26 / 80
第26話
しおりを挟む第26話 光の継承
――夜が明けた。
長く続いた黒い嵐は、ようやく姿を消していた。
南方の空は静まり、光の筋が雲の切れ間から差し込む。
破壊の徒はすべて消滅し、荒野に残るのは静かな風の音だけ。
その中心に、エリスは立っていた。
白い衣は土に汚れ、髪は風に揺れる。
だが、その瞳には確かな“生の輝き”があった。
胸に手を当てると、かすかな鼓動が伝わる。
そこに――蓮の光が眠っている。
「……あなたの鼓動、ちゃんと感じるわ」
エリスは微笑んだ。
「でも、悲しい顔はしない。
あなたが託してくれた“創造の意思”を、私が受け継ぐから」
遠くで朝日が昇る。
光はやさしく、どこまでも広がっていく。
⸻
アマギ本陣では、リィナとゼオルが戦況報告を受けていた。
「破壊の徒、完全に消滅。
南方地域の空間歪曲も収束しました」
報告官の声に、リィナは安堵の息をついた。
「……やっと終わった、か」
だがすぐに、彼女の表情が曇る。
「――で、蓮は?」
報告官が言葉を詰まらせる。
ゼオルが代わりに答えた。
「……彼の“肉体”は消えた。
だが、創造の反応は今もエリスの中にある。
つまり、“意識として融合した”のだろう」
リィナは拳を握り、目を伏せた。
「ったく……最後まで勝手なやつだよ、あいつは」
ゼオルは微かに笑った。
「いや……だからこそ、我らはここまで来られたのだ」
⸻
午後、エリスがアマギへ戻った。
街は再び活気を取り戻し、人々が彼女を出迎えた。
しかし、誰も声を上げない。
その姿に、誰もが“神々しさ”ではなく“人間としての尊厳”を感じていた。
リィナが前に出て、腕を組む。
「……おかえり、エリス。
いや、“新しい創造者”って呼んだほうがいいか?」
エリスは首を振った。
「違うわ。私はもう“ひとりの創造者”じゃない。
“私たち全員”が、この世界を創るの」
そう言って、彼女は手を掲げた。
掌から溢れる光が、街全体を包み込む。
それは蓮が残した“創造素(クリア・コード)”の進化形。
「創造連環(リンク・オブ・ハート)」。
人々の胸が淡く光り、互いの鼓動がひとつに重なる。
農夫の想い、職人の技、子どもの夢――
それらすべてが“ひとつの世界の力”へと変わっていく。
「これが……“光の継承”……!」
ゼオルが息を呑む。
「まさか、“意識”そのものを共有するだと……」
エリスは微笑んだ。
「ええ。蓮が教えてくれたの。
“創造は個ではなく、連なり”。
ひとりが夢見れば、千人が希望を持てる。
それこそが、人間の“神を超える力”なの」
リィナが口元を拭いながら、照れくさそうに笑う。
「……やっぱり、あんたらしいよ。
いつだって、世界を救うのに“説教”から入るんだから」
「ふふっ、リィナもね。
いつだって、文句を言いながら一番に動いてくれる」
「当然だろ。あたしは“現場の創造者”だからな」
二人の笑い声が、アマギの空へ溶けていった。
⸻
その夜。
街には静かな祝祭の灯りがともっていた。
歌と音楽が響き、子どもたちが手を取り合って踊る。
かつて“戦場”だったこの地は、いまや“創造の都”として輝いていた。
エリスは丘に立ち、空を見上げる。
満天の星の中に、ひときわ明るく輝く光――
それは蓮の残した“魂の星”だった。
「ねぇ、蓮。
この世界、あなたの思い描いた形になってる?」
風が優しく頬を撫でる。
まるで、彼の声が返ってきたようだった。
――『……ああ、ちゃんと見てる。
お前が笑ってるなら、それが“創造の正解”だ。』
エリスは涙を拭い、微笑む。
「ありがとう、蓮。
でも、私はまだここで“続き”を創る。
あなたが見届けてくれる限り、終わらせない」
星が流れた。
その光がアマギを照らし、人々の胸の光と共鳴する。
“創造連盟”は進化し、新しい形を迎えた。
個々の力が繋がり合い、
人類はついに“共有意識の文明”――**「創造時代(ジェネシス・エイジ)」**へと踏み出す。
⸻
翌朝。
リィナが丘に登り、エリスの隣に立った。
「なぁ……結局、あんたは何者になったんだ?」
エリスは少し考え、柔らかく笑う。
「そうね……“創造の光を継ぐ者”。
でも、肩書きなんてどうでもいい。
私はただ――この世界で生きる“人間”よ」
リィナは満足そうに頷く。
「そっか。じゃあ、これからも隣で働いてもらうぜ、女王様」
「ふふっ……“女王様”はやめて。
私たちは、同じ“創造者”なんだから」
二人の笑い声が、夜明けの風に溶けていく。
遠くの空で、金黒の星がまた一度瞬いた。
それは、今も彼女の胸の中で生き続ける“蓮”の魂が、
静かに世界を見守っている証だった。
そして、エリスの言葉が朝に響く。
「――創造は終わらない。
だって、私たちが“生きている”限り続いていくんだから」
太陽が昇る。
その光がアマギを包み、世界を照らした。
こうして、
“創造と破壊の時代”は終わり、
**新しい創世の時代(ジェネシス・エイジ)**が始まった。
0
あなたにおすすめの小説
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる