同級生のお兄ちゃん

若草なぎ

文字の大きさ
上 下
21 / 30
柏木マオの場合

side:柏木マオ 文化祭③

しおりを挟む
放送委員の仕事を終え、教室に向かった。

仕事の交代をして窓側の席で待機。

映画上映の始まる前と終わった後で換気を行う。

同タイミングの担当に水無月くんがおり、少し気まずいと思っていた。

この前の話と、先程モミジさんから聞いた話が繋がった気がしたからだ。

特に同じ持ち場ではないため、話すこともなさそうかな、と思っていたが、

担当が終わりかけたタイミングを見計らって水無月くんが話しかけて来た。

「柏木さん」

私はビクっとしながら水無月くんの顔を見る。

水無月くんはため息をつき、頭を下げた。

「この前は急にごめん」

突然の謝罪に固まってしまう。

「ちょっと来て」

私は交代のクラスメイトに挨拶をして教室を離れた。

「俺の個人的な話なんだけど、聞いてもらえるかな?」

「う、うん」

教室から離れた渡り廊下の辺りで立ち止まる。

「俺、幼馴染の子がいるんだけど… そいつが桜井の事好きみたいでさ。

柏木さんの事気にしてるっていうか…」

水無月は窓の外を見ながら言った。

「俺、そいつの事応援したいと思って…ってか……………俺はそいつが好きなんだよ」

幼馴染ちゃんに対する突然の告白!!

「だから、俺の好きなやつには幸せになってほしい、っ思ったら我慢できなくて…

柏木さんにはスゴい圧かけちゃったな、って反省。ほんとごめんな」

「ううん、全然大丈夫だよ」

全然大丈夫じゃなかったけど……

というかお兄ちゃん、モテすぎなんだけど……

無口なのが人気なのかな?

「って訳で、たこ焼き奢るわ」

「えっ!?いや、いいよっ」

「俺の気が済まないんだよ。無理にでも連れてくから」

そう言って私の腕を引っ張って歩く。

たこ焼きの屋台まで連れて行かれ、無理矢理渡される。

「ほい」

「ありがとう。でも、無理矢理は良くないと思うよ」

水無月くんはたこ焼きを口に運ぶ。

「いいから食べなよ」

「意外と自己中だなぁ。…あっつい!」

「ごめんな。あと、後夜祭のダンス頑張れよ」

「ありがとう」

「まあ、俺は見ないで帰るけど」

「最悪だな、水無月くん」

たこ焼きを食べおえ、ダンス衣装に着替えるため女子更衣室に向かった。
しおりを挟む

処理中です...