素直になれなくて

吉野ゆき

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抱擁

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「真由、何言ってるんだ?
振られたって…?」

吉哉さんは心底不思議そうに私を見る。


「だって…そうでしょ?
私の言いたいことわかってるって…告白すらさせてくれない…っ」


私は腕を掴まれたままぺたんと床に崩れる。


「え…何……え!?
真由?俺のこと、好きなの?」


何を今さらと思いながらも私は下をむいたまま頷く。

その瞬間、思い切り腕を引っ張られて立たされたかと思ったら、暖かいものに包まれた。


「!?吉哉さ…?」

目の前の景色に、私は吉哉さんに抱きしめられているのだと気づく。


「く、苦しいよ…」

あまりにも強く抱きしめられていて、頭が回らず混乱する。


「ごめん、嬉しくて…」

口では謝ってはいるものの、その力が弱まることはない。


「俺、てっきり真由は今回の件で離婚して実家に帰るんだと思って。
病院で会った真由の両親もよそよそしくて何か様子が変だったし。
大切な一人娘を危ない目に合わせたから当然かもしれないけど」


「危ない目って…私が勝手に飛び出したのに…。
しかも庇ってもらっちゃって…吉哉さん、ごめんなさい。
痛かったでしょう?」


痛々しく頭にまかれた包帯に、また目が潤んでくる。
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