スキル覚醒の覇王ー最弱から成り上がる異世界チート伝

あか

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第13話

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第13話 人の灯(ともしび)

 夜が明けた。
 かつて神に支配された世界は、いまや完全に“人のもの”となっていた。

 スキルは消え、魔法は失われ、誰もが同じ“無力”の存在。
 けれど、その無力さが――人間を、再び強くしていた。

 エリスは丘の上から、広がる集落を見下ろしていた。
 数十人の人々が、倒れた木で家を作り、火を起こし、畑を耕している。
 文明の最初の“灯”がともり始めていた。

 リィナが後ろから声をかける。
「おい、賢者さん。今日も働かねぇで眺めてるのか?」

 エリスは笑った。
「私は設計担当なの。実務はあなたたち力仕事チームでしょ?」

「へいへい。……まったく、神が消えても頭の回転は変わんねぇな」
 リィナは苦笑し、木を肩に担いだ。

 彼女の服は粗末な布でできているが、眼差しは凛としている。
 その姿は、かつての“傭兵”ではなく、
 新しい時代を導く“戦士”のようだった。

「なぁ、エリス。
 この村、名前を決めようぜ。
 せっかく“最初の街”になるんだ、カッコいいやつをさ」

「ふふ、もう考えてあるわ」
 エリスが小さく微笑む。
「“アマギ”――どう?」

 リィナが目を瞬いた。
「……蓮の名前、か」

「ええ。
 彼がくれた自由の象徴として、この場所に刻みたいの」

 リィナはしばらく黙っていたが、やがて頷いた。
「いいじゃねぇか。
 あいつの名を、最初の灯にする。文句なしだ」



 数日後、
 “アマギ”と名付けられた集落には活気が戻り始めた。
 火を扱える者、狩りが得意な者、言葉を記録する者――
 それぞれが役割を見つけ、助け合いながら暮らしていた。

 夜になると、焚き火を囲んで歌が生まれた。
 誰かが笛を吹き、子どもたちが踊る。
 スキルも魔法もない代わりに、
 “心”だけで生きる人間たちの世界が広がっていた。

 リィナは焚き火を見つめながら、ぽつりと言った。
「なぁ、エリス。……本当に神が全部いなくなったのか?」

「ええ。
 でも、完全に消えたわけじゃない。
 “記憶”として、世界の奥に残ってる。
 風の流れとか、星の瞬きとか……。
 それはもう“信仰”じゃなく、“痕跡”よ」

「なるほどな。
 あたしらは、神の亡霊の上に生きてるってわけだ」

 エリスは微笑む。
「そうね。でも、それを恐れる必要はないわ。
 だって私たちは、“人の灯”を持っているもの」



 その夜。
 集落の中央、焚き火の前にエリスが立っていた。
 彼女の前には、村の人々が集まっている。
 今夜は“誕生祭”――アマギ建国の儀式。

「みんな、静かに聞いて」
 エリスの声が夜空に響く。

「ここに集まった私たちは、かつて神に支配されていた者たち。
 でも、いまは違う。
 この火は、誰の許可もいらない“人間の火”」

 焚き火が大きく燃え上がる。
 エリスはその光を見つめながら、続けた。

「この灯は、天城蓮――かつて“模倣者”と呼ばれた青年が残してくれた。
 彼が神々の力を超え、世界を上書きしたおかげで、
 私たちはもう、誰にも支配されない」

 人々の中から、ひとりの子どもが声を上げた。
「その人……どこにいるの?」

 エリスは少しだけ目を伏せた。
 焚き火の炎が彼女の横顔を照らす。

「遠い場所で、きっと世界を見ているわ。
 でもね――彼はもう神じゃないの。
 私たちと同じ“人”として、生きてる」

 人々の間にざわめきが走る。
 やがて誰かが言った。

「だったら、また会えるんだね」

 エリスは頷き、笑った。
「ええ。いつかきっと」

 その瞬間、夜空の星が一つ流れた。
 金色の尾を引きながら、遠くの地平に消えていく。
 それはまるで――誰かが“見ている”合図のようだった。



 同じ頃、遠い大陸の海辺。

 夜の海を背に、ひとりの青年が歩いていた。
 月明かりが海面に反射し、波の音が静かに響く。

 天城蓮。
 彼は、ひとつの村の灯りを遠くに見つけ、足を止めた。

「……アマギ、か」

 風が頬を撫でる。
 その風の向こうから、懐かしい声が聞こえた気がした。
 “ありがとう”――優しく、あたたかい声。

 蓮は目を細め、空を見上げた。
 星々が瞬き、世界のどこにも“神の名”はもうない。
 代わりに、星ひとつひとつが“人の願い”で輝いている。

「……お前ら、ちゃんと生きてるみたいだな」

 蓮は微笑み、背を向けた。
 新しい朝が来る。
 もう誰の模倣でもない、“人間としての一歩”が始まる。

 彼の足跡が、砂浜に新しい線を描いた。
 それは、未来へと続く――“人の創世の道”。
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