スキル覚醒の覇王ー最弱から成り上がる異世界チート伝

あか

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第5話

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第5話 覚醒の代償

 ――白い。

 それが最初の感覚だった。
 音も、匂いも、温度もない。
 ただ、永遠に続く“白”の中に、自分だけが浮かんでいる。

「……ここ、どこだ」

 声が出た。
 けれど、返事はない。
 足元を見ても、地面があるのかすら分からない。
 それでも立っている感覚だけは確かだった。

 次の瞬間、頭の中に直接、声が響いた。

《ようこそ、模倣者(イミテーター)》

 低く、同時に無機質な声。
 人の声ではない。

 振り向いた。
 白の中に、“影”が立っていた。
 黒いローブを纏い、顔は見えない。
 しかしその存在感は、理屈抜きで圧倒的だった。

「……お前が、神か?」

《神。人はそう呼ぶ。私はこの世界の“構造”を監理する存在》

「監理……?」

《世界は設計図であり、我々は設計者。
 スキルとは、人間が触れて良い部分の“編集許可”に過ぎない》

 言葉の意味が理解できなかった。
 だが、何となく感じる。
 こいつは、本当にこの世界を“造ってる側”だ。

《だが、お前のスキル“模倣”は想定外だった。
 本来は下位存在に留まるべきスキルが、外部の魂と融合し、
 システムそのものに干渉を始めた》

「つまり、俺は……壊してるってことか?」

《正確には、“書き換えている”。
 この世界の根幹、スキル構造体(アーキタイプ)を》

「そんなつもりはねえよ」

《意図は関係ない。結果だけが存在する》

 影の声がわずかに冷たくなった。

《模倣者、天城蓮。
 お前の存在は、神々の均衡を乱す》

「だったらどうする。消すのか?」

《本来ならばな》

 影が手を伸ばす。
 その指先が蓮の胸に触れた瞬間、身体が焼けるような痛みに襲われた。

「ぐっ……!」

 視界が白から黒に反転する。
 全身の細胞が裂けるような痛み。
 血の代わりに光が溢れ出す。

《この痛みは、代償だ。
 神の領域に足を踏み入れた人間の、罰》

「……は、罰、ね」
 蓮は歯を食いしばりながら笑う。

「上等だよ。痛みなんて、現実のほうがよっぽど痛かった」

 影がわずかに沈黙した。
 そして、まるで興味を持ったように問いかける。

《なぜ、お前は抗う。
 神の秩序に従えば、苦しまずに済む》

「“決められた通りに生きる”ってのが、いちばん苦しいんだよ」

 静かな声だった。
 けれど、その一言に蓮自身のすべてが込められていた。

《……興味深い》

 影が腕を下ろした。
 痛みが少しずつ引いていく。

《模倣者、天城蓮。
 お前に“選択”を与えよう》

「選択?」

《このまま神々の監視下に戻るか――
 あるいは、“外”へ出て、真実の戦場に立つか》

「“外”?」

《神々が見ていない世界。
 スキルも、運命も、法則も存在しない“無秩序層”。
 そこには、この世界の根源を喰らう存在《虚神(ヴォイド)》がいる》

 聞いた瞬間、背筋が冷たくなった。

《虚神は、我々の創造物を喰い、滅ぼす。
 だが、同時に――模倣者であるお前のスキルの“原典”でもある》

「……俺のスキルの、原典?」

《“模倣”はもともと、虚神が持つ“完全同化”能力の断片。
 それを神々が切り離し、人間に使えるよう制限したのだ》

「つまり、俺は……神から盗まれた力の、コピーだったってことか」

《そうだ。だが今、お前はその制限を超えた。
 完全な“オリジナル”への道が開かれつつある》

 影が一歩近づく。
 白い空間の中で、黒が揺れる。

《外へ行けば、お前は神をも模倣できる。
 だが、戻れば再び“駒”に戻る》

 蓮は迷わなかった。

「そんなの、選ぶまでもねえだろ」

 影がわずかに笑った気がした。

《ならば行け。
 覚醒者――天城蓮。
 神々をも上書きする者、“オーバーライド”の名のもとに》

 光が弾けた。
 蓮の体が再び光に包まれる。

 その瞬間、遠くから懐かしい声が響いた。

――「蓮! 目を覚まして!」

 エリスの声だ。

 視界が揺れ、光が暗転する。



 目を開けた。

 そこは見慣れた天井――いや、見慣れた“異世界の天井”だ。
 石造りの部屋。カーテン越しに差し込む陽光。
 すぐ隣に、心配そうな顔のエリスがいた。

「よかった……! 本当に……生きてたのね」

 エリスの目の下には濃いクマができていた。
 徹夜で看病していたのだろう。

「俺、どれくらい寝てた?」

「二日よ。ずっと意識が戻らなかったの。
 スキル暴走の後、あなたは塔の地下牢に運ばれたけど……
 私が無理を言って、ここへ移したの」

「……助かった。マジで」

 上体を起こすと、腕に違和感があった。
 皮膚の一部が金色に染まっている。
 まるで光の紋章のように、脈動していた。

「スキルの“刻印”よ」
 エリスが説明する。

「あなたが完全に“超越模倣”へ進化した証。
 でも、それと引き換えに……」

「引き換えに?」

「魔力の流れが、もう人間のそれじゃないの。
 ――あなた、神格領域に片足を突っ込んでる」

 蓮は静かに息をついた。
 頭の奥に、あの影の言葉が残っている。

 “外へ行け。神を模倣する者”

「……やっぱり、簡単には済まねぇな」

「あなた、何を見たの?」

 エリスの問いに、蓮は少し考えてから答えた。

「この世界の設計図と、
 俺のスキルが生まれた“原典”――虚神ってやつ」

「虚神……!? それ、伝承上の存在よ。
 神々が封印した“世界を喰う神”」

「封印、ね。たぶん、そいつの力を、神が“盗んだ”んだろうな」

 エリスの表情が凍る。
 それはこの世界の根幹を否定する言葉だった。

「……冗談で言ってるわけじゃなさそうね」

「ああ。
 そしてたぶん――“覚醒者”は、その真実に近づいた奴らだ」

 エリスは深く息をついた。

「なら、あなたがここにいること自体、もう危険よ。
 神殿がまた動く。今度こそ、確実に」

「だから逃げるさ」

「どこへ?」

 蓮はベッドの脇に置かれた剣を握り、笑った。

「“外”だよ。神々が見てない場所へ」

「……“外”?」

「たぶん、世界の境界線にある。虚神が封印されてる場所だ」

 エリスの目が大きく見開かれる。

「まさか、そこへ行く気なの?」

「行くしかない。
 俺のスキルが生まれた場所を知らなきゃ、
 この力を“制御”できねぇ」

「……無茶苦茶ね、本当に」

 けれど、その声は少し笑っていた。

「じゃあ、私も行く」

「おいおい、危険だぞ」

「あなた一人じゃ無茶しかしないでしょ。
 それに――“覚醒者”を導くのが、私の役目だから」

 蓮は言葉を失い、やがて静かに頷いた。

「ありがとな、エリス」

 彼女は微笑んだ。

「感謝は、帰ってきてから言いなさい」

 窓の外、王都の鐘が鳴り響く。
 朝陽の中、二人の影が重なった。

 蓮のスキルウィンドウが、静かに輝く。



《新クエスト発生:虚神の眠る地へ》
《目的:神域の外縁を突破せよ》



 天城蓮の物語は、ここから――“神々を超える戦い”へと進む。
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