ばかな男は恋で賢くなるのか?

雪うさこ

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第二幕

08 そして、覚悟

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 あの時はあまり深く感じていなかったのかもしれないが、大人になってから思う事。

「なぜ権力が欲しいのか?」

 その答えは「野原を守る力が欲しいから」だ。

「世界中のどこにも居場所がなくなる……」

「そうだよ」

「居場所なんて元々ない」

「そんな事言うなよ」

 槇は野原の頭を撫でた。

「だからおれが一緒にいてやるっつってんの!」

 槇の言葉に野原は黙っていた。

「聞いてんの?」

「実篤って昔からうるさい」

「ば、馬鹿野郎!」

「ほら、うるさい」

「お前ねぇ……」

「あら! 実篤! どうしたの!? その顔!」

 いつのまにか自宅の近くまで帰ってきていたらしい。玄関先で立ち話をしていた槇の母親と野原の母親。二人は慌てて駆け寄って来た。


「また! 中学に入ったんだから少しは大人しくなると思ったのに!」

 槇の母親はそんな言葉を口にするけど、顔は心配そう。野原は彼女の表情を見て「ああ、これが心配」と呟いた。

 そして自分の母親も。

せつは? 怪我ないの?」

「実篤がおれを助けてくれた」

「助けたって?」

 槇の母親は疑いの眼差し。

「別にいいだろ!」

 槇は悪態を吐くが、野原はことの顛末を二人に説明した。

「教科書、バラバラにされてたら、実篤が止めてくれて。殴られた」

「あんたは!」

 母親は槇の頭をグーで叩く。

「イテっ! なんでまた叩くんだよ! おれがいじめたわけじゃないだろ!」

「心配ばっかりかけさせて!」

「実篤くん、本当にありがとう」

 野原の母は頭を下げた。

「雪は人の気持ちがよくわからない子で、小学校の頃からこんなでしょ? いつも虐められているんじゃないかって心配していたの。実篤くんが助けてくれたなんて、本当に感謝です」

 頭を下げる母親の横顔を見て、「感謝」と呟いてから、野原も頭を下げた。

「ありが……とう」

 子供か。
 槇はそんなツッコミをしたくなるけど。
 だけどこれが野原雪なのだ。

 感情に乏しくて、自分の気持ちがよく分からない。今感じていることを言葉にするのが苦手なのか。

 だったら。
 わからないなら教えればいい。
 一緒にいると言い切ってしまったから、一緒にいてやる。

 この時、槇はそう心に誓った。

 大人になっても。
 おじさんになっても。
 野原雪は自分が守るのだ。






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