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絵画のような人魚ー08ー
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第8話
風子が満面の笑みで僕たちを出迎える。と言っても、僕と緑郎に対しては透明人間になってしまったのか全く見えていない。ろくに挨拶も交わそうとせず、秋人に向かって笑顔を振りまいていた。
こいつ、本気で惚れたな……
まあ、風子の恋がどうなろうと興味はないが、来たからにはさっさと終わらせたい。それに僕が来た理由は風子が他の子を呼んでいるからだ。僕も男だし、明日の授業より女の子と知り合うチャンスは逃したくないーーと思っていた。
「あれ?昨日より荷物増えてない」明らかに昨日見た荷物の量より増えているのに気づいた。
「そうなの。お母さんが今日の朝一に届けてくれたのよ」
僕は荷物の数を見て、これを一人で片付けるのはキツイと思った。ひょっとして、秋人目当てで呼んだわけではなさそうだ。僕たちは手分けして荷物を片付け始めた。するとしばらく経った時、部屋のチャイムが鳴って風子がインターホンのカメラに向かって対応している。僕たち男三人は自然と顔を合わせて、心の声で「いよいよ来るぞ」と目で合図をするのだった。
僕たちは急に髪を整えたり、服装を気にしたりとお互い完璧な状態にして待ち構えた。そして部屋の扉が開いて、女の子たちの声がリビングまで聞こえてきた。すると秋人が素早くリビングの扉を閉める。これは要するに、女の子を一人一人部屋に入らせるための作戦だった。
女の子を品定めするためのテクニックだろう。
そんな秋人の行動に感心しながらもリビングの扉が開いて、一人目の女の子が入って来た。
「よろしくお願いします」と声優さんみたいな声で入って来た一人目の女の子。
名前は真壁純奈。僕たちと同じように学生寮に住む同い年の女の子だ。出身は静岡県。幼い顔をした純奈は瞳が大きくて、かなり可愛い顔をしていた。いわゆるロリ顔だったが、それよりも驚いたのは小柄な体型なのに胸が大きかったからだ!!
寒い時期だったので薄着ではなかったけど、服の上からもはっきりと巨乳だとわかった。
続いて、二人目の女の子が入って来た。一人目の女の子とは違って、僕たちの姿を見てハニカミながら会釈をしてきた。
そして顔を上げた時、扉に一番近い僕と目が合うのだった。
「ピンクブラ……と思わず小さな声で呟いてしまった。
清楚な感じで化粧っけのない顔。まっすぐ僕の顔を見て、目を細くして笑った。その笑顔はあの時見た、ピンクのブラジャーを思い出させる。
改めて顔を見て驚いた。笑うと細くなる目は、普段はくっきりした二重瞼で黒目がちな瞳が印象的だった。
鮎川みゆき幼い頃から各地を転々としていたらしい。どうやら父親が転勤族で生まれは東京の葛飾区で、育ちは大分県だったり、そのあと兵庫県、神奈川県と移り渡り、最終的に岐阜県で高校時代を過ごしたという。
そしてこの春から、日本芸術大学の学生として通う。因みに彼女も学生寮に住んでいた。
僕たちはお互いに自己紹介をして、部屋の荷物を片付け始めた。秋人はすんなりと新しく知り合った女の子たちと楽しそうに会話を弾ませていた。緑郎は持ち前の明るさと笑いを混ぜながら、女の子から笑いを取っていた。僕に至っては、せいぜい合いの手を入れるのが精一杯で、それ以外は黙々と荷物を運んでいた。
これじゃあ、ただの引越し業者だ。
玄関に並べられた無造作な靴。僕はなんとなく綺麗に並べたくて、僕たちの靴と女の子たちの靴を丁寧に向きを変えて並べ直した。
「几帳面なんだね。四季くんは」
突然、背後からの声に驚いて、僕は慌てて振り向いた。
「ごめん。驚かしたかな?」
舌を出して言ってきたのはあの子だった。あの、鮎川みゆきが僕を見下ろしていた。胸の鼓動が速くなるのを感じながら立ち上がると、僕と彼女は自然と見つめ合った。すると彼女が囁き声で……
「さっきね。四季くんが呟いた声、聞こえたんだ。あれって、昨日の私を見て言ったの?」
「えっ!?な、何、き、昨日のことって!!」と思わず大きな声が出てしまう。
「そんなに焦らなくても。やっぱり見えてたんだ。そうよね、私……あの時、屈んでいたから」彼女はそれだけ言うと、リビングの方へ戻ろうと向きを変えた。
そして唖然としたまま立つ僕に向かって、顔だけ振り向いて一言……
「今日は水色の下着だよ」と悪戯っぽく呟くのだった。
玄関先で立ったまま、僕は時間が止まったようにその場で固まっていたーーーー
僕の大学生活が本格的に始まろうとするのだった。
風子が満面の笑みで僕たちを出迎える。と言っても、僕と緑郎に対しては透明人間になってしまったのか全く見えていない。ろくに挨拶も交わそうとせず、秋人に向かって笑顔を振りまいていた。
こいつ、本気で惚れたな……
まあ、風子の恋がどうなろうと興味はないが、来たからにはさっさと終わらせたい。それに僕が来た理由は風子が他の子を呼んでいるからだ。僕も男だし、明日の授業より女の子と知り合うチャンスは逃したくないーーと思っていた。
「あれ?昨日より荷物増えてない」明らかに昨日見た荷物の量より増えているのに気づいた。
「そうなの。お母さんが今日の朝一に届けてくれたのよ」
僕は荷物の数を見て、これを一人で片付けるのはキツイと思った。ひょっとして、秋人目当てで呼んだわけではなさそうだ。僕たちは手分けして荷物を片付け始めた。するとしばらく経った時、部屋のチャイムが鳴って風子がインターホンのカメラに向かって対応している。僕たち男三人は自然と顔を合わせて、心の声で「いよいよ来るぞ」と目で合図をするのだった。
僕たちは急に髪を整えたり、服装を気にしたりとお互い完璧な状態にして待ち構えた。そして部屋の扉が開いて、女の子たちの声がリビングまで聞こえてきた。すると秋人が素早くリビングの扉を閉める。これは要するに、女の子を一人一人部屋に入らせるための作戦だった。
女の子を品定めするためのテクニックだろう。
そんな秋人の行動に感心しながらもリビングの扉が開いて、一人目の女の子が入って来た。
「よろしくお願いします」と声優さんみたいな声で入って来た一人目の女の子。
名前は真壁純奈。僕たちと同じように学生寮に住む同い年の女の子だ。出身は静岡県。幼い顔をした純奈は瞳が大きくて、かなり可愛い顔をしていた。いわゆるロリ顔だったが、それよりも驚いたのは小柄な体型なのに胸が大きかったからだ!!
寒い時期だったので薄着ではなかったけど、服の上からもはっきりと巨乳だとわかった。
続いて、二人目の女の子が入って来た。一人目の女の子とは違って、僕たちの姿を見てハニカミながら会釈をしてきた。
そして顔を上げた時、扉に一番近い僕と目が合うのだった。
「ピンクブラ……と思わず小さな声で呟いてしまった。
清楚な感じで化粧っけのない顔。まっすぐ僕の顔を見て、目を細くして笑った。その笑顔はあの時見た、ピンクのブラジャーを思い出させる。
改めて顔を見て驚いた。笑うと細くなる目は、普段はくっきりした二重瞼で黒目がちな瞳が印象的だった。
鮎川みゆき幼い頃から各地を転々としていたらしい。どうやら父親が転勤族で生まれは東京の葛飾区で、育ちは大分県だったり、そのあと兵庫県、神奈川県と移り渡り、最終的に岐阜県で高校時代を過ごしたという。
そしてこの春から、日本芸術大学の学生として通う。因みに彼女も学生寮に住んでいた。
僕たちはお互いに自己紹介をして、部屋の荷物を片付け始めた。秋人はすんなりと新しく知り合った女の子たちと楽しそうに会話を弾ませていた。緑郎は持ち前の明るさと笑いを混ぜながら、女の子から笑いを取っていた。僕に至っては、せいぜい合いの手を入れるのが精一杯で、それ以外は黙々と荷物を運んでいた。
これじゃあ、ただの引越し業者だ。
玄関に並べられた無造作な靴。僕はなんとなく綺麗に並べたくて、僕たちの靴と女の子たちの靴を丁寧に向きを変えて並べ直した。
「几帳面なんだね。四季くんは」
突然、背後からの声に驚いて、僕は慌てて振り向いた。
「ごめん。驚かしたかな?」
舌を出して言ってきたのはあの子だった。あの、鮎川みゆきが僕を見下ろしていた。胸の鼓動が速くなるのを感じながら立ち上がると、僕と彼女は自然と見つめ合った。すると彼女が囁き声で……
「さっきね。四季くんが呟いた声、聞こえたんだ。あれって、昨日の私を見て言ったの?」
「えっ!?な、何、き、昨日のことって!!」と思わず大きな声が出てしまう。
「そんなに焦らなくても。やっぱり見えてたんだ。そうよね、私……あの時、屈んでいたから」彼女はそれだけ言うと、リビングの方へ戻ろうと向きを変えた。
そして唖然としたまま立つ僕に向かって、顔だけ振り向いて一言……
「今日は水色の下着だよ」と悪戯っぽく呟くのだった。
玄関先で立ったまま、僕は時間が止まったようにその場で固まっていたーーーー
僕の大学生活が本格的に始まろうとするのだった。
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