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絵画のような人魚ー05ー
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第5話
膨れっ面で丸い椅子に座るのは僕。そんな僕を見て、君島風子は誤魔化すように笑っていた。笑い事じゃないだろうと文句を言いたかったけど、お詫びに夕飯を奢ると約束したので、心なし怒りはおさまっていた。
僕が今いる場所は風子が東京で一人暮らしを始めるマンションだった。風子からの電話で「助けて……」なんて言われたら、何事かと急いでやって来た次第だ。
「お前な、これぐらいの事で大袈裟なんだよ」
「だから謝ってるでしょう。私がどんだけ怖かったか知ってる!!」
「そんなに大きい図体してゴキブリなんかにビビるなよ。それにあんな言い方したら、こっちだって心配するだろう」
つまり、風子が借りたマンションの部屋からゴキブリが出たというわけだ。焦った風子は僕に電話して呼び出したということ。誰だってあんな言い方されたら駆けつける。幸いにも吉祥寺の駅周辺に部屋を借りていたので、すぐにマンションの場所もわかったけど。部屋に来て見たら、一匹のゴキブリに怯える風子の姿だった。
拍子抜けしながらも、一様ゴキブリは退治してあげた。秋人には友達が何かあったみたいだからと告げて、部屋を飛び出してしまったので、きっと今頃、心配しているかもしれない。しかも彼の携帯番号を聞いていなかったから、連絡の仕様がない。戻ったら事情を説明して謝ろう。
「でも、四季が来てくれて助かったわ」と安堵の表情で床に座る風子は落ち着いたのか、足を伸ばしてリラックスしている。
しかし改めて部屋を見ると、一人暮らしをするには驚くほど広い。1LDKにオートロックの部屋にはインターネットが初めから完備さらていた。なんて贅沢な……でも君島風子の実家は地元で有名な地主で裕福な家庭だった。一人娘を東京で一人暮らしさせるなら、このぐらいは当たり前かもしれない。
小中高と同じ学校に通い、僕たちは家が近所だったから不思議とずっと一緒にいた。まあ簡単に言ってしまえば幼馴染で腐れ縁の仲なのだ。お互いに気を使うこともなく、気兼ねなく気楽に話せる間柄だった。
男勝りの風子は幼い頃からスポーツ万能で、クラスの中で活発な女の子だった。小学校から高校まで水泳をやっていたせいか、スレンダーな身体で肩幅はガッチリしていた。さらに身長が170センチもあったので大柄な女性でもある。僕の身長が173センチなので、ヒールなんか履かれた日には、ほとんど僕と身長が変わらない。
それが原因なのか疑問だけど、風子は彼氏ができないと嘆いていた。確かに目は切れ長で鼻筋も整っていたが、とびきり美人ではない。だけど彼氏ができない理由はきっと他にある。性格に問題があると言うか、女らしさがないのだ。
幾ら僕が幼馴染で、気がしれた仲だと言っても洋服に紛れて下着類をオープンに置くのは如何なものかと思う。僕は立ち上がって、部屋に置かれた段ボールを足蹴にして片付けないのか聞いた。
「明日にするわ」と風子はのんきな顔して答える。
別に僕の荷物じゃないからどうでもいいけど、明日になって手伝えとか言われたらたまったもんじゃない。
僕はオープンに置いてあるブラジャーを見て思わず口にしてしまう。
「ブラするんだ……」と、すると風子は細い目をして、「当たり前でしょう。これでも大きくなったんだから!!」
そんなことを言っているが、風子の膨らみのない胸に視線が移るとにわかに信じられない。高校の時、突然こいつの家に遊びへ行った際、部屋を開けたら着替え中の風子がいたからだ。上半身裸で平らな胸に少しだけ膨らんだ胸が印象的で、今でも僕の脳裏に残っている。
「へえ、少しは成長したんだ」と慰めにもならない言葉を言う。
「何よ、興味あるの?」
「全然、まったくだね」
相変わらず僕たちの関係はこんな感じだった。男と女の友人関係は無理と言われているが、僕たちに関してはそれが成り立っていた。そして窓から外を見て、そろそろ夕飯の時間だなっと思っては腕時計で時間を確認した。
今夜は何を奢ってもらおう。なんてことを考えながら、僕たちは少しだけ暗くなった街へと繰り出そうとした。
膨れっ面で丸い椅子に座るのは僕。そんな僕を見て、君島風子は誤魔化すように笑っていた。笑い事じゃないだろうと文句を言いたかったけど、お詫びに夕飯を奢ると約束したので、心なし怒りはおさまっていた。
僕が今いる場所は風子が東京で一人暮らしを始めるマンションだった。風子からの電話で「助けて……」なんて言われたら、何事かと急いでやって来た次第だ。
「お前な、これぐらいの事で大袈裟なんだよ」
「だから謝ってるでしょう。私がどんだけ怖かったか知ってる!!」
「そんなに大きい図体してゴキブリなんかにビビるなよ。それにあんな言い方したら、こっちだって心配するだろう」
つまり、風子が借りたマンションの部屋からゴキブリが出たというわけだ。焦った風子は僕に電話して呼び出したということ。誰だってあんな言い方されたら駆けつける。幸いにも吉祥寺の駅周辺に部屋を借りていたので、すぐにマンションの場所もわかったけど。部屋に来て見たら、一匹のゴキブリに怯える風子の姿だった。
拍子抜けしながらも、一様ゴキブリは退治してあげた。秋人には友達が何かあったみたいだからと告げて、部屋を飛び出してしまったので、きっと今頃、心配しているかもしれない。しかも彼の携帯番号を聞いていなかったから、連絡の仕様がない。戻ったら事情を説明して謝ろう。
「でも、四季が来てくれて助かったわ」と安堵の表情で床に座る風子は落ち着いたのか、足を伸ばしてリラックスしている。
しかし改めて部屋を見ると、一人暮らしをするには驚くほど広い。1LDKにオートロックの部屋にはインターネットが初めから完備さらていた。なんて贅沢な……でも君島風子の実家は地元で有名な地主で裕福な家庭だった。一人娘を東京で一人暮らしさせるなら、このぐらいは当たり前かもしれない。
小中高と同じ学校に通い、僕たちは家が近所だったから不思議とずっと一緒にいた。まあ簡単に言ってしまえば幼馴染で腐れ縁の仲なのだ。お互いに気を使うこともなく、気兼ねなく気楽に話せる間柄だった。
男勝りの風子は幼い頃からスポーツ万能で、クラスの中で活発な女の子だった。小学校から高校まで水泳をやっていたせいか、スレンダーな身体で肩幅はガッチリしていた。さらに身長が170センチもあったので大柄な女性でもある。僕の身長が173センチなので、ヒールなんか履かれた日には、ほとんど僕と身長が変わらない。
それが原因なのか疑問だけど、風子は彼氏ができないと嘆いていた。確かに目は切れ長で鼻筋も整っていたが、とびきり美人ではない。だけど彼氏ができない理由はきっと他にある。性格に問題があると言うか、女らしさがないのだ。
幾ら僕が幼馴染で、気がしれた仲だと言っても洋服に紛れて下着類をオープンに置くのは如何なものかと思う。僕は立ち上がって、部屋に置かれた段ボールを足蹴にして片付けないのか聞いた。
「明日にするわ」と風子はのんきな顔して答える。
別に僕の荷物じゃないからどうでもいいけど、明日になって手伝えとか言われたらたまったもんじゃない。
僕はオープンに置いてあるブラジャーを見て思わず口にしてしまう。
「ブラするんだ……」と、すると風子は細い目をして、「当たり前でしょう。これでも大きくなったんだから!!」
そんなことを言っているが、風子の膨らみのない胸に視線が移るとにわかに信じられない。高校の時、突然こいつの家に遊びへ行った際、部屋を開けたら着替え中の風子がいたからだ。上半身裸で平らな胸に少しだけ膨らんだ胸が印象的で、今でも僕の脳裏に残っている。
「へえ、少しは成長したんだ」と慰めにもならない言葉を言う。
「何よ、興味あるの?」
「全然、まったくだね」
相変わらず僕たちの関係はこんな感じだった。男と女の友人関係は無理と言われているが、僕たちに関してはそれが成り立っていた。そして窓から外を見て、そろそろ夕飯の時間だなっと思っては腕時計で時間を確認した。
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