同級生のお兄ちゃん

若草なぎ

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柏木マオの場合

side:柏木マオ プレゼント②

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お兄ちゃんの誕生日当日。

今日は時間の流れが早いように感じる。

緊張しすぎて、全然話し掛けに行けない…!!

いっその事、お兄ちゃんが帰る直前に話しかける方が都合が良いかもしれない。

覚悟を決めて、放課後になるのを待った。





「お兄ちゃん」

勇気を出して話しかけた。

「はい?」

「今日は、もう帰る感じですか…?」

「どうしたの?ずっと敬語だけど」

変な顔をされる。

さっと、CDの入った袋を出した。

「あの、これ、ありがとう!すごくよかった」

お兄ちゃんがCDを受け取った。

「いえ、どういたしまして。ってか、持ってくる時連絡してって言ってたじゃん」

「あっ!そうだった。ごめんなさい」

私は深く頭を下げた。

「いや、気に入ったなら他のやつも貸そうかなって思ってただけなんだけどね」

え?そうだったの!?

連絡しとけばよかったな…

「あ、そうだ。今日はCDショップに寄ろうかと思ってたんだ。そろそろ行くね」

「わ、私もついて行って良いかな!?」

ヤバイ!このままだと帰っちゃうし…借りたCDの感想も言いたいし…

「え、好きにすれば」

「はい!好きにします!」

良かった!断られなかった。

私は急いで用意をして、お兄ちゃんと一緒に教室を出た。

歩きながら、CDの感想を伝えた。

お兄ちゃんは微笑みながら話を聞いてくれた。

そして私が感想を伝えた曲の解説をしてくれる。

それを聞く時間はとても楽しかった。

CDショップに着くと、クラシックコーナーに向かった。

「俺は、この人の音楽が好きなんだ」

お兄ちゃんが見ているのは指揮者の人が映っているポスターだった。

「もし、連絡くれてたらこの人が指揮してるオケのCDを持ってこようと思ってたんだよね」

思わずお兄ちゃんを見た。

なんか急に心を開いてくれている!

嬉しい!嬉しいけど……私、困惑してます!!

「じゃあ、また気が向いたら持ってきてくれると嬉しいです。」

お兄ちゃんはこちらを見て、優しく頷いた。

CDショップでは音楽雑誌を購入して店をあとにした。

もう一度、トライだ!!

「お、お兄ちゃん!」

「ん?」

「こ、これ……」

紙袋に入ったプレゼントを差し出す。

「た、誕生日!おめでとうございます!!プレゼント…です」

「え!?わざわざ用意してくれたの?」

プレゼントを見ながら驚いた様子。

そして、こちらを見て笑顔で「ありがとうございます」と言った。

「ちなみに何か聞いて良いの?」

「何が良いかわかんなくて…万年カレンダーにしちゃったんだけど…

要らなかったらお家の人に渡してくれれば良いかな、って思ってるので!」

めちゃくちゃ言い訳している私がいた。

自分が傷つかないように予防線張ってるのがわかる。

お兄ちゃんを見るととても嬉しそうにしていた。

「え、マジで?万年カレンダー、ほしいなって思ってたんだ。

何処にでも売ってる雑貨じゃないからすごい嬉しい。本当にありがとう」

「喜んでくれて良かった!じゃあ、是非使ってください」

喜んでくれたようで安心した。

お兄ちゃんはいつも通り、バス停まで送ってくれた。

「柏木さん。今日は、プレゼントありがとう。本当に嬉しかった」

「ううん。お兄ちゃんの笑顔が見れてこっちも嬉しいから!」

バスに乗り、お兄ちゃんに手を振る。

お兄ちゃんも恥ずかしそうに手を振ってくれた。

プレゼントが渡せてよかった。そして、喜んでくれてよかった。

今日はすごく嬉しい日になったな。

あれ…?喜ばせたかったはずなのに私の方が喜んでない!?

ケータイが震える。

お兄ちゃんから連絡だ!!

『柏木さん。俺の誕生日を覚えててくれて本当にありがとうございます。

こんな、ちゃんとしたプレゼントが友達から渡されるのは久しぶりでしたので

本当に嬉しかったです。

CDもしっかり聴いてくれたみたいだったので、それも嬉しかったです。

柏木さんの好きな曲や好きな作曲家がいたら教えてほしいです。

また何処かでお話ししましょう。   桜井』

めちゃくちゃ敬語だあああああ!!

ギャップ過ぎる。

確かの結構素気ない態度とか、仲良くない人にはめちゃくちゃ敬語使ってるけど、

文章は異常に敬語!!

これは、ちゃんと文章を考えて返信しよう…

バスの中でお兄ちゃん宛の文章を考える。

いつもより楽しい帰宅に感じた。
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