詐欺る

黒崎伸一郎

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直美としがない中年男②

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直美は学校が終わると部活もせずにバイトに行っていた。
最初は平日五時から八時、土日祭日は九時から夕方五時までだったが、高校三年生になってからは平日は四時半から九時まで、土曜は九時から四時まで、日曜祭日は朝八時から五時までそれから別のバイトで五時から九時までと、休む暇なく社会人でもなかなか出来ない殺人的スケジュールをこなしていたのだ。
土曜日は四時に終わって病院に父親の見舞いに行くので友達と遊ぶ時間はおろか休む時間さえなく、本当に寝る時間さえ惜しんで働いていた。
それでも直美は笑顔の絶やさない芯の強い女性であった。
直美の母はもともと体が弱く入退院を繰り返していたのに加え、父親が二年前からガンにかかり放射線治療をしていたが、二ヶ月前に体調を崩して入院したのだ。
それらの治療代が直美の肩に重くのしかかっていた。
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