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絵画のような人魚ー20ー
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第20話
青春はいつだって心の中にある。人は大人になっても心の奥底に青春という色を持っているんだよ。
その色を伸ばそうとするのは自分次第。塗り替えるのも自分次第。色んな色合いがきっとあるはず。気持ちの絵の具はきっと無限に広がっていく。
美しく輝く月が雲間に隠れると、僕らは自然に話を終えた。薄暗い道を並んで歩く。彼女は玄関先で「おやすみなさい」と、僕は笑顔で言葉を返した。彼女の後ろ姿に気持ちが昂ぶった。もっと一緒に居たいと。抑えきれない気持ちが溢れていた。
しんとした空気の中、玄関の扉がガチャンと乾いた音を鳴らした。
「嘘!?閉まってる!!」と彼女が無意識に言うと、後ろを振り返って僕の顔を見た。イマイチ状況がわかっていない僕へ、彼女は腕時計を見て困った顔になった。
「どうしよう……夢中で話してたら門限が過ぎてた」
彼女の言葉にようやく理解して、彼女のそばに行って玄関の扉を引いた。ガチャン、ガチャンとさっきと全く同じ音が聞こえた。そんな光景に僕と彼女は顔を合わせた。瞬間的に、僕は男子寮へと走り出した。まさかと思ったが、予想通り男子寮の扉も施錠されていた。僕は彼女の元へ戻ると、状況を説明して謝った。
「別に四季くんが謝らなくても良いよ。二人とも夢中だったんだから仕方がないでしょう」
「どうしよう……」と僕は呟き、携帯電話を部屋へ置きっ放しにしたことを後悔した。
「鮎川さんは真壁さんに連絡して、中から開けてもらえば良いよ」
「でも、四季くんはどうするの?部屋に携帯を忘れたんでしょう。それに私は裏口から中へ入れるから大丈夫だけど」
「裏から!?」
僕は思い出した。おとつい、秋人が話していたことを。確か女子寮には秘密の裏口があると。男子寮にも存在していたけど、あの時、僕はその場で聞かなかった。きっと僕には必要のないことだと思っていたから。
「私、緑郎くんの番号知らないし、純奈が知ってると思うけど。こんな時間まで四季くんと会っていたなんて知ったら、純奈が……」
彼女の言葉に、僕はなんとなく意味がわかった。恐らくだけど、真壁さんは僕に対して好意を持っている。彼女はその事を言いたいのだろう。空気を読んで、僕は問題ないと伝えた。いざとなったらコンビニでも行って、時間を潰せばいい。
とは言っても、明日の朝までかなり時間はあった。しかも、格好が格好だけに……
「四季くん、ちょっと待って!!そんな格好じゃ風邪引くよ」と立ち去ろうとする僕に、彼女が声をかけてきた。
「大丈夫だよ。風子のマンションへ行くから。あいつだったら泊めてくれる。ただの幼馴染みだしね」
「ダメでしょう。だって風子ちゃんのマンションには秋人くんが……」
「えっ!?知ってたの!!」
「わかるわよ。二人が抜けたことぐらい。純奈だって気付いているわよ」
さすが女子たち。あの時、さらっと別れたつもりがしっかり目撃されていたんだ。気付いていないのは緑郎だけだった。
「でも、一日ぐらい何とかなるよ。心配しないで」僕はそう言って、その場から立ち去ろうとした。
「だから、四季くん……」
彼女が突然、僕の腕を掴んで歩こうとする僕を引き止めた。
ーーーー「静かにね」と彼女が小声で言う。その後ろをついて歩くのは僕。まさかの展開になってしまったのだ!!
門限を超えて、男子寮から締め出された僕に、彼女はなんと女子寮に連れて行った。裏口からそっと侵入して、僕は今夜、彼女の好意によって泊めて頂くことになったのだ。女子寮の独特な雰囲気と匂いに、僕の胸はバクバク鳴り響いていた。
青春はいつだって心の中にある。人は大人になっても心の奥底に青春という色を持っているんだよ。
その色を伸ばそうとするのは自分次第。塗り替えるのも自分次第。色んな色合いがきっとあるはず。気持ちの絵の具はきっと無限に広がっていく。
美しく輝く月が雲間に隠れると、僕らは自然に話を終えた。薄暗い道を並んで歩く。彼女は玄関先で「おやすみなさい」と、僕は笑顔で言葉を返した。彼女の後ろ姿に気持ちが昂ぶった。もっと一緒に居たいと。抑えきれない気持ちが溢れていた。
しんとした空気の中、玄関の扉がガチャンと乾いた音を鳴らした。
「嘘!?閉まってる!!」と彼女が無意識に言うと、後ろを振り返って僕の顔を見た。イマイチ状況がわかっていない僕へ、彼女は腕時計を見て困った顔になった。
「どうしよう……夢中で話してたら門限が過ぎてた」
彼女の言葉にようやく理解して、彼女のそばに行って玄関の扉を引いた。ガチャン、ガチャンとさっきと全く同じ音が聞こえた。そんな光景に僕と彼女は顔を合わせた。瞬間的に、僕は男子寮へと走り出した。まさかと思ったが、予想通り男子寮の扉も施錠されていた。僕は彼女の元へ戻ると、状況を説明して謝った。
「別に四季くんが謝らなくても良いよ。二人とも夢中だったんだから仕方がないでしょう」
「どうしよう……」と僕は呟き、携帯電話を部屋へ置きっ放しにしたことを後悔した。
「鮎川さんは真壁さんに連絡して、中から開けてもらえば良いよ」
「でも、四季くんはどうするの?部屋に携帯を忘れたんでしょう。それに私は裏口から中へ入れるから大丈夫だけど」
「裏から!?」
僕は思い出した。おとつい、秋人が話していたことを。確か女子寮には秘密の裏口があると。男子寮にも存在していたけど、あの時、僕はその場で聞かなかった。きっと僕には必要のないことだと思っていたから。
「私、緑郎くんの番号知らないし、純奈が知ってると思うけど。こんな時間まで四季くんと会っていたなんて知ったら、純奈が……」
彼女の言葉に、僕はなんとなく意味がわかった。恐らくだけど、真壁さんは僕に対して好意を持っている。彼女はその事を言いたいのだろう。空気を読んで、僕は問題ないと伝えた。いざとなったらコンビニでも行って、時間を潰せばいい。
とは言っても、明日の朝までかなり時間はあった。しかも、格好が格好だけに……
「四季くん、ちょっと待って!!そんな格好じゃ風邪引くよ」と立ち去ろうとする僕に、彼女が声をかけてきた。
「大丈夫だよ。風子のマンションへ行くから。あいつだったら泊めてくれる。ただの幼馴染みだしね」
「ダメでしょう。だって風子ちゃんのマンションには秋人くんが……」
「えっ!?知ってたの!!」
「わかるわよ。二人が抜けたことぐらい。純奈だって気付いているわよ」
さすが女子たち。あの時、さらっと別れたつもりがしっかり目撃されていたんだ。気付いていないのは緑郎だけだった。
「でも、一日ぐらい何とかなるよ。心配しないで」僕はそう言って、その場から立ち去ろうとした。
「だから、四季くん……」
彼女が突然、僕の腕を掴んで歩こうとする僕を引き止めた。
ーーーー「静かにね」と彼女が小声で言う。その後ろをついて歩くのは僕。まさかの展開になってしまったのだ!!
門限を超えて、男子寮から締め出された僕に、彼女はなんと女子寮に連れて行った。裏口からそっと侵入して、僕は今夜、彼女の好意によって泊めて頂くことになったのだ。女子寮の独特な雰囲気と匂いに、僕の胸はバクバク鳴り響いていた。
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