素直になれなくて-吉哉の場合-

吉野ゆき

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番外編-1

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私はもう一度その傘に目をやる。


あれ?そういえば、なんだかこの傘、見覚えがあるような。


傘いっぱいのカラフルなお花模様。

私も昔、こんなの持ってなかった?

雨の日が楽しくなるようにって、お父さんがちょっと奮発して買ってくれた傘。

すごく気に入って、あの傘で出かけたくて、雨の日が大好きになった。


私あの傘、どうしたっけ…?



ふわっ。


突然、後ろから抱きしめられた。

吉哉さんのいつも食べているキャンディーの甘い香りに、吉哉さんがすぐ近くにいることを感じて神経が痺れる。


いつか聞いたことがあった。

「吉哉さんてほんとキャンディー好きだよね。いっつも食べてる」

リビングのテーブルには絶えずキャンディーが用意してあるくらい。
ガラスの容器に入れられて、飾ってあるだけでかわいくてなんだか優しい気持ちになるから私も好きだけど。


「好きだよ」

間髪入れずに短く発せられた言葉に、思わず赤くなるところだった。

今のは『私』のことじゃなくて、『キャンディー』に対しての言葉。

分かってるけど、同時に私へとまっすぐに向けられた視線がなんだか熱っぽく感じてしまう。


「匂いは記憶を呼び覚ますって言うしね」

付け足すように加えられた言葉。
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