スキル覚醒の覇王ー最弱から成り上がる異世界チート伝

あか

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第8話

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第8話 もう一人の俺

 ――静寂。
 音が消えた空間。
 風も、鼓動も、時間さえ止まったような“無”の世界。

 黒と金が交じり合う地平の上、天城蓮は立っていた。
 目の前には、もう一人の自分――「黒い蓮」が微笑んでいる。

「……お前、誰だ?」

「俺だよ。正確には“超越模倣”が生み出した投影体。
 お前がこれまでに模倣した力、記憶、感情……
 それら全部が、人格として分離した存在だ」

 黒い蓮の声は、まるで鏡に反響するようだった。
 穏やかで、どこか人間臭い。だがその瞳だけは、完全な虚無を宿している。

「つまり、俺の“もう一つの可能性”ってわけか」

「可能性? 違うな」
 黒い蓮が一歩、前に出る。
 足元の地面が波紋のように揺れた。

「俺は“原典”だ。
 本来お前が到達すべき“神の形”そのもの。
 お前はただの、不完全な模倣者に過ぎない」

 その言葉と同時に、空間が震える。
 遠くで黒い光柱がいくつも立ち上がり、世界を縫い合わせるように走る。
 空に裂け目が生じ、無数の記憶の断片が降り注いだ。

 剣戟、炎、悲鳴――それらは、蓮がこれまで模倣してきた全ての記憶だった。

「……なるほど。
 お前は、俺が積み重ねた“力”の集合体ってことか」

「そう。そして俺が支配者になる。
 お前の肉体をもらう。“完全な模倣者”は一人でいい」

 黒い蓮の右腕が光を帯びる。
 剣が生まれた。
 金色の刃に黒い紋が走る――“神滅剣《ノウス》”。

 蓮はため息をついた。
「ったく、鏡相手に本気出すとか、どんな地獄だよ……」

 しかしその顔には、迷いのない笑みが浮かんでいた。

「いいぜ。模倣するなら――覚悟もしろ」

 金の光が蓮の手に集まり、剣が形を成す。
 同じ刃、同じ構え。
 ――完璧な鏡合わせ。

 そして二人の“天城蓮”が、同時に踏み込んだ。

 金と黒が衝突する。
 剣と剣がぶつかり、空間が爆ぜた。
 衝撃だけで周囲の大地が崩れ落ちる。

「強いな。やっぱり“俺”か」
 蓮が言うと、黒い蓮が嗤う。
「当然だ。お前の動き、思考、全部知ってる」

「だが、俺の“想い”までは模倣できねえだろ」

 黒い蓮が目を細める。
「想い? それこそ無駄なエラーだ。
 感情はデータのノイズ。削除して完全になる」

「そうやって神は人を壊したんだろ!」

 叫ぶと同時に、蓮の剣が金色に燃え上がる。
 “感情”が力に変わる。
 それは理屈を超えた領域――覚醒者特有の暴走現象。

《スキル融合発動:“心象具現(マインド・リアライズ)”》

 背後に無数の光輪が浮かぶ。
 記憶の中のスキルたちが、実体として現れる。
 炎の槍、氷の刃、雷の鎖――蓮の周囲を回り始めた。

「模倣の力を、俺自身で上書きする!」

 光が奔り、衝撃が世界を割った。
 黒い蓮が一瞬だけ押し負ける。
 しかしその顔に、喜びすら浮かんでいた。

「それでいい。
 お前の“進化”は、俺をも超える。
 だが――その先に待つのは、人の消滅だ」

「構わねぇ」

 蓮が地を蹴る。
 二人の剣が交差した瞬間、金と黒の光が融合し、爆発が起きた。
 光の中で、二人の姿が溶け合うように消えていく。

 その瞬間、蓮の意識に、声が流れた。

――“お前はまだ、人でいられるのか?”

 返事はしなかった。
 ただ、真っすぐに剣を振り抜いた。



 眩い光が収まると、そこには一人だけが立っていた。
 黒い蓮の姿は消え、跡には淡い光の粒が舞っている。
 腕の紋章が、金と黒の二色に変化していた。

《統合完了 人格融合率:92%》
《新スキル獲得:“虚神模倣(ヴォイド・ミメシス)”》

「……“虚神模倣”か。
 いい名前じゃねぇか」

 蓮は剣を収め、深く息をついた。
 そのとき、遠くから声が届いた。

「蓮っ! 聞こえる!?」

 エリスの声だ。
 振り向くと、裂け目の向こう側――霧の境界に、彼女とリィナの姿が見えた。
 必死に手を伸ばしている。

「無事か!?」

「まあな。ちょっと……自分と喧嘩してただけだ」

「はぁ!?」
 リィナが信じられない顔をする。

 蓮は笑いながら、ゆっくりと歩き出した。
 だが、境界線を越える瞬間、再び“虚神”の声が響いた。

《模倣者ヨ。
 オマエノ力ハ、マダ半分ダ。
 完全ナ虚神模倣ヲ果タセシ時――
 神ハ消エ、世界ハ終ワル》

「世界の終わり、ね。
 ……なら、それも模倣してみせるさ」

 蓮が一歩を踏み出すと、黒い霧が弾けて光に変わった。
 次の瞬間、三人の姿は外界へ押し出される。



 気づけば、再び青空の下だった。
 草原の風。遠くに王都の城壁。
 だが空の色が、どこか赤く濁っている。

 エリスが空を見上げ、表情を強張らせた。
「……まずい。虚神の封印が、完全に解けたわ」

「つまり、神々の力が崩壊していく……?」

「ええ。世界が揺らぎ始めてる」

 リィナが銃を肩に担ぎ、にやりと笑う。
「面白くなってきたじゃない。神も魔も全部壊れて、
 この世界がまっさらに戻るなら――
 あたしたちが新しいルールを作ってやろうじゃない」

 蓮は小さく笑った。
「そのルールは“自由”だ」

 風が吹き抜ける。
 腕の紋章が金黒に輝き、空に亀裂が走る。

 蓮は剣を掲げた。

「次の標的は――神殿本部だ」

 エリスが頷く。
 リィナが笑う。

 三人の影が、朝陽に長く伸びていった。

 “模倣者の戦い”は、まだ始まったばかりだった。

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