14 / 74
絵画のような人魚ー14ー
しおりを挟む
第14話
あれだけ晴れていた空に灰色の雲が集まり、あっという間に雨色の線を描いた。定規を使って引いたような綺麗な直線の雨は、大学帰りの僕に容赦無く叩いた。少しだけ遠回して帰っていたので、僕はいっときの雨宿りをしようと、寮の近くにあった神社へ逃げ込んだ。
神社の周りに生い茂る草木を見て、かなり古い神社だと思われる。しばらくやみそうにない空へ、僕は濡れた髪の毛をかきあげてはもうしばらく待ってみることにした。
時刻は午後16時……
食事会の約束は18時過ぎ、時間的には十分余裕があった。この雨も一時間もしないうちにあがるだろう。それにしても、豪雨とまでは言わないが、叩きつけるような雨は地面に無数の穴をあけていた。規則的なリズム音が聞こえる。
『自分の思うままに絵を描いてみれば、君の求める風景が見えてくるわよ』
春巻先生が僕にくれたヒントが、この言葉だった。
僕は雨を見つめながら思い返して、その答えに辿り着くには課題の絵を完成させる。そう思っていた。だけどますます何を描けば良いのか迷ってしまう。でも、鮎川さんと今度、そのことについて一緒に考えようと約束はした。僕は心の中で楽しみになっていた。鮎川さんともっと距離を縮めたい。そんな気持ちと妄想が入り混じるのだった。
それにしても雨はやみそうにない。ますます強く降る雨に、憂鬱な気分になり目に写る雨の線を無心で眺めた。空間を切り裂き、縦に入る直線的な雨は、向こう側に見える風景と僕をわける壁のようだ。
「やまないな……」と小さな声で呟いた時、向こう側の風景から走って来る人影が見えた。
目を見開き、走って来る人影を見つめる。その人影は雨の壁の突き進んで神社へと入って来た。
「鮎川さん!!」
なんと目の前から走って来た人物は鮎川みゆきだったのだ!!
ずぶ濡れになりながら神社の境内に入ると、雨宿りする僕の側へ飛び込んで来た。一瞬、僕の胸に飛び込んで来ると勘違いしてしまい、無意識に手を広げそうになった!!もちろんそんなことはせずに、僕の目の前で息を吐いて呼吸を整える彼女が居るのだった。
「最悪、ずぶ濡れだよ。天気予報では雨なんか降るって言ってなかったのに」と彼女は言って、濡れた身体を手で払いながら僕に向かって言ってきた。
「四季くんも雨宿り中」
息をつく彼女の顔に、雨の雫がポタポタと流れ落ちていた。僕の方を横目で見ながら、彼女は濡れた髪の毛をかきあげた。その仕草に僕の脈拍数があがる。今日だけで三度目の出会いだ。本当に運命だと勘違いしてしまいそうになる。
「僕はそこまで濡れなかったけど、鮎川さんはずぶ濡れだね。そのままじゃ風邪ひくよ」
「ホントだ……」と彼女はそう言って、結んでいた髪の毛のゴムを外した。
ポニーテールの印象しかなかったので、髪を下ろした彼女はずいぶんと雰囲気が変わった。小顔で黒目がちな瞳。そして艶のある長くて綺麗な黒い髪。雨に濡れた姿が妙に色っぽく見えた。水色のワンピースが雨で濡れた身体に張り付いていた。
そんな彼女の姿に、僕の胸のドキドキは激しさを増すのだった。
あれだけ晴れていた空に灰色の雲が集まり、あっという間に雨色の線を描いた。定規を使って引いたような綺麗な直線の雨は、大学帰りの僕に容赦無く叩いた。少しだけ遠回して帰っていたので、僕はいっときの雨宿りをしようと、寮の近くにあった神社へ逃げ込んだ。
神社の周りに生い茂る草木を見て、かなり古い神社だと思われる。しばらくやみそうにない空へ、僕は濡れた髪の毛をかきあげてはもうしばらく待ってみることにした。
時刻は午後16時……
食事会の約束は18時過ぎ、時間的には十分余裕があった。この雨も一時間もしないうちにあがるだろう。それにしても、豪雨とまでは言わないが、叩きつけるような雨は地面に無数の穴をあけていた。規則的なリズム音が聞こえる。
『自分の思うままに絵を描いてみれば、君の求める風景が見えてくるわよ』
春巻先生が僕にくれたヒントが、この言葉だった。
僕は雨を見つめながら思い返して、その答えに辿り着くには課題の絵を完成させる。そう思っていた。だけどますます何を描けば良いのか迷ってしまう。でも、鮎川さんと今度、そのことについて一緒に考えようと約束はした。僕は心の中で楽しみになっていた。鮎川さんともっと距離を縮めたい。そんな気持ちと妄想が入り混じるのだった。
それにしても雨はやみそうにない。ますます強く降る雨に、憂鬱な気分になり目に写る雨の線を無心で眺めた。空間を切り裂き、縦に入る直線的な雨は、向こう側に見える風景と僕をわける壁のようだ。
「やまないな……」と小さな声で呟いた時、向こう側の風景から走って来る人影が見えた。
目を見開き、走って来る人影を見つめる。その人影は雨の壁の突き進んで神社へと入って来た。
「鮎川さん!!」
なんと目の前から走って来た人物は鮎川みゆきだったのだ!!
ずぶ濡れになりながら神社の境内に入ると、雨宿りする僕の側へ飛び込んで来た。一瞬、僕の胸に飛び込んで来ると勘違いしてしまい、無意識に手を広げそうになった!!もちろんそんなことはせずに、僕の目の前で息を吐いて呼吸を整える彼女が居るのだった。
「最悪、ずぶ濡れだよ。天気予報では雨なんか降るって言ってなかったのに」と彼女は言って、濡れた身体を手で払いながら僕に向かって言ってきた。
「四季くんも雨宿り中」
息をつく彼女の顔に、雨の雫がポタポタと流れ落ちていた。僕の方を横目で見ながら、彼女は濡れた髪の毛をかきあげた。その仕草に僕の脈拍数があがる。今日だけで三度目の出会いだ。本当に運命だと勘違いしてしまいそうになる。
「僕はそこまで濡れなかったけど、鮎川さんはずぶ濡れだね。そのままじゃ風邪ひくよ」
「ホントだ……」と彼女はそう言って、結んでいた髪の毛のゴムを外した。
ポニーテールの印象しかなかったので、髪を下ろした彼女はずいぶんと雰囲気が変わった。小顔で黒目がちな瞳。そして艶のある長くて綺麗な黒い髪。雨に濡れた姿が妙に色っぽく見えた。水色のワンピースが雨で濡れた身体に張り付いていた。
そんな彼女の姿に、僕の胸のドキドキは激しさを増すのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる