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第0話 overture
しおりを挟む(ああ、なんてことが起きたのだろうか……)
——これは私のせいだ
そう思った。夜の帳が、この世界を包みこんでいる。小高い丘から見渡す限り広がる、蒼白い炎を見つめていた。炎が蒼白いのは、命が燃える色だからだ。まるで地獄の業火だ。
炎は容赦なく地上にある全てを焼き尽くす。木々も、家も、それから——動物も、人も全て——だ。頬が焼けるように熱かった。死に逝く者たちの悲痛な叫びが。大地の嘆きが……胸に突き刺さるようだ。
膝をつき、地面に伏して痛哭する。
——これは私のせいだ
おれが入り込んでいるからだの主は別にいるようだ。この人は、この状況を「自分のせいだ」と言う。一体、この人は、なにをしたというのだろうか。
土を掴み、その手を打ちつけて、彼は悲鳴にも似た叫び声を上げた。彼の悲しみが伝わってくる。おれの胸もギリギリと締めつけられるように痛んだ。
一頻りそうしていた彼は、涙で滲む視界を空に向けた。神に許しを乞うつもりなのだろうか。両腕を開いて天を仰ぐ。
——神よ 憐れみたまえ 愚かなる我々に救いの手を差し伸べたまえ ……そのためなら 私は…… どのような罰でも受けましょう だからどうか この世界を この世界にある命を 救いたまえ
彼は広げた両手を、胸のところに引き寄せてた。それから、大きく息を吸い、小さい声で歌いはじめる。歌詞は聞き取れない。けれど……その旋律は、不安なおれの心にじんわりとしみ込んできた。
(温かい旋律だ。これは——……。鎮魂歌)
この人の抱える悲しみは奥深く、底が見えない。
惨憺たる状況に。
失われていく命に。
涙が止まらなかった。
世界はどうして、こんなにもいがみ合うのだろうか。
世界はどうして、こんなにも争いが絶えないのだろうか。
そんな思いが、おれの心を駆け巡った。
「——」
背後から、この人を呼ぶ声が聞えた。
心がざわついた。喜びと悲しみが入り混じるような、それでいて尊いその気持ち。
(そうだね。きっと。振り返ったら、貴方の大事な人がそこにいるのでしょう?)
振り返り、声の主を求めて腕を伸ばす。しかし——。そこで不意に視界が漆黒の闇に閉ざされた。
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