27 / 80
第27話
しおりを挟む第27話 創世の記録
――あれから、半年が経った。
アマギの街は、今や“世界の中心”と呼ばれるほどに発展していた。
街の上空には、想念で浮かぶ塔や橋が張り巡らされ、
夜になれば、創造素の光が星々と共鳴して輝く。
火や金属ではなく、人々の“想い”が文明を動かしていた。
それが、**創造時代(ジェネシス・エイジ)**の始まり。
エリスは白い机の前に座り、筆を取る。
窓の外には朝陽。
風が頬を撫で、紙の端が静かに揺れた。
「……これで、もう七冊目ね」
目の前には、金色の装丁で綴られた厚い本。
表紙にはこう刻まれている。
――『黎明録(れいめいろく)』――
創造連盟の記録、戦いの軌跡、そして蓮の遺志。
その全てを次代に残すため、エリス自身の手で書かれた“創世の記録”だった。
「私たちが歩いたこの道を、誰かが読んで笑える日が来たらいい……」
そう呟きながら、エリスは筆を進める。
⸻
外の庭園では、リィナが子どもたちの訓練を見ていた。
今の“教育”は、戦い方ではなく“創り方”を教えるものだ。
「いいか、想像ってのは遊びじゃない。
本気で願ったものだけが、形になるんだぞ!」
少年たちは笑いながら、掌に光の球を作ろうと集中する。
まだ小さくても、その瞳には確かな輝きがあった。
「ほら見ろ、あたしの時より筋がいい」
リィナは腕を組み、誇らしげに笑う。
そこへゼオルが歩み寄ってきた。
彼は今、アマギの“防衛顧問”として軍を監督している。
だが、戦ではなく“維持”のための守り。
破壊の徒が消えた後も、未知の脅威に備える必要はあった。
「子どもたちは順調のようだな」
「そりゃそうさ。教え方が上手いからな」
「……口の悪さも、成長していないようだ」
二人の軽口に笑いがこぼれる。
アマギには、ようやく“平穏”という言葉が似合うようになっていた。
⸻
その夜。
エリスは再び机に向かい、『黎明録』の最後の章を書いていた。
蝋燭の火が揺れ、窓の外では風が唸る。
彼女はペンを止め、ふと呟いた。
「……蓮。
あなたの光は、確かにこの世界に根づいたわ。
でもね――まだ、終わりじゃないの」
胸の奥で、かすかな鼓動が響く。
それは蓮の残した“共鳴の光”。
――『……終わりじゃない、か。
なら、まだ俺たちは進化できる。』
幻聴のように、声が聞こえた。
けれどそれは、確かに“彼”の声だった。
「ええ。あなたの世界は、今も進んでる」
筆を取る。
新しい章のタイトルを、彼女はゆっくりと書いた。
――“創造者を超える者たち”――
その文字を書いた瞬間、
机の上の“創造素”が淡く震えた。
エリスが顔を上げる。
窓の外、東の空に不穏な光。
黒と蒼の稲妻が、一瞬だけ夜空を走った。
「……今のは……まさか」
⸻
翌朝。
東方からの使者が、馬ではなく“光の路”を駆けてやって来た。
疲弊した顔で膝をつき、報告する。
「報告します! 東の大陸“ナーヴァ”にて――
“新たな創造者”が現れました!」
エリスの目が見開かれる。
「……創造者? 私たちの連盟の者ではなくて?」
「はい。
アマギの技術にも属さず、
“別の系統の創造”を操る存在――
人々の夢を“強制的に具現化”する力を持つとか……」
ゼオルが険しい表情で言う。
「強制具現……? それは“創造の秩序”に反する行為だ」
リィナが舌打ちした。
「せっかく平和になったと思ったのに、また厄介な奴が出てきたな」
エリスはしばらく黙っていたが、やがて静かに言った。
「――放っておけない。
“創造”が歪められれば、世界そのものが崩壊する。
調査隊を編成しましょう。私も行くわ」
「行く? お前自身が?」
リィナが驚く。
「ええ。今度の相手は、“創造そのもの”を操る存在。
創造連環の核を持つ私が行かなければ、話にならない」
ゼオルが頷く。
「分かった。俺も同行しよう。
だが、これは“交渉”で済む相手ではないかもしれんぞ」
「それでも構わないわ。
――創造を奪う者がいるなら、取り戻すだけ」
⸻
出立の前夜。
エリスはアマギの丘に立ち、星空を見上げた。
胸の奥で、また小さく光が瞬く。
「ねぇ、蓮……見てる?」
――『ああ。
お前が歩くなら、俺もその中で見てる。』
「……ありがとう。
あなたの光がある限り、私は迷わない」
夜空の彼方で、金黒の星がまた一度だけ輝いた。
その光はまるで、新しい時代の扉が開かれる合図のようだった。
エリスは振り返り、微笑んで言う。
「次の章を――創ろう」
そして彼女は、再び世界の果てへと歩き出した。
“創造の記録”はまだ、終わらない。
0
あなたにおすすめの小説
転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜
上村 俊貴
ファンタジー
【あらすじ】
普通に事務職で働いていた成人男性の如月真也(きさらぎしんや)は、ある朝目覚めたら異世界だった上に女になっていた。一緒に牢屋に閉じ込められていた謎のしゃべるうさぎと協力して脱出した真也改めマヤは、冒険者となって異世界を暮らしていくこととなる。帰る方法もわからないし特別帰りたいわけでもないマヤは、しゃべるうさぎ改めマッシュのさらわれた家族を救出すること当面の目標に、冒険を始めるのだった。
(しばらく本人も周りも気が付きませんが、実は最強の魔物使い(本人の戦闘力自体はほぼゼロ)だったことに気がついて、魔物たちと一緒に色々無双していきます)
【キャラクター】
マヤ
・主人公(元は如月真也という名前の男)
・銀髪翠眼の少女
・魔物使い
マッシュ
・しゃべるうさぎ
・もふもふ
・高位の魔物らしい
オリガ
・ダークエルフ
・黒髪金眼で褐色肌
・魔力と魔法がすごい
【作者から】
毎日投稿を目指してがんばります。
わかりやすく面白くを心がけるのでぼーっと読みたい人にはおすすめかも?
それでは気が向いた時にでもお付き合いください〜。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
魔法属性が遺伝する異世界で、人間なのに、何故か魔族のみ保有する闇属性だったので魔王サイドに付きたいと思います
町島航太
ファンタジー
異常なお人好しである高校生雨宮良太は、見ず知らずの少女を通り魔から守り、死んでしまう。
善行と幸運がまるで釣り合っていない事を哀れんだ転生の女神ダネスは、彼を丁度平和な魔法の世界へと転生させる。
しかし、転生したと同時に魔王軍が復活。更に、良太自身も転生した家系的にも、人間的にもあり得ない闇の魔法属性を持って生まれてしまうのだった。
存在を疎んだ父に地下牢に入れられ、虐げられる毎日。そんな日常を壊してくれたのは、まさかの新魔王の幹部だった。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~
アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる