素直になれなくて

吉野ゆき

文字の大きさ
上 下
13 / 50

ほんの少しの期待

しおりを挟む
車に荷物を詰め込んで、食料品を買いにスーパーへと向かう。


とりあえず1週間分をまとめて買う。

好みの分からない人の食事は考えるのが大変で、私は何を言われても作れるようにといろいろな物を買い込んだ。

なので荷物の量もハンパない。


吉哉さんは変わらず重いものを持ってくれてる。



吉哉さんの好きな食べ物とか、お手伝いさんにでも聞いて調べるかな。


私も、与えられた役割をしっかり果たさないと。


ぼーっとそんな事を考えているうちに、バタンッと車の扉が閉まり、私達の家へと走り出す―。


それからは、掃除、洗濯、料理すべてがんばってきた。

会話もやっぱり必要最低限しかないけど、最初よりは増えてきた気がする。

話しかければ短いけど答えもくる。


加えて、時折見せる義務からくる優しさに勘違いしてしまいそうになることがあった。

もしかしたら、普通の夫婦みたいになれるかもって。


でも、やっぱり所詮義務は義務だった。

そんな期待、あの時一瞬で崩れ去ったんだ。
しおりを挟む

処理中です...