詐欺る

黒崎伸一郎

文字の大きさ
上 下
60 / 80

悪夢の連鎖(終わらない悲劇)

しおりを挟む
突発性虚血心不全という名の心不全だった。
母はもともと体が弱く風邪から併発したらしい。
医者と看護婦二人が病室から去り、私、直美と母の三人になってからしばらく沈黙が続いた。
その沈黙を破ったのは直美だった。
「母はいつも私の味方だった。
どんな時も味方でいてくれた。
しんちゃんと付き合うって言った時も直美が選んだ人だから私は応援すると言ってくれたの…。
母は私が小さい頃から体が弱く、入退院の繰り返しだった。
父は仕事ばかりだったけど母の病院代が凄くかかってたので何時も貧乏だった。私が中学に入ってからは父も病気になり仕事も休みがちになったけど、父は金がかかるからって病院に行かなかったの。
私は行ってって頼んだけど大丈夫って言って…。
だけど仕事中に倒れて結局入院。
その検査中に癌が分かったけど手術代が高くてできなかったわ!
後は前にも話した様にしんちゃんがお金を持ってきてくれたので手術ができて退院したの。
結局は死んじゃったけど最後に父からありがとうって言われた時は本当に嬉しかった。
父にはしんちゃんの話はしてなかったけど死ぬ前に一言、黒崎さんありがとうございました。って言ったのよ。
母が話してたみたいだった。
それを聞いた時に私は改めてしんちゃんと生きていくって決めたの」
私はそれを聞いて黙って直美の肩を抱いた。
私は聞きながらずっと涙が止まらなかった。
私は直美が好きだ。
ずっと一生居たいと思う。
ただ、それは私にはできなかった。
しおりを挟む

処理中です...