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2話  苦労ではなく努力をしましょう

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 「ええ、もう嫌よ。いつもいつもにっかり堂のガトーショコラを買ってきて。
馬鹿なのね貴方。もう我慢できないわ。
私ずっと我慢してきたのよ。
お父様お母様が決めた婚約だから仕方なく結婚したのよ。
貴方なんかと結婚したくなかったわ。
私より不幸な人間っているかしら。いないわよね。
マドレーヌが食べたかったわ。
でも、私はマドレーヌも食べられないの。
ああ、可哀想な私」
 はぁぁ。お母様は世界1可哀想な悲劇のヒロインちゃんな私に酔っているそうです。
そんなにマドレーヌが食べたいなら自分で買いに行くなり使用人に買いに行かせるなり使用人に作らせるなり
方法は幾らでもあるはずです。
でも、それをしない。
自分では何もしようとしないのです。
いつか誰かがマドレーヌを食べさせてくれると思って自分では何もしないのです。
そんな事だから、お父様のような無能と結婚する事になるのです。
まぁお母様も無能でブスで馬鹿ですから、お似合いといえばお似合いなんですが。
しかし、お父様もお母様もブスで不細工で馬鹿で無能なのに、私はよくこんなに可愛く美しく綺麗に育ちましたね。
この2人本当に私の両親なんでしょうか。
きっとどこかに私の本当の両親がいて、何か事情があるのでしょう。
いつかきっと本当の両親が私を迎えに来てくれるでしょう。
私の本当の両親はきっと美しく優秀で努力を絶やさない人なのでしょうね。
私そっくりですね。
私は美しく優秀で常に努力を絶やさない人間なのですから。
希望がはっきりと見えました。
まずは、私は本当の両親に会いましょう。
 「うるさい!いいからにっかり堂のガトーショコラを食べろ」
 お父様はにっかり堂のガトーショコラを妻の口に近づけます。
 「嫌よっ!私はマドレーヌが食べたいの。マドレーヌ!マドレーヌ!」
 お母様は必至に抵抗しています。
 やれやれ、そんな事に労力を使わず努力すればいいのに、なんでそんな簡単な事も分からないんでしょうか。
無能で努力しない馬鹿は苦労自慢不幸自慢は好きですからね。
苦労ではなく努力をして下さい。
苦労はいくらしてもそれだけでどうなるわけでもありません。
苦労は誰でもできますが、努力は誰でもできるわけではありませんから。
まぁ、努力できない欠陥品に生きる資格も価値もないんですがね。
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