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第六幕
12 誰にもわたしたくない*
しおりを挟む「田口や保住の味方をしているんじゃない。おれもそう思うから。澤井を下ろしても無駄。おれたちには敵わない。だから、おれたちはいつかあの人やあの人のようなクラスの人たちに対抗できるように自分自身を高めないといけない。実篤はまだ子供。おれもそう。あの人たちには敵わないよ。それは、自分がよく知っているでしょう?」
槇は呟く。
「知っている……おれたちでは力不足。能力も人脈も、そして腹の括り方も……だ」
「実篤。おれも手伝うから。一緒にやろう。そして、おれは守られたいんじゃない。おれも守りたいから」
野原は拘束されている両手をそっと差し出して、それからにこっと笑顔を見せた。
槇の表情が一瞬で崩れる。
目からたくさんの涙が溢れた。
「……ごめん。雪。おれ、お前にひどいこと、ばっかり……っ」
「いつものこと」
「……いつものことで済まされないだろう。おれって本当にバカで。お前のことを傷つけてばっかり」
野原の腕を取って、抱きしめながら槇は子どもみたいに泣きじゃくった。
「本当、小学校の頃から変わっていなんだから……」
そんな野原のつぶやきが耳に係る。それから、野原は優しく槇の頭を撫でてくれた。
野原のために自分は……と息巻いていたのに、結局は、ずっと野原に守ってもらっていたのかも知れない。
自分は、彼がいないと生きていけない。
自分の人生は野原雪と共にあるのだ。
「実篤」
「ごめん。辛い思いさせて」
「実篤になら、何をされてもいい」
ふと近づいた唇が重なる。どちらの涙かなんてわからない。涙と唾液がグジャグジャで、でも、そんなことなんてどうでもいい。
「雪」
彼の名を何度も呼びたい。
野原は自分のものであるという証が欲しい。
彼の舌を乱暴に吸い上げると、吐息が洩れた。
——誰にも渡したくない。
執拗に口付けを繰り返すと、野原の瞳の色がぼんやりとするのが分かった。
自分の刺激で、彼の意識が混濁していく様は嬉しいのだ。彼の全てを支配しているという感覚は、槇の欲を充足させてくれる。
乱暴だけど、愛おしむように、舌を絡ませる。そっと触れたり、離したり……。
口内の粘膜を舌で執拗になぞる。
「はッ……んん、……うんッ」
吐息と共に漏れ聞こえる野原の声は、槇には媚薬だ。
それから、歯牙を一つずつ確かめるように撫でる。
両手を拘束されている状態で、槇のシャツを掴む彼の手の力が強くなるのがわかった。
槇は自分の与えた刺激で、野原が反応する様が嬉しい。言葉のやりとりでは得られないほどの満悦感が得られるからだ。
濡れた唇をなぞり、それからシャツを捲り上げて、脇腹を吸い上げた。
「……あッ……ん」
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