詐欺る

黒崎伸一郎

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直美としがない中年男①

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三日目の夕方に探偵社から携帯に連絡が入った。
今の私の携帯に電話が鳴るということは探偵社以外にはない。
すぐに探偵社の事務所に向かい新川家の家系図と現状の新川家はどうなっているのかを記した書類、そして新川家の三人の写真も手に入れた。
直美はやはり養子として新川家に入っていて、新川夫婦には実子はいなかった。
直美は小さな頃から活発な子で中学からテニス部に入り、県大会優勝し高校二年の時にはインターハイでベスト八に入ったほどの実力であった。
ただ母親は体が弱いらしく、入退院の繰り返しだった。
その上、父親も昨年がんが発見されて先月から入院して放射線治療をしているとのことであった。
高校三年生になる直美は高二の冬からバイトを掛け持ちをしていて、夜の帰りはいつも九時過ぎになる。
入院している父親の見舞いは毎週土曜日のバイトの合間の午後四時に決まっているらしい。
(またすごいハードなスケジュールだな)と思いながら直美の写真を手に取った瞬間私は思わず、「すっごい美人だな!」と声を出した。
美人と可愛らしさが混ざった感じで、目は大きく鼻はそこまで高くないが男性受けする顔だ。
私は早速直美のバイト先に行くことにした。
少しでも早く実物をこの目で見たかったからである。
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