スキル覚醒の覇王ー最弱から成り上がる異世界チート伝

あか

文字の大きさ
15 / 80

第15話

しおりを挟む


第15話 模倣者の遺志

 空が静まり返っていた。
 灰の嵐が過ぎ去ったあと、世界はまるで“息を潜めて”いた。

 アマギの村。
 崩れかけた家々の間を、子どもたちの泣き声と、大人たちの安堵の声が混ざって響く。
 多くは恐怖に震えていたが、誰も諦めてはいなかった。
 それが、この新しい世界の“強さ”だった。

 リィナが煙の中から現れ、肩で息をしていた。
「……はぁ……まったく、あの灰男、派手に暴れやがって……」

 エリスは倒れたままの姿勢で、まだ胸元を押さえていた。
 そこには淡く光る文様――“金黒の紋章”が浮かんでいる。
 灰蓮が消える直前、反応したあの光だ。

「……エリス! おい、大丈夫か!」
 リィナが駆け寄り、支える。

 エリスは微かに息を整え、震える声で言った。
「だいじょうぶ……でも、なにかが……中で動いてる……」

 リィナは眉をひそめた。
「動いてるって……まさか、あの灰のヤツの残りか?」

「違う……これは――」

 その瞬間、世界が一瞬だけ“逆光”に包まれた。
 エリスの胸の光が強くなり、空へと光の線を伸ばす。
 風が渦を巻き、村全体を包み込んだ。

 リィナが目を細め、声を張る。
「みんな、下がれっ!」

 次の瞬間、光の中から“声”が響いた。

『――エリス、リィナ。聞こえるか?』

 その声を聞いた瞬間、エリスの瞳が大きく見開かれる。
「……蓮!?」

 風が止まり、光が形を持ち始める。
 そこに浮かび上がったのは、かつての天城蓮の姿。
 だがそれは“肉体”ではなく、光の粒でできた幻影。

「……本当に、あなたなの?」

『ああ。これは残響だ。
 俺の意識の一部が、灰蓮を通してお前の中に届いたんだ』

 リィナが唖然としたまま呟く。
「おいおい……まさか、死んだやつの幻影まで残ってるとはな……」

『死んではいない。
 ただ、“形”を失っただけだ。
 俺はいま、この世界の基盤そのもの――“模倣構造”の中にいる』

 エリスは息を呑んだ。
「じゃあ……この世界のすべてを、あなたはまだ“見ている”の?」

『ああ。
 けど、もう干渉はできない。
 この世界は“人間の手”で動いているからな』

 蓮の幻影は穏やかに笑った。
『……ありがとう、エリス。
 お前が“生きていてくれた”から、この世界は壊れずに済んだ』

 エリスは首を振る。
「違う……あなたが残してくれたからよ。
 私たちは、あなたの遺した“灯”でここまで来たの」

『……そう言ってもらえると、救われるな』

 風が優しく吹き抜ける。
 光の粒が村の上空で揺れながら、蓮の声が続く。

『けど、ひとつだけ伝えておきたい。
 “再構築”は終わっていない』

「……どういうこと?」
 エリスが顔を上げる。

『俺が作ったこの世界には、まだ“欠陥”がある。
 それは……“存在の重なり”だ。』

 リィナが眉をひそめた。
「存在の重なり?」

『旧世界で死んだ神々の“意識の残片”が、まだ漂っている。
 灰蓮もそのひとつだった。
 やがて、それらが互いに融合し、“原初神(オリジン)”として蘇る』

 エリスの表情が硬くなる。
「まさか……また、神が?」

『ああ。
 しかも今度のそれは、秩序も感情も持たない“空虚な意識”だ。
 神というより、世界の“自己修正本能”に近い。』

「世界そのものが敵になるってわけか……」
 リィナの口調が低くなる。

『そうだ。
 それが再び目覚めた時、すべてを“ゼロ”に戻そうとする。
 人間が築いたものも、感情も、時間すらも消し去る』

 沈黙。
 焚き火のような風の音だけが響く。

 エリスが拳を握る。
「じゃあ、どうすればいいの? 私たちに何ができるの?」

『……“選べ”。』

「え……?」

『再び神を生むか、それとも人間のまま抗うか。
 どちらにも未来はある。
 だが、どちらも犠牲を伴う。』

 蓮の声が少しだけ悲しげになる。
『俺は、もう導けない。
 けれど……“選ぶ力”だけは、お前たちに残してある。
 それこそが――模倣者の遺志だ』

 エリスは俯き、そして顔を上げた。
 その瞳には、炎のような決意が宿っている。

「わかった。
 私たちの手で、この世界を守る。
 もう誰も犠牲にしない。
 “神なき自由”を、最後まで貫くわ」

 リィナが笑う。
「まったく……また無茶な道を選びやがって」

『ふたりらしいな』

 蓮の幻影が少しだけ薄れていく。
 風に溶けるように、彼の声が静かに響いた。

『最後にひとつだけ――
 この世界の北端、“虚界の門”を探せ。
 そこに、俺のすべての記憶と力が封じられている。
 それが、原初神を止める唯一の鍵だ』

 光が完全に消える。
 静寂。
 エリスはしばらくその場に立ち尽くしていた。

 リィナが肩を叩く。
「決まりだな。
 ――次の目的地、“北端”だ」

 エリスはゆっくりと頷いた。
「ええ。蓮の意志を、私たちが継ぐ」

 空に星が瞬く。
 その中心で、一際明るい金黒の光が一瞬だけ輝いた。

 それはまるで、どこかで彼が微笑んでいるようだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

処理中です...