素直になれなくて

ふたりで…

「何それ…ずるい。
ちゃんと言っ」


その続きは言えなかった。

唇を塞がれていたから。


「んっ…」




やっと離れたと思ったら耳元に痺れる声。


「真由が好きだ」


今度は目を見て。

「形式上だけでなく、本当の意味で夫婦になりたい」



ずっと聞きたかった言葉が降ってくる。

聞き間違い？

まっすぐ向けられたままの吉哉さんの目。

聞き間違いなんかじゃない。


瞳に映る景色が涙で滲んでいく。




「…私も吉哉さんが好き。
私を本当の意味で吉哉さんの奥さんにして下さい」


二人は顔を見合わせて笑った。


「やっと捕まえた」

そう言うと今度は優しく包むように抱きしめられた。





「ずいぶん遠回りだったね」

「ほんとだな」

「ねぇ、いつから私のこと好きだったの？
てっきりずっと嫌われてると思ってた」

「内緒。真由が思ってるずーっと前から」

「もう、なにそれ。
…ねぇ、今日何の日か覚えてる？」

「もちろん。結婚記念日。
真由が形式だけでも俺のものになった日」」

「ふふっ、なにそれ。
あの日からやり直そう？
今日が私達の結婚初夜！」

「ぶっ！そんなこと言って…。知らないから。もう止まんないよ？真由のせいだからな」


私達は手を繋いでリビングを後にした。

行き先は吉哉さんの部屋。







翌朝、私達はふたり、いつか見たあのクローバーのペアカップでコーヒーを飲んだ。

吉哉さんが隠れて買っていてくれたらしく、照れながら部屋から出してきたのに、少し感動した。



憧れた風景。
今現実に。



これからはきっとずっと…




ふたりで…




　　　　　　　　 ―END―