素直になれなくて

吉野ゆき

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ワタシハ

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ピーポーピーポー


遠くで救急車のサイレンの音が聞こえる。



「吉哉さん!吉哉さんてば!!」


私は半狂乱になって泣き叫ぶ。

「落ち着いて!
止血をしないと!どいて!!」


私は吉哉さんから剥がされる。


イヤ!
やめてよ!
傍にいさせて!

だって私は吉哉さんの――…






ヨシヤサンノナニ?







救急車が到着して、吉哉さんが運ばれる。


バタバタと慌ただしく動く人々。

口に酸素を入れられ心臓マッサージが繰り返される。

あぁ、こんな場面、ドラマで見たことあるな。
あんまりそっくりで、これは撮影なんじゃないかと思う。
だってこんなのちっとも現実的じゃない。

私はただその状況を虚ろな目で眺めていた。



病院に着くとすぐに手術室に入れられ、手術中のランプが光る。


私は外のイスに座らされ、ずっとランプを見つめていた。


もうどのくらいそうしていただろう?


1分がすごく長く感じる――。
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