも見えた。頭数が多過ぎる。どうする?

「お任せを」

 真横を駆け抜けていく白黒のメイド服姿――後方から上がる畜生の悲鳴と転がる音。ローグメルクは街道へ蹄を食い込ませながら強引に停止し、私を降ろし振り返る。ティルレットは後ろの二頭を既に対処していたが、路地から出てくる犬にまで手を回せない。彼女を無視してこちらへ向かってくる。狙いはやはり【白の一団】だ。

「ひぃー、もっさもさしてやがるっすねっ!! 俺、毛の生えた小動物ダメなんすけど、あそこまでデカいともう魔物っすわっ!!」

 ぼやくローグメルクは【生成術】でダガーを数本生成し、一本ずつ指に挟む形で持ち、迫り来る犬に狙いを定め――踏み込みながら連続で投擲を開始した。放たれたダガーは一頭一本、犬の頭部へと次々と刺さっていくが、犬達は構う様子も無くそのまま迫ってくる。だが【生成術】の本質はここからだ。

「やっぱ止まんねぇっすよねぇっ!!」

 全てのダガーを投げ終えた彼の腕からバチバチと静電気のような音がし――魔力の伝達が一斉に切れ、ダガーが膨れ上がり――爆発した。
 頭部を失った犬の下半身は四方八方へ吹き飛び、数泊遅れて血飛沫と血煙で視界が塞がれる。足音はまだ来る。剣を引き抜き構えるが血煙を利用され、真横を走り抜けられる。正面の一頭はローグメルクが蹴りを入れて止めたが――何頭抜けられた?

「……くそっ!! 畜生共めっ!!」

***

 血飛沫と血煙を走り抜け、四足歩行の魔物がこちらへ複数頭迫る。魔物の狙いは僕らじゃない、兵士達だ。【銃】を構える兵士達を僕の背後へ下がらせ二枚の【翼の盾】を限界まで広げる。正面だけだが、全員を魔物の突撃から保護するには充分だ。念の為彼らに真後ろや左右の路地を警戒してもらい、ベファーナも僕の真上へ浮かんで備えた。
 そしてこちらの二十歩ほど前に立ち塞がるのは、周囲に紅い花弁の舞うスピカと、短く束ねた赤髪と肩からざっくりと切れた黒いコートをなびかせるペントラ。ペントラは先陣を切った三頭を引き延ばした【鉄線】で絡め、片手で操りその場へまとめ括り上げる。そのまま直進し、数匹とすれ違いざまに【刷毛】で首へ赤い線を描く――ずるりと首が落ち、残った胴体は数歩走ったのち地面を転がった。
 彼女を飛び越えた魔物の正面にはふわりと巻き上がる紅い花弁――構わず突っ切ろうとする魔物達の身体へ接触する度、小さく爆ぜる。僕らとの戦いで見せたものと違い小規模で部分的な爆発だが、それが数十、数百と連鎖的に起こり肉を吹き飛ばす。舞い続ける花弁を抜ける頃には肉塊のような状態か、手足が欠損して頭と胴体が辛うじて残っている程度だった。
 スピカはそれらが抜けてくる度に「うわっ」などと声を上げるが、花弁を散らすことを止めない。左右へ回り込む魔物の姿も無い。すぐ傍の建物屋上では狙撃手が奥の戦闘を援護しているのか、一定間隔で破裂音が頭上から降ってきていた。

「俺達の部隊は狙撃の腕と装備が潤沢なのが売りさ。皆好き勝手やろうとする困り者だが……いいチームだろ?」

「奥の状況がわからないので助かります。……ですが、盾から出ないようにしてください。どこから魔物に攻め込まれるかわかりません」

「ああ、俺達も死にたくないからな」

 隊長は背後や左右の路地を警戒しながら話しかけてくる。ベファーナは退屈そうに欠伸をしながら頭上で戦況を眺めていた。頭数もかなり減ったらしく、次第に援護をする破裂音も断続的になってきた。

「あんたらの目的は俺達の守る【箱舟】を止める事なんだってな。人類と敵対している立場なのに、新人類ってのはどうにもこうにもお人好しだ。俺達は本気であんた達を殺そうとしてる。それは否定しない、仕事だからな」

「………………」

「今は共同戦線で背中を任せていても、いつ裏切って撃たれるかだなんてわからないんだぜ? 上で欠伸してる奴はこっちの生き死に興味なんて微塵もなさそうだが……あんたは魂の無い俺達を【人間】として扱ってくれている。こうして正面からくる化け物共からも守ってくれている。なんでだ?」

「単純に、目の前の人達を救えないってのが嫌なんです。つい最近まで自分の地位を守る為、切り捨てたりして来ましたから。沢山の救える筈だった人々を救おうと行動しませんでしたし、我が身可愛さに感情を抑え、縮こまっていました。ですが……目の前にいる彼女や沢山の人々と出会い、過去の偉人達が残した記録を辿るうちに、僕達の手で平和は作れないのかなって、考えられるようになったんです」

「そうか――左の路地だっ!! 総員斉射ぁっ!!」

 背後で指示と共に金属音と爆発音が鳴り響き、鼓膜が痛い。両耳を押さえながら左路地を見ると、魔物が二頭重なり合って死んでいた。
 彼らの手に持つ【銃】は小さいながらも剣や槍、弓などより素早く標的を仕留められる。狭い場所でも取り回しがきく上、屋上の狙撃手のように安全圏から一方的に攻撃できるのが最大の強みだ。だが――――

「――だが、こんなもん持ったところで、人類はクソみてぇな神に勝てなかった。俺達は馬鹿の集まりだから、単純に上手い事生き残ってるあんたらの方が正しいと思ってる。いや、これは仕事抜きでな。黒や青あたりの隊長ならまた違った言葉を言うかもしれないが、新人類を救う為に動いてるあんた達は正しい。精神のまともな人間だって地下の一割弱程度。お前らの世界が平和だって言うんなら、それでいいじゃねぇか」

「……隊長さん」

「俺達はきっと、どっかで間違えてたんだろう。神に逆らうよりもっと前のタイミングで、取り返しのつかないことに片足突っ込んでたんだ」

 白装束の兵士達は皆【銃】から部品を取り外し、腰のベルトに付けた新しい部品を取り付け再び定位置へ戻った。

「だからあんたが俺達のような亡霊を救えなくたって誰も咎めねぇし、新人類にとって英雄なんだ。……その、あんまり気にかけないでくれ。サバサバした関係で終わる方が、お互い楽じゃないか。俺達まであんたの生きる世界を生きたいって思っちまう。……たく、何で感情なんて持っちまったんだろうな?」

「ですが……辛いことや悩む事が多い分、今はとても充実していて楽しいです」

「はははは、馬鹿なりに理解できた。俺達に足りなかったのは――って、随分デカい化け物がいるなっ!?」

 花弁の遥か向こう。これまで攻めてきたどの個体よりも大きく、黒い四つ足歩行の魔物がこちらを睨んでいる。街道の最奥にいるが、背後の建物五階相当の背丈に見えた。遠近感がおかしくなるほどの巨大さ……僕が今まで見てきた中では、最も大きい魔物には違いない。
 前線のアラネア、ティルレット、ローグメルク、アダムは少し退いて警戒する。周囲の小さな個体は既に殲滅済み……数はこちらに分があるが、あれとまともに戦えるのだろうか。


『ダァン』

 狙撃音とほぼ同時に、目の前にツギハギ帽子を被った人影が降ってくる。
 一瞬何が起こったか、僕や隊長、兵士達や近くにいたスピカさえわからなかった。二発目の狙撃音で――すぐ隣に立っていた兵士の頭部が弾け、膝から崩れ落ち、倒れる。
 屋上を見る。金色の目を光らせながら【銃】を構え、下界を見下ろす全身血塗れの長髪の【天使】。隊長達と同じ白装束も返り血で赤く染まり、背中には白い翼のようなものが見えた。
 目が合う。彼女はにこりと笑い、【銃】の先端を次の標的へと向けた。
 彼女の本来介入できないはずの【思考】が――流れ込んでくる。

〈汝に、【天使】の導きがあらんことを〉

 【翼の盾】を彼らの頭上に掲げる。直後に一切の迷いなく、弾丸は翼へ撃ち込まれた。衝撃――押し潰されそうになる――――二回、三回、四回……多い。多過ぎる。五回目の発砲音で二重に重ねた【翼の盾】に大きな亀裂が走り、目で隣の隊長へ限界だと伝え――――隊長の腕へ魔物が噛み付き、押し倒された。
 何故――視線を上と正面に集め、その間に背後や路地からの挟撃――魔物の知恵じゃない。明らかに連携――駄目だ、こんな所で死んでいい人達じゃない。盾が砕け、抵抗していた近くの兵士の頭へ追撃の銃弾が当たる。真っ赤に弾ける。
 魔物達に抑えつけられ、抵抗できない頭部へ降り注ぐ弾丸――――盾の反動で後頭部を血溜り広がる地面へ打ち付け、目の前が一瞬白くなる。意識は遠のかないが、身体が動かせない――――声がする――阿鼻叫喚、銃声と唸り声――顔を覗き込み、口から血を垂らす金色の瞳――……地面を引きずられる感覚……建物の天井が見えた。誰かが手を握り、呼びかける。

「……あんたは死なせない、俺らの死を越えて生きろっ!! いや……俺達は所詮――――過去の亡霊だ」

 ようやく脳の命令が神経へ伝わり、筋肉に力が入る。
 起き上がるとほぼ同時に、屋上へ向かって【銃】を撃った隊長の頭が弾けた。

***

 直線状の地理を何も考えず走り抜け続けてくる事や、左右からの挟撃がほとんど無いことに違和感はあった。兵士達へ狙いを定め、迎撃を段階的にあえてさせたのも距離を取らせて分断させるため。巨大な魔物で視線を集中させ、狙撃手の【銃】を奪い、魔物達と連携して攻撃を仕掛けることで釘付けにした。
 これも全部新人【天使】の算段? 魔物はどこから出現させた? いや、精神世界で向こうは何でも有りなのだ。ボクらの認識で押し測る方が危険か。
 標的をこちらへ変えた魔物を蹴り飛ばし、殴り飛ばし、お兄さんが引き摺られた建物へ向かう。ペントラも後ろに付いてきてくれている。
 周辺の魔物は死骸ばかりで、屋上に彼女の姿は無い。兵士の皆さんは――頭を正確に撃ち砕かれていた。ベファーナは穴だらけになったツギハギ帽子や服、原型を留めていない肉塊になり果てている。これでは不死身に等しい彼女でも、元に戻るまで時間が掛かるだろう。

「スピカちゃん、あそこっ!!」

 彼女が指差す方向には、白い髪や茶色のコートを赤く染めたお兄さんが両手を突いた姿勢で、兵士達の亡骸を呆然と眺めていた。ボクらが近付いても反応しない。放心していると表現した方が正しい。ペントラが肩や頭を触る。彼に付いた血が全て返り血であることを知り、ほっとした表情を浮かべる。
 涙を流すわけでも無く目を見開き、目の前の光景を焼き付けているお兄さん。ペントラがビンタで奮い立たせようとした時、ようやく口を開いて言葉を発した。

「僕らは……既に死んでしまった者達を、完全に蘇らせることができない。それこそ、神のように命を与える力が無ければできない……既に死んでしまった者達は【死から救えない】。ですが……死を死で終わらせられないなら? 感情を満たすことで、亡霊も人として逝けるのなら……?」

「……お兄さん?」

「待ったっ!! 魔物共の死体がまだ動いてるっ!!」

 正面の街道を見ると、頭や四肢の欠けた魔物の死体が徐々に再生し、起き上がろうとしていた。
 今まで倒したと思っていた奴らも、時間を置くとまた動き始める? ……だとしたら、今大きな個体を食い止めている四人へ再び挟撃する形となり、ここを二人で食い止めたとしても、頭数が多過ぎてじり貧だ。今はどうにか全員で撤退し、どこかの建物か屋上へ潜むべき――――

「――僕達は、彼らの死を無駄にしてはならない。過去の偉人達が未来へ望みを託すように。共に生きられないと理解していながらも、どうにか自分達の犠牲で平和を築こうと、間違っていると理解しながらも僕を生かし、【箱舟】を取り込んだ彼女へ立ち向かっていきました」

「………………」

 お兄さんはフラフラと立ち上がる。仰向けで倒れた頭が無い兵士の死体の元へ移動し、握りしめていた【銃】をそっと取り上げた。放り出された両手を胸の辺りで組ませ、安らかな死を祈るようにお兄さんは静かに目を閉じる。

「僕はきっと、皆さんが望んだ英雄ではないでしょう。【勇者】のように単独で無双する強さも無く、【ルシ】のように先々を読む知略も無ければ、ヴォルガード氏や隊長さんのように命を懸け、信じた未来へ託せる決断力もありません。……何もかも中途半端で、神々から与えられた【天使】としての役目にも逆らっています」

 半透明な【信仰の力】を右手に握られた【銃】へ纏わせ、左も全く同じ形状の【銃】を作っていく。濁りも混じり気も無い色を見て、彼自身はまだ折れていないのことは分かったが、その小さくて大きな後ろ姿にどこか見覚えがある気もした。
 左右の【信仰の力】は羽を模した一回り大きな二丁の【銃】となり、足元で再生しつつある一頭の魔物の頭部へ向けられる。

 タンッ

 血飛沫は上がらず、火薬の爆発音、光も金属音もしなかった。軽い音を発して弾丸が発射され、魔物は再び地面へと横たわる。動かなくなった魔物の黒い毛皮が塵のように霧散し――やがて青い装束に身を包んだ、短い金髪に眼鏡をかけた兵士の姿となった。
 弱々しい声で彼は声を発する。

「……ただ生きたいと望み、もがく……私達は、間違っていたのか?」

「僕にはわかりません。ですが終わらない苦しみを、【人間】として終わらせることは出来ます。皆さんを僕らの世界へお連れすることは出来ませんが、僕の【感情】を少しだけ切り取って、皆さんの欠けた【感情】を補うことは出来ます。……すみません、僕は――――」

「――いい……とても暖かく、心地良い気分なんだ。【機能】として生み出され……叶わないと思っていた。【人間】として、安らかに眠れる……ああ、君らの住む、緑豊かな世界とは――素晴らしいものだな」

 その言葉を最後に青装束の兵士は満足げな表情をし、深く息を吸うと目を閉じ――細かな光となって消えていった。
 一連の光景を二人で見とれていると、再生の終わった魔物達が唸り声を上げて起き上がる。ペントラやボクが急いで駆け寄ろうとすると、お兄さんは振り返らず左腕で止まるよう促す。

「あとは、僕に任せてください。お二人は向こうの大きな魔物の足止めをお願いします」

 その言葉を聞いた時、彼の後ろ姿が誰と重なったのかがようやく理解できた。あの背中は……【魔王】と呼ばれた父から願いを託された、【勇者】と全く同じだ。

 タンッ、タンッ、タンッ、タンッ――――

 迫る魔物達を相手に両手へ握られた【二丁銃】を使い、自分の【感情】を込めた弾丸を休むことなく撃ち込んでいく。お兄さんの【信仰の力】は相手を傷付けられない。少しでも撃ち込むのが遅れたり、弾丸となる【感情】が尽きた時、抵抗する間もなく喉笛を噛み千切られる。それでも彼は撃つ手を止めない。起き上がった魔物達も巨大な魔物へ応戦している四人の方向ではなく、お兄さんの方へ集まり続ける。
 救いを求め、一人の【天使】に集う光景にも見えた。でも、お兄さんの表情はとても苦しそうで、哀しそうで……すぐにでも傍へ駆け寄り、支えたいと思う感情が湧きあがる。足が出そうになった時、ペントラがボクの手を掴み、真剣な目つきで首を左右に振る。

「アタシらじゃこいつらを救えない。今必要なのは、あいつの透明で純粋な【天使】としての力と【感情】さね。下手に今のあいつへ触れて余計な物が混じったら、違う【感情】や弾丸がこいつらに撃ち込まれちまう。気持ちは分かるけど……アタシらは、アタシらにできることをやろう」

「で……でも、お兄さんの【感情】が尽きたら――」

「――そうなったらアタシらの出番っ!! ポーラの【感情】を満たしてやればいいのさっ!! メシを腹いっぱい食わせて寝かせて、スピカちゃんが大好きって伝えてやれば、いつものぼへっとしたあいつに戻るだろうさねっ!! 行こうっ!! あいつを信じてやるのも、アタシらにしかできないんだからっ!!」

 満面の笑顔を見せて彼女はボクの手を引き、皆の元へ向かう。その手は力強く震えていて、とても冷たかった。


 死ぬかもれしない【本物の殺し合い】をするのは初めてで、相手を傷付け、命を奪う生々しい感覚の怖さも初めて知った。自分の手に感触が伝わらなくても、例え本人達が自ら魂の無い亡霊と名乗ろうとも、体感するには十分過ぎる経験だった。
 命を奪う行為がどれほど重いものか。傷付けるのは簡単でも、相手へ慈しみを持って戦い続けるのは難しい。擦り切れてしまいそうで、楽な方法に流されてしまいそうになる。【銃】というの古代人の遺物は、指一本で簡単に命を奪えてしまう。生かすよりも、殺す方が簡単だと象徴した道具。
 それを自身の【傷付けられない】特性と置き換え、【感情】を擦り減らし感情を撃ち込む【天使の二丁銃】。

 タンッ、タンッ、タンッ、タンッ――――

 翼を模した【銃】の軽い発砲音は背後から鳴り続ける。矛盾で歪。彼らの救いに何の意味があるか、ボクにもわからない。再生できないほど粉微塵にすれば、蘇らないかも。だがそれでは、彼らにとって救いにはならない。

 タンッ、タンッ、タンッ、タンッ――――

 距離が離れ、小さくなっていく音。早く止んでくれという思い。止まないでくれという思い。
 どうして彼を【天使】にしたのだと、ボクはクソったれな神々を恨みました。
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