詐欺る

黒崎伸一郎

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致命的なミス

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考えてみればわかることだった。
浩司みたいに二度目からは金を十万円ではなくもっとあげてほしいと考える奴は出てくるに違いない。
マニュアルが意味をなさないものになってきたのだった。
浩司は入院し私は他のメンバーの動向を気にしていた。
とりあえず来月入院するメンバーが二人いるが他は入院をやめた。
私は現在いるメンバーは三人になってしまったのだ。
それでも私の浪費癖は続く。
毎週の競馬にスロット。
ギャンブルは何時も負け続けであった。私には会社を経営する能力もなければ博才さえなかったのだ。
その私についに致命的な衝撃が私を襲った。
浩司が警察に捕まったのだった。
罪名は傷害罪だった。
病院内で喧嘩をしたらしく相手は歯を折るなど全治一ヶ月以上で現在留置所に入ってるらしかった。
病院内では喧嘩でフロアが氾濫しぐちゃぐちゃになっていた。
私はすぐにシャブが頭に浮かんだ。
あのクマはもしかしたらシャブのせいだったんじゃなかったのかと…。
結局喧嘩をして捕まった日は浩司は警察から病院には帰らなかった。
二日後に病院に帰ったが結局強制退院となった。
最悪のシャブではなかったが、私にとっては痛手だった。
十日間の入院で診断書を書いてもらうも、もうその病院には入院はもちろん診察さえできなくなった。
浩司は病院からのフロアの修理費と怪我の慰謝料を請求されたのだった。
金はない。
仕方なく私に相談したのだ。
私は考えた。
私には二つの選択肢があった。
一つはもう手に負えないと言ってメンバーから外すことを考えた。
実際今のメンバー三人の中でいちばんの問題児であった。
もう一つは支払いの金を出してやる方法だった。
何故私がそこまでやらなければならないのかは、浩司がこれからなんらかの事件を起こしてこの詐欺の事を警察にうたう可能性があった為、それだけは阻止する必要があった。
但し、あまり足元ばかり見られ私を脅す可能性もあったのでそれも頭に入れとかないといけなかった。
私は考えに考えた末、浩司に金を渡すことにした。二百万円だった。
浩司には入院でしか返すあてはない。
そこで別の病院に通院させ入院させることにしたのだ。
そして八十日入院させることにしたのだった。
強制退院させられた病院の入院期間は十日間、そして別の病院の入院八十日を足して全部で九十日入院させたのだった。七社の保険会社のうち四社は入院期間の保証は六十日だが後の三社は百二十日まで給付金が出たのだ。
合計の給付金は六百万円ほどになり、私はその場の窮地は乗り切った。
だがこれが私にとっての致命傷だったのだ。
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