罪人(つみびと)

黒崎伸一郎

文字の大きさ
22 / 23

逃げなければ…

しおりを挟む
メンバーを失った私に残ったのは借金だけであった。
借金と言ってもサラ金とかの正当な所から借りた金ではなかった。
いわゆるヤクザから借りまくった金だったのである。
ポーカーで負け続ける私に金を貸す輩が何人かいた。
その大半は暴利な金利だったが、私にはその時にはまだメンバーがいた。
金利は月に一割の利子ならまだまだマシな方で、二割以上取るヤクザもいた。
いちばん大きかったのはトイチの貸付である。
十日に一割の利子の事だ。
最初のうちは百万円を借りて十日経った日に百十万円を返していたのだが、だんだん金額が増えて融資金額が三百万円にもなってしまった。
それでも保険の金が入った時に返せれたはずだったが、それをしないでポーカーに注ぎ込んでしまったのだ。
三百万円借りていたわけだから十日毎に三十万円支払わなくてはならない。
それでも一向に減る事はないのだ。
トイチの返済は一日たりとも待ってはくれない。
私は知り合いの別のヤクザに頼み五百万円を月に一割の金利で借りた。
月の利子が五十万円だが、トイチの利子よりはるかに低い。
借りた金でトイチの借金を全て返したのだが、残った金はまた同じようにギャンブルですぐになくなってしまった。
その時点ではまだ私の店はあったが、従業員にも支払う金がなくなり、辞めざるを得なくなってしまう。
それにメンバーの崩壊である。
店はそれなりに繁盛していた。
と言っても私が客の店に足を運んで金を落として行ってたから、そこのオーナーらも私の店に来てくれていたのだ。
私は店を今月で締めなければならないのを決めた時にまた別のヤクザに金を借りに行ったのである。
そのヤクザから三百万円を借りたのだが、利子は月に1.五割…つまり四十五万円の支払いである。
しかもその利子は三百万円の中から引かれて私が手にした額は二百五十五万円だ。
先引きという利子の取り方である。
それでも金が必要だったのである。
だが、私にはもうメンバーもいなければ店もなくなる。
その金でもうひと勝負かけるしか方法がないとその時は思っていたのだった。
案の定、ギャンブルで負けた。
私は奥の手を使う…。
もう一度トイチのヤクザに金を頼んだのであった。
この時点でトイチには一千万円近くの利子を払っていた計算になる。
なんて馬鹿な男なんだと思うだろうが、ギャンブルにハマった人間でないとこの時の気持ちはわからない。
別にわかってもらおうとは全く思っても無いが…。
結果は誰もが予想した通り惨敗であった。
十日後には、いやその前に他のヤクザへの支払いが待っている。
私はもうこの街にいることができなくなってしまったのだ。
別にこの街が好きだったわけではない。
誰がどうなろうがもう私には逃げることしか道はなかったのだ。
付き合っていた女はいない事はなかったが、どうせこんな金もないギャンブルばかりの男がいなくなったところで逆に清々するくらいであろう。
親友と呼べる友もいない。
いっそ誰も知らない土地へ行き、そこでなんか仕事を見つけよう…。
住んでいたマンションもそのままにして私は新幹線に乗った。
マンションの保証人はメンバーの一人だった。
そのメンバーからも裏切られたのだから別にそのくらいはいいだろう。

私は新幹線を降りて知らない土地で暮らす事にした。
所持金はヤクザに借りた金を少しばかり残していた。
全く無しではどうする事も出来ないと思っていたからである。
どうせならヤクザに借りた金を全部持ってくれば良かったじゃないかと思われるかもしれないが、それが出来ていたらここまで落ちる事はなかったはずだ。
終わったことを考えても仕方が無い。
私はこの街のタウンワークで仕事を探す事にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

真面目な女性教師が眼鏡を掛けて誘惑してきた

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
仲良くしていた女性達が俺にだけ見せてくれた最も可愛い瞬間のほっこり実話です

処理中です...