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絵画のような人魚ー04ー
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第4話
学生寮『ピカソ』の主なルールについて説明が終わると、各自明日の始業式まで自由時間となった。
因みに学生寮のルールは以下の通りである。
①門限は男女共に午後二十時。(但し特別な理由があった場合は除く)
②学生食堂は平日の午前七時と午後十九時のみ。
③共同トイレとお風呂は各自で清掃(週一回の当番制)。
④憩いの場にあるインターネットは二十四時間使用可能。
⑤男女共に異性の連れ込みは禁止とする。
「思ったより厳しくはないな。これだけの規則なら余裕だね」と僕は秋人に言った。すると秋人はニヤリと口許を緩めて笑う。
「秋人くん、その顔つきは何か企んでる顔やな!!僕らにも教えてや」
秋人はニヤリとしたまま、僕たちの部屋に上がり込むと、窓を開けて女子寮の棟を見た。ちょうど僕たちが居る部屋の後ろが女子寮になっていたからだ。
簡単に説明すると、学生寮は四階の建物になる。一階は寮長の部屋、共同風呂に学生食堂と憩いの場が設けられている。そして二階から学生寮として、各部屋ごとに分けられているのだ。二年生になれば、一人部屋が希望できるので、学年が上がれば部屋を変えることも可能だった。
大半の学生たちが部屋を移る。僕も同じように考えていたが、まさか今の部屋から移動しないとは、この時は思いもしなかった。それはまた遠い先の未来だけど。
「秋人くん、早よ言ってや。そんな勿体ぶらずに」と緑郎が手もみをしながら言う。まるでナニワの商人がお願いしてるみたいだ。
「実は俺さ、一年先輩に知り合いがいるんだけど、その先輩から教えてもらったんだ。門限が過ぎても秘密の裏口ってのがあってな。そこから出入りは自由らしいぜ」
よくある話だけど、確かに僕たちみたいな若者が門限を守るとは思えない。いつの時代も、そういう裏話的なことがあるんだなーーと心の中で思った。
「さらに女子寮へ忍び込める裏口も存在するらしいぜ」
これで秋人がニヤリとした理由がわかった。そう言えば、二人とも彼女とかいるのかな?秋人は整ったハンサム顔だから、いてもおかしくはないけど……緑郎はどうなんだろう。顔は至って普通だけど、果たしているのだろうか?
「おっしゃー!!僕も彼女作って、楽しい学生生活を満喫するで」と緑郎が興奮しながら、女子寮へ向かって叫んだ。
今の発言で緑郎は彼女なしと確定した。そういう自分はどうなんだってーーそりゃ、僕にも彼女はいなかった。でも、別に彼女が欲しくないのかと言えば欲しいかもしれない。
かもって言うのは、今すぐ欲しいかと言えば欲しくないという意味である。僕の目標は僕だけの色を見つけたい。そっちの気持ちの方が強かったからだ。
午後五時前だったので、僕たちは一度部屋に戻って駅前に繰り出そうという運びになった。緑郎がトイレに行ってくると部屋を出て行く。僕は一人、部屋に残されて何もすることがなかったので、秋人が開けっ放しにした窓から女子寮を眺めた。
あの子と同じ一年生かな?ふと頭に思い浮かべるのは、午前中に見かけたピンクのブラが印象に残る女の子だった。一瞬、頭の中で想像してしまったので股間が少しだけ反応してしまう。ブラジャーばっかりに目が行ったので、今思えばあの子の顔の記憶がない。何を勝手にエロモードのスイッチを入れてるんだと、僕は自分自身にツッコミを入れた。
その時、部屋の扉をノックして秋人が部屋に入って来た。
「あれ、緑郎は?」
「トイレに行ったけど、そろそろ戻って来るんじゃないかな」
僕は何となく、さっきの話しの続きじゃないけど秋人に彼女がいるのか聞いてみようと思った。多分、ちょっとエロい妄想をしたせいもあったのだろう。
「あのさ、秋人って彼女とかいるの?」
「唐突にびっくりするな!!俺に彼女だって、まさかいるわけないだろう!!」
意外だった。秋人なら一人や二人いてもおかしくはないのに。内心、今の発言は失礼だけど。
「四季はいるの?もしかして地元に彼女をおいてきたとか!?」
秋人の質問に一人だけ浮かぶ女子がいた。幼馴染の風子だ。彼女の場合おいてきたとかでもなく、この春から同じ大学に通う仲である。正直言って恋愛感情はない。全くもって、該当しない相手であった。でも僕の中で唯一の女友達には変わらなかった。
風子の奴、秋人なんか見たら一目で気に入りそうだな。昔から男前が好みだったし。良かったら秋人を紹介してあげようかな。でも、性格は男っぽいから釣り合わないか。勝手な想像をしながら、僕は秋人の質問に対しては……
「彼女とかじゃないんだけど、同い年で……」
プルル、プルルとリズミカルに僕のジーパンから携帯電話の着信音が鳴った。
「あっ、ごめんね」と後ろポケットから携帯電話を取り出すと、かけてきた相手の名前を確認した。
君島風子。幼馴染からの電話だった。噂をすればなんのそら……タイミング良くかけてきた風子に僕は電話を出ると。
『もしもし四季!!助けて!!今すぐ来て!!』
風子の悲痛な叫び声が耳元に聞こえるのだった。
学生寮『ピカソ』の主なルールについて説明が終わると、各自明日の始業式まで自由時間となった。
因みに学生寮のルールは以下の通りである。
①門限は男女共に午後二十時。(但し特別な理由があった場合は除く)
②学生食堂は平日の午前七時と午後十九時のみ。
③共同トイレとお風呂は各自で清掃(週一回の当番制)。
④憩いの場にあるインターネットは二十四時間使用可能。
⑤男女共に異性の連れ込みは禁止とする。
「思ったより厳しくはないな。これだけの規則なら余裕だね」と僕は秋人に言った。すると秋人はニヤリと口許を緩めて笑う。
「秋人くん、その顔つきは何か企んでる顔やな!!僕らにも教えてや」
秋人はニヤリとしたまま、僕たちの部屋に上がり込むと、窓を開けて女子寮の棟を見た。ちょうど僕たちが居る部屋の後ろが女子寮になっていたからだ。
簡単に説明すると、学生寮は四階の建物になる。一階は寮長の部屋、共同風呂に学生食堂と憩いの場が設けられている。そして二階から学生寮として、各部屋ごとに分けられているのだ。二年生になれば、一人部屋が希望できるので、学年が上がれば部屋を変えることも可能だった。
大半の学生たちが部屋を移る。僕も同じように考えていたが、まさか今の部屋から移動しないとは、この時は思いもしなかった。それはまた遠い先の未来だけど。
「秋人くん、早よ言ってや。そんな勿体ぶらずに」と緑郎が手もみをしながら言う。まるでナニワの商人がお願いしてるみたいだ。
「実は俺さ、一年先輩に知り合いがいるんだけど、その先輩から教えてもらったんだ。門限が過ぎても秘密の裏口ってのがあってな。そこから出入りは自由らしいぜ」
よくある話だけど、確かに僕たちみたいな若者が門限を守るとは思えない。いつの時代も、そういう裏話的なことがあるんだなーーと心の中で思った。
「さらに女子寮へ忍び込める裏口も存在するらしいぜ」
これで秋人がニヤリとした理由がわかった。そう言えば、二人とも彼女とかいるのかな?秋人は整ったハンサム顔だから、いてもおかしくはないけど……緑郎はどうなんだろう。顔は至って普通だけど、果たしているのだろうか?
「おっしゃー!!僕も彼女作って、楽しい学生生活を満喫するで」と緑郎が興奮しながら、女子寮へ向かって叫んだ。
今の発言で緑郎は彼女なしと確定した。そういう自分はどうなんだってーーそりゃ、僕にも彼女はいなかった。でも、別に彼女が欲しくないのかと言えば欲しいかもしれない。
かもって言うのは、今すぐ欲しいかと言えば欲しくないという意味である。僕の目標は僕だけの色を見つけたい。そっちの気持ちの方が強かったからだ。
午後五時前だったので、僕たちは一度部屋に戻って駅前に繰り出そうという運びになった。緑郎がトイレに行ってくると部屋を出て行く。僕は一人、部屋に残されて何もすることがなかったので、秋人が開けっ放しにした窓から女子寮を眺めた。
あの子と同じ一年生かな?ふと頭に思い浮かべるのは、午前中に見かけたピンクのブラが印象に残る女の子だった。一瞬、頭の中で想像してしまったので股間が少しだけ反応してしまう。ブラジャーばっかりに目が行ったので、今思えばあの子の顔の記憶がない。何を勝手にエロモードのスイッチを入れてるんだと、僕は自分自身にツッコミを入れた。
その時、部屋の扉をノックして秋人が部屋に入って来た。
「あれ、緑郎は?」
「トイレに行ったけど、そろそろ戻って来るんじゃないかな」
僕は何となく、さっきの話しの続きじゃないけど秋人に彼女がいるのか聞いてみようと思った。多分、ちょっとエロい妄想をしたせいもあったのだろう。
「あのさ、秋人って彼女とかいるの?」
「唐突にびっくりするな!!俺に彼女だって、まさかいるわけないだろう!!」
意外だった。秋人なら一人や二人いてもおかしくはないのに。内心、今の発言は失礼だけど。
「四季はいるの?もしかして地元に彼女をおいてきたとか!?」
秋人の質問に一人だけ浮かぶ女子がいた。幼馴染の風子だ。彼女の場合おいてきたとかでもなく、この春から同じ大学に通う仲である。正直言って恋愛感情はない。全くもって、該当しない相手であった。でも僕の中で唯一の女友達には変わらなかった。
風子の奴、秋人なんか見たら一目で気に入りそうだな。昔から男前が好みだったし。良かったら秋人を紹介してあげようかな。でも、性格は男っぽいから釣り合わないか。勝手な想像をしながら、僕は秋人の質問に対しては……
「彼女とかじゃないんだけど、同い年で……」
プルル、プルルとリズミカルに僕のジーパンから携帯電話の着信音が鳴った。
「あっ、ごめんね」と後ろポケットから携帯電話を取り出すと、かけてきた相手の名前を確認した。
君島風子。幼馴染からの電話だった。噂をすればなんのそら……タイミング良くかけてきた風子に僕は電話を出ると。
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風子の悲痛な叫び声が耳元に聞こえるのだった。
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