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絵画のような人魚ー19ー
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第19話
僕らは女子二人に手を振って別れると、男子寮と女子寮へ別れた。芸術論を語っていた緑郎だけが満足気に部屋まで真っしぐらに戻った。
案の定、秋人が居なくなっていることに気づいていない。僕はお風呂に入って来ると告げて、お風呂セットを手に持ち部屋を後にした。
学生寮の廊下は節電の為か、薄暗く各部屋から物音だけが聞こえていた。僕は一階に降りる階段を下りながら、途中にあった窓へふと視線を移した。そこからは丁度、女子寮の玄関が見えるのだ。僕はなんとなく立ち止まって、鮎川みゆきの顔を思い浮かべた。もっと彼女のことが知りたかったし、聞きたいことが沢山あった。
秋人のように積極的だったらと、なかなか踏み込めない自分が情けなかった。そう言えば、彼女の電話番号さえ知らなかった。小さな溜め息をして、僕はもう一度女子寮の玄関を見た。その時、視線の先に鮎川みゆきの姿があった!!
「えっ!!鮎川さん!!」一瞬、幻かと思ったが紛れもなく、鮎川みゆきが玄関先から出て来ていた。
僕は窓に近づいて、もう一度確認をした。すると女子寮の玄関先からこちらが見えたのか、鮎川みゆきが笑顔で手を振ってきた。僕は身振り手振りで慌ててリアクションをする。そしたら彼女がもう一度手を振って、僕のことを呼ぶ動作をした。
僕は頷いて、慌てて階段を駆け下りると一階のフロアーを走って玄関へ急いだ。扉を引くと幸いにも、まだ施錠はされていない。僕はサンダルのまま外へ飛び出すと、女子寮の方へと回った。前から彼女も小走りで来て、僕たちは夜空の下で会った。
「良かった。四季くんに会えたよ。もしかしたら会えるかなって思ったら、ホントに四季くんの姿があったの!!」と彼女が興奮しながら言ってきた。月明かりに照らされた彼女の瞳が魅力的に光った。
「でも、どうして?何で僕に会いたいと思ったの!?」
「もっと話したかったの。四季くんの声が聞きたいって、私の色が感じたの。そしたらいてもいられなくなって」
彼女の説明に僕は嬉しくて、その場で想いを伝えたくなった。でもそんな勇気はなくて、照れながら「僕の方こそ……」と小さな声で言うのが精一杯だった。
「四季くん、良かったら来週美術館に行かない?」
「美術館?」
「ほら、アートの集いの活動。今、上野の美術館でシャガールの展覧会をしているの。四季くんがオリーブで好きな画家をシャガールって話していたから」
確かに話していたけど、その話は真壁さんとの会話だった。なのに彼女は聞いていたんだ。これって完全に僕が気になっているんじゃ……
「もちろん行くよ。鮎川さんとならどこへでも行くから」と思わず本音が出る。すると彼女は目を細くして笑った。その笑顔は誰よりも可愛く見えた。
「あと、四季くんの電話番号知らないから教えてくれる?」彼女に言われて、おもむろにポケットの中を探すが、さっき部屋に戻った時、置いてきたのを思い出した。
「だと思った。その格好をみたらそうだもんね。それじゃあ、私の番号を書いたメモを渡すから登録しといてね」
風呂桶にジャージ姿の僕に彼女は笑いながら、番号が書いているメモを手渡した。メモにはアドレスも書いてあったので、僕は寮に戻ったらすぐにメールを送ろうと考えた。
月明かりの下、彼女と話しながら、僕は青春のど真ん中を走っていると感じていた。こんなにも嬉しかった日はなかった。願わくば、彼女のそばにずっとずっと居たいと思った。
そんな僕の願いは、信じられない展開で訪れることになるのだった。
僕らは女子二人に手を振って別れると、男子寮と女子寮へ別れた。芸術論を語っていた緑郎だけが満足気に部屋まで真っしぐらに戻った。
案の定、秋人が居なくなっていることに気づいていない。僕はお風呂に入って来ると告げて、お風呂セットを手に持ち部屋を後にした。
学生寮の廊下は節電の為か、薄暗く各部屋から物音だけが聞こえていた。僕は一階に降りる階段を下りながら、途中にあった窓へふと視線を移した。そこからは丁度、女子寮の玄関が見えるのだ。僕はなんとなく立ち止まって、鮎川みゆきの顔を思い浮かべた。もっと彼女のことが知りたかったし、聞きたいことが沢山あった。
秋人のように積極的だったらと、なかなか踏み込めない自分が情けなかった。そう言えば、彼女の電話番号さえ知らなかった。小さな溜め息をして、僕はもう一度女子寮の玄関を見た。その時、視線の先に鮎川みゆきの姿があった!!
「えっ!!鮎川さん!!」一瞬、幻かと思ったが紛れもなく、鮎川みゆきが玄関先から出て来ていた。
僕は窓に近づいて、もう一度確認をした。すると女子寮の玄関先からこちらが見えたのか、鮎川みゆきが笑顔で手を振ってきた。僕は身振り手振りで慌ててリアクションをする。そしたら彼女がもう一度手を振って、僕のことを呼ぶ動作をした。
僕は頷いて、慌てて階段を駆け下りると一階のフロアーを走って玄関へ急いだ。扉を引くと幸いにも、まだ施錠はされていない。僕はサンダルのまま外へ飛び出すと、女子寮の方へと回った。前から彼女も小走りで来て、僕たちは夜空の下で会った。
「良かった。四季くんに会えたよ。もしかしたら会えるかなって思ったら、ホントに四季くんの姿があったの!!」と彼女が興奮しながら言ってきた。月明かりに照らされた彼女の瞳が魅力的に光った。
「でも、どうして?何で僕に会いたいと思ったの!?」
「もっと話したかったの。四季くんの声が聞きたいって、私の色が感じたの。そしたらいてもいられなくなって」
彼女の説明に僕は嬉しくて、その場で想いを伝えたくなった。でもそんな勇気はなくて、照れながら「僕の方こそ……」と小さな声で言うのが精一杯だった。
「四季くん、良かったら来週美術館に行かない?」
「美術館?」
「ほら、アートの集いの活動。今、上野の美術館でシャガールの展覧会をしているの。四季くんがオリーブで好きな画家をシャガールって話していたから」
確かに話していたけど、その話は真壁さんとの会話だった。なのに彼女は聞いていたんだ。これって完全に僕が気になっているんじゃ……
「もちろん行くよ。鮎川さんとならどこへでも行くから」と思わず本音が出る。すると彼女は目を細くして笑った。その笑顔は誰よりも可愛く見えた。
「あと、四季くんの電話番号知らないから教えてくれる?」彼女に言われて、おもむろにポケットの中を探すが、さっき部屋に戻った時、置いてきたのを思い出した。
「だと思った。その格好をみたらそうだもんね。それじゃあ、私の番号を書いたメモを渡すから登録しといてね」
風呂桶にジャージ姿の僕に彼女は笑いながら、番号が書いているメモを手渡した。メモにはアドレスも書いてあったので、僕は寮に戻ったらすぐにメールを送ろうと考えた。
月明かりの下、彼女と話しながら、僕は青春のど真ん中を走っていると感じていた。こんなにも嬉しかった日はなかった。願わくば、彼女のそばにずっとずっと居たいと思った。
そんな僕の願いは、信じられない展開で訪れることになるのだった。
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