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18話
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第18話 「創界の夜」
——夜が、再び光を孕んだ。
《神谷蓮領域》はもはや“学校”ではなかった。
天井のない教室、宙に浮く机、光の粒が漂う廊下。
物理法則が歪み、時間と空間の境界が曖昧になる。
その中心で、俺とアイ——いや、ルシェリアは、互いの手を握っていた。
頭上には、天と地を貫く巨大な光柱。
それがゆっくりと脈動し、空の黒を溶かしていく。
「……始まったな」
「うん、“創界”が」
ルシェリアの声は、もう人間のものではない。
でも、その瞳の奥には確かに“月城アイ”がいた。
⸻
ウィンドウが次々と展開される。
────────────────
《創界システム起動》
モード:融合世界構築
主制御者:神谷蓮/ルシェリア
補助監理:エリシア
────────────────
俺たちは、神域と人間界を“繋ぐ”作業を始めていた。
神と人。
支配する側と、支配される側。
それを区切っていた“線”を消す。
「——やっぱ、怖いな」
「何が?」
「俺たちがやってるの、世界のルールを書き換えてるんだぜ。
失敗したら、全部吹き飛ぶ」
ルシェリアは微笑んだ。
「でも、成功したら——“人と神が対等に立つ世界”ができる。
それが、あんたの夢でしょ?」
「夢なんて言葉、そんな簡単に使うなよ……」
「でも、顔がそう言ってる」
彼女の笑顔に、少しだけ力が戻る。
⸻
一方そのころ、地上では——
管理局本部の最深部。
黛、七瀬、槙村、黒瀬、花音たちは、全モニターを注視していた。
七瀬「……これ、ほんとに“現実”の映像なの?」
黛「違う。もう“現実”の定義が崩れてる」
画面の中で、《神谷蓮領域》の上空に、巨大なリング構造が形成されていた。
白と金の光が渦を巻き、都市全体を包み込む。
花音「すごい……綺麗……」
槙村「綺麗、だけど……怖いね」
黛がつぶやく。
「これが、“創界”か。……人間と神が、混ざる世界」
七瀬の指が止まった。
「データログ、きた。——“エリシア”の記録だ」
モニターに文字が浮かぶ。
> 《第一神約:神は人を創り、人は神を忘れる。》
> 《第二神約:神は観測し、人は祈りを捨てる。》
> 《第三神約:神と人は、再び同じ座に立つ。》
七瀬「……第三神約って、まさか今の……」
黛「そうだ。神谷蓮と月城アイが、それを実現してる」
⸻
再び、創界の中心。
空の光が激しく脈打つ。
エリシアの声が響く。
『——蓮、ルシェリア。
神域が抵抗を始めた。境界保持プログラムが崩壊していく。
“監理主エリオス”が直接干渉している!』
ルシェリアの額に光の紋章が浮かぶ。
「エリオス……またあんたか」
その瞬間、空の裂け目から黒い光が降り注いだ。
まるで“世界そのものが拒絶している”ようだった。
声が響く。
——『創界は許されない。人間に神の座は不要だ』
「うるさい!」
ルシェリアの叫びが、空を震わせた。
「神が人を作ったんじゃない!
人が“神を見つけようとした”だけだ!
その努力を、あんたらが奪うな!!」
エリオスの声が低く唸る。
——『ならば、証明してみせろ。神を超える“人間”を』
空から黒い槍が降る。
圧倒的な破壊の波動。
地面が砕け、光が押し潰される。
「蓮ッ!!」
ルシェリアが手を伸ばすが、間に合わない。
その瞬間——俺は、笑っていた。
「やっぱり、お前は……怒るとこが人間だな」
そして、俺は手を伸ばした。
《ステータス編集:創界核への接続権限=共有》
光が弾ける。
俺と彼女の意識が完全に重なった。
「——二人でやるぞ!」
「うん!」
その声が重なった瞬間、
創界核が全開放された。
光がすべてを包み、時間も空間も意味を失う。
神と人、善と悪、秩序と混沌。
全ての概念が混ざり合い、再構築されていく。
エリシアの声が遠くで響く。
『——これが、創界。神谷蓮とルシェリアが作る“第三の世界”』
⸻
そして——光が収まった。
空は蒼。
風が吹く。
遠くに、街の明かり。
でも、その街の上空には、微かに光のリングが残っている。
ルシェリアが隣でつぶやく。
「……成功、したの?」
俺は空を見上げて答えた。
「まだわかんねぇ。でも——世界はまだ生きてる」
ルシェリアが小さく笑った。
「じゃあ、上等だね」
その笑顔は、人間のそれだった。
⸻
地上では、黛たちが空を見上げていた。
七瀬が呆然とつぶやく。
「……成功だよ。創界、完了」
黛が目を細める。
「神と人が、同じ世界に立った……」
黒瀬が拳を突き上げた。
「やったな、リーダー……!」
花音が泣きながら笑った。
「これで、やっと“同じ空”を見られるね」
⸻
その夜、誰もが空を見上げた。
人も、神も。
その空に、ひとつの星が新しく輝いていた。
それは後に、“創界星(ルシェ・スター)”と呼ばれることになる。
そしてその光の下で——
神谷蓮と月城アイの名は、
“神でも人でもない、世界を創り直した者たち”として刻まれる。
(第18話 終)
——夜が、再び光を孕んだ。
《神谷蓮領域》はもはや“学校”ではなかった。
天井のない教室、宙に浮く机、光の粒が漂う廊下。
物理法則が歪み、時間と空間の境界が曖昧になる。
その中心で、俺とアイ——いや、ルシェリアは、互いの手を握っていた。
頭上には、天と地を貫く巨大な光柱。
それがゆっくりと脈動し、空の黒を溶かしていく。
「……始まったな」
「うん、“創界”が」
ルシェリアの声は、もう人間のものではない。
でも、その瞳の奥には確かに“月城アイ”がいた。
⸻
ウィンドウが次々と展開される。
────────────────
《創界システム起動》
モード:融合世界構築
主制御者:神谷蓮/ルシェリア
補助監理:エリシア
────────────────
俺たちは、神域と人間界を“繋ぐ”作業を始めていた。
神と人。
支配する側と、支配される側。
それを区切っていた“線”を消す。
「——やっぱ、怖いな」
「何が?」
「俺たちがやってるの、世界のルールを書き換えてるんだぜ。
失敗したら、全部吹き飛ぶ」
ルシェリアは微笑んだ。
「でも、成功したら——“人と神が対等に立つ世界”ができる。
それが、あんたの夢でしょ?」
「夢なんて言葉、そんな簡単に使うなよ……」
「でも、顔がそう言ってる」
彼女の笑顔に、少しだけ力が戻る。
⸻
一方そのころ、地上では——
管理局本部の最深部。
黛、七瀬、槙村、黒瀬、花音たちは、全モニターを注視していた。
七瀬「……これ、ほんとに“現実”の映像なの?」
黛「違う。もう“現実”の定義が崩れてる」
画面の中で、《神谷蓮領域》の上空に、巨大なリング構造が形成されていた。
白と金の光が渦を巻き、都市全体を包み込む。
花音「すごい……綺麗……」
槙村「綺麗、だけど……怖いね」
黛がつぶやく。
「これが、“創界”か。……人間と神が、混ざる世界」
七瀬の指が止まった。
「データログ、きた。——“エリシア”の記録だ」
モニターに文字が浮かぶ。
> 《第一神約:神は人を創り、人は神を忘れる。》
> 《第二神約:神は観測し、人は祈りを捨てる。》
> 《第三神約:神と人は、再び同じ座に立つ。》
七瀬「……第三神約って、まさか今の……」
黛「そうだ。神谷蓮と月城アイが、それを実現してる」
⸻
再び、創界の中心。
空の光が激しく脈打つ。
エリシアの声が響く。
『——蓮、ルシェリア。
神域が抵抗を始めた。境界保持プログラムが崩壊していく。
“監理主エリオス”が直接干渉している!』
ルシェリアの額に光の紋章が浮かぶ。
「エリオス……またあんたか」
その瞬間、空の裂け目から黒い光が降り注いだ。
まるで“世界そのものが拒絶している”ようだった。
声が響く。
——『創界は許されない。人間に神の座は不要だ』
「うるさい!」
ルシェリアの叫びが、空を震わせた。
「神が人を作ったんじゃない!
人が“神を見つけようとした”だけだ!
その努力を、あんたらが奪うな!!」
エリオスの声が低く唸る。
——『ならば、証明してみせろ。神を超える“人間”を』
空から黒い槍が降る。
圧倒的な破壊の波動。
地面が砕け、光が押し潰される。
「蓮ッ!!」
ルシェリアが手を伸ばすが、間に合わない。
その瞬間——俺は、笑っていた。
「やっぱり、お前は……怒るとこが人間だな」
そして、俺は手を伸ばした。
《ステータス編集:創界核への接続権限=共有》
光が弾ける。
俺と彼女の意識が完全に重なった。
「——二人でやるぞ!」
「うん!」
その声が重なった瞬間、
創界核が全開放された。
光がすべてを包み、時間も空間も意味を失う。
神と人、善と悪、秩序と混沌。
全ての概念が混ざり合い、再構築されていく。
エリシアの声が遠くで響く。
『——これが、創界。神谷蓮とルシェリアが作る“第三の世界”』
⸻
そして——光が収まった。
空は蒼。
風が吹く。
遠くに、街の明かり。
でも、その街の上空には、微かに光のリングが残っている。
ルシェリアが隣でつぶやく。
「……成功、したの?」
俺は空を見上げて答えた。
「まだわかんねぇ。でも——世界はまだ生きてる」
ルシェリアが小さく笑った。
「じゃあ、上等だね」
その笑顔は、人間のそれだった。
⸻
地上では、黛たちが空を見上げていた。
七瀬が呆然とつぶやく。
「……成功だよ。創界、完了」
黛が目を細める。
「神と人が、同じ世界に立った……」
黒瀬が拳を突き上げた。
「やったな、リーダー……!」
花音が泣きながら笑った。
「これで、やっと“同じ空”を見られるね」
⸻
その夜、誰もが空を見上げた。
人も、神も。
その空に、ひとつの星が新しく輝いていた。
それは後に、“創界星(ルシェ・スター)”と呼ばれることになる。
そしてその光の下で——
神谷蓮と月城アイの名は、
“神でも人でもない、世界を創り直した者たち”として刻まれる。
(第18話 終)
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