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第43話
しおりを挟む第43話 無限派の遺言
――その夜、世界中の夢が“同じ声”で満たされた。
『終わりを受け入れるな。
祈りは欺き。創造は嘘。
永遠こそが救いだ。』
その声は、誰もが知る男の声だった。
――アシュレイ・カイト。
死んだはずの彼が、夢の中で語りかけてくる。
子どもも、大人も、創造者も。
その言葉は、人々の心に深く食い込み、
やがて“祈り”の形を変え始めた。
⸻
アマギ・中央塔。
リィナが眠そうな顔で報告を持ってきた。
「……なぁ、エリス。世界中で“同じ夢”を見たって話が出てる。
それも、内容が全部アシュレイの演説だ。」
エリスはテーブルに広げられたデータを見つめる。
そこには“共鳴波形”の異常値が記録されていた。
「夢を通じて、共鳴を侵食してるのね……。
アシュレイは、“祈り”の構造を逆利用してる。」
ゼオルが眉をひそめる。
「祈りのエネルギーを“再創造の媒体”にしてるのか。
つまり、人の心を使って“無限派”を再現している。」
エリスは静かに頷く。
「彼は、死んでも“祈り”を否定し続けてるのよ。」
⸻
その夜、再び夢が流れた。
――白い世界。
光も音もない空間に、アシュレイの幻影が立っていた。
「君たちは、祈りに縋る。
だが、それは“恐怖の裏返し”だ。
祈るのは、死を恐れるからだろう?」
エリスはその夢の中に立っていた。
現実と変わらぬ感覚。
アシュレイの声が耳の奥で反響する。
「恐れが創造を動かす? それでいいじゃない。
恐れもまた、生きる力なのよ。」
「違う。恐れは“枷”だ。
恐怖がある限り、君たちは真に自由になれない。」
アシュレイが手を伸ばす。
空間が波紋のように揺れ、
周囲の祈りの光が黒に染まっていく。
「見ろ。祈りの果てには“矛盾”しかない。
誰もが願い、誰もが違う結末を望む。
だから世界は不安定になる。
――祈りなど、いずれ人類を壊す。」
エリスは一歩踏み出す。
光が足元に広がり、彼女の姿が明るく浮かび上がる。
「祈りが壊すなら、壊れるたびにまた創ればいい。
壊れるたびに立ち上がる、それが人間なの!」
アシュレイの表情が、わずかに歪んだ。
「……本当に、そう思うのか?」
「ええ。
あなたが“永遠”を選んだのは、恐怖を消したかったから。
でも私は、“恐怖と共に生きる強さ”を選んだ。」
その瞬間、夢の世界に裂け目が走る。
光があふれ、黒い空間が弾け飛んだ。
⸻
現実。
エリスが目を開けると、朝の光が差し込んでいた。
リィナとゼオルが駆け寄ってくる。
「大丈夫か!? お前、意識が半日もなかったんだぞ!」
「ええ……アシュレイの“遺言”を見てきたの。」
「遺言?」
エリスは小さく頷く。
「彼はもう存在していない。
でも、“無限創造”の残滓が祈りのネットに残ってた。
それが自動で夢に干渉してたの。」
ゼオルが肩を落とす。
「つまり、もう“本人”はいない……?」
「ええ。けれど――彼の“言葉”は生きてる。」
⸻
その日の夜、
エリスは連盟全体に向けて“祈りの放送”を行った。
『――この世界に、永遠はありません。
でも、祈りがあります。
祈りは、壊れても、消えても、必ず“誰かに届く”。
それこそが、私たちが創造者である理由です。』
世界中の人々が空を見上げた。
祈りの光が、一つ、また一つと灯っていく。
夢の中で囁かれていた“無限の声”が、
静かに消えていくのが感じられた。
⸻
放送を終えたあと、エリスは一人で展望台に立っていた。
風が頬を撫で、街の光が彼女の瞳に映る。
「……ねえ、アシュレイ。
あなたの祈りも、どこかで誰かを動かしてるかもしれないわ。」
遠く、夜空の星がひとつだけ強く光った。
その光が、まるで彼の“残響”のように瞬いていた。
⸻
翌朝。
世界中の子どもたちが目を覚ますと、
夢の中で“ひとつの言葉”を覚えていた。
『祈れ。終わりを恐れるな。
恐れの中にこそ、創造は生まれる。』
それは、アシュレイとエリス――
二人の祈りが融合した、“新しい言葉”だった。
世界が、静かに動き出す。
祈りと恐れを抱えながら、それでも人々は“生きる”。
エリスは微笑んだ。
「祈りの果てに残ったのは、希望じゃない。
――“生きようとする意志”そのものね。」
空の創造星が朝陽を反射し、
まるで新しい世界の幕開けを告げるように輝いていた。
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