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絵画のような人魚ー06ー
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第6話
マンションから外に出ると辺りは少しだけ暗くなっていた。「何でも奢るわよ」と言う風子に、僕は何を食べようかと考えながら駅に向かって歩く。とは言っても吉祥寺に来たのは初めてだったので、この辺の地理に詳しくない。何処に美味しい店があるかも知らないのだ。
唯一頭に浮かんだのは、ここに着いた時に入った喫茶店ぐらいだった。雰囲気が良かったので、そこでも良いかもと思った時、歩いている僕たちへ大きな声で声をかけてくる人が現れた!!
「四季くん、こんなとこにおったんかいな」
なんと前から秋人と緑郎が歩いてやって来る。これは完全に誤解されるパターンだ。ニヤニヤ笑う緑郎の表情でわかった。多分、僕が寮を飛び出しあと、秋人が説明したんだろう。僕の友人が大変な目にあっているからと……
なのにこうして呑気に歩いている。しかも女を引き連れて、事情を知らないとは言え、誤解されてもおかしくない。
「なんや、四季くんも人が悪いな。秋人くんから聞いたんやけど、彼女に会ってたんかいな」
完全に勘違いされている。秋人も僕を見て、そういうことかと苦笑いしていた。まるでお邪魔だったかなと目で訴えているようだ。
「誰、あの子たち?」と風子が呑気に聞くので、僕はお前のせいだよーーと心の中で呟くのだった。
結局、変な疑いもされたくなかったので、僕は秋人たちを誘って一緒にご飯を食べることにした。場所も午前中に来た喫茶店で、テーブルに着いた僕は、勘違いを晴らすために電話のくだりから説明をした。
「なんだ、そうだったのか。俺はてっきり四季の彼女かと思ったよ。俺たちと飯を断るのが悪いと思って、あんな嘘を付いたかと」
「でも四季くんも人が悪いわ。こんなごっつ可愛い友達がいるなんて」
「はあ!?今なんて言った?」
「ありがとう日置くん。嬉しいわ」と風子は、僕の言葉にかぶせるように喋るのだった。
こうしてなんだかんだと時間は過ぎて行き、同い年の僕たちは自然と打ち解けた。地元での話しや、大学で何を学びたいのかと尽きることなく話すのだった。
「秋人くんはイラストレーターになりたいんだ。私もそうなのよ」
僕の横で楽しそうに話す風子を見ていて、こいつ、完全に秋人のことを気に入っているな……感じた。
何故なら、普段僕の前で見せないような話し方をしているからだ。甘えるような話し方や、第一印象を良く見せるためか、秋人の話しに大袈裟な反応をしていた。
「そう言えば、緑郎から聞いたんだけど、大学に入ったらサークルをしたいって話。四季はどう思う?」
そう、緑郎が話してくれた【アートの集い】。あの時、詳しくは聞かなかったけど、内容によっては面白そうだとは思っていた。
僕は緑郎がサークルを作るなら、一緒にやっても良いと伝えた。秋人も同じ考えだった。日本芸術大学では生徒が誰でも自由にサークルを設立できる。もちろん流れで、風子もそのサークルに入ると言い出した。おそらく秋人が居るからだろう。なんて思ったが、この際そこは考えないようにした。
とにかく明日は始業式。僕たちの大学四年間が始まるんだ。東京に来て初日から素敵な仲間に出会えたし、僕たちにとって最後の青春でもあった。僕はこの出会いに感謝しながら青春という出発行きの切符を手にした気がした。
僕たちの路線にゆっくりと青春という列車は走り出した。
マンションから外に出ると辺りは少しだけ暗くなっていた。「何でも奢るわよ」と言う風子に、僕は何を食べようかと考えながら駅に向かって歩く。とは言っても吉祥寺に来たのは初めてだったので、この辺の地理に詳しくない。何処に美味しい店があるかも知らないのだ。
唯一頭に浮かんだのは、ここに着いた時に入った喫茶店ぐらいだった。雰囲気が良かったので、そこでも良いかもと思った時、歩いている僕たちへ大きな声で声をかけてくる人が現れた!!
「四季くん、こんなとこにおったんかいな」
なんと前から秋人と緑郎が歩いてやって来る。これは完全に誤解されるパターンだ。ニヤニヤ笑う緑郎の表情でわかった。多分、僕が寮を飛び出しあと、秋人が説明したんだろう。僕の友人が大変な目にあっているからと……
なのにこうして呑気に歩いている。しかも女を引き連れて、事情を知らないとは言え、誤解されてもおかしくない。
「なんや、四季くんも人が悪いな。秋人くんから聞いたんやけど、彼女に会ってたんかいな」
完全に勘違いされている。秋人も僕を見て、そういうことかと苦笑いしていた。まるでお邪魔だったかなと目で訴えているようだ。
「誰、あの子たち?」と風子が呑気に聞くので、僕はお前のせいだよーーと心の中で呟くのだった。
結局、変な疑いもされたくなかったので、僕は秋人たちを誘って一緒にご飯を食べることにした。場所も午前中に来た喫茶店で、テーブルに着いた僕は、勘違いを晴らすために電話のくだりから説明をした。
「なんだ、そうだったのか。俺はてっきり四季の彼女かと思ったよ。俺たちと飯を断るのが悪いと思って、あんな嘘を付いたかと」
「でも四季くんも人が悪いわ。こんなごっつ可愛い友達がいるなんて」
「はあ!?今なんて言った?」
「ありがとう日置くん。嬉しいわ」と風子は、僕の言葉にかぶせるように喋るのだった。
こうしてなんだかんだと時間は過ぎて行き、同い年の僕たちは自然と打ち解けた。地元での話しや、大学で何を学びたいのかと尽きることなく話すのだった。
「秋人くんはイラストレーターになりたいんだ。私もそうなのよ」
僕の横で楽しそうに話す風子を見ていて、こいつ、完全に秋人のことを気に入っているな……感じた。
何故なら、普段僕の前で見せないような話し方をしているからだ。甘えるような話し方や、第一印象を良く見せるためか、秋人の話しに大袈裟な反応をしていた。
「そう言えば、緑郎から聞いたんだけど、大学に入ったらサークルをしたいって話。四季はどう思う?」
そう、緑郎が話してくれた【アートの集い】。あの時、詳しくは聞かなかったけど、内容によっては面白そうだとは思っていた。
僕は緑郎がサークルを作るなら、一緒にやっても良いと伝えた。秋人も同じ考えだった。日本芸術大学では生徒が誰でも自由にサークルを設立できる。もちろん流れで、風子もそのサークルに入ると言い出した。おそらく秋人が居るからだろう。なんて思ったが、この際そこは考えないようにした。
とにかく明日は始業式。僕たちの大学四年間が始まるんだ。東京に来て初日から素敵な仲間に出会えたし、僕たちにとって最後の青春でもあった。僕はこの出会いに感謝しながら青春という出発行きの切符を手にした気がした。
僕たちの路線にゆっくりと青春という列車は走り出した。
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