絵画のような人魚

葉桜色人

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絵画のような人魚ー43ー

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第43話


普段、飲まないお酒で思考回路に誤作動が起きたのか?こんな場所に連れて来るべきじゃなかったんだ。

僕はあとで後悔をした。

そして自分がにずっと苦しむんだ。


缶ビールを半分ぐらい飲んだ時、その美味しさは全くなかった。普段から飲まないし、強くもなかったからだ。ただ単に、飲むという行為だけが繰り返されているようだった。

彼女は珍しそうに神社の中をウロウロ歩いていた。そして僕の横に座ると、そばにあった雑誌に手を伸ばした。ワンピースの胸元が開いて、彼女の谷間が丸見えになった。それを見ては缶ビールに口をつけて、僕はアルコールを身体に流した。


「これって四季くんが買ったの?」とアルバイト雑誌を手にして、彼女が距離を縮めるように側に寄った。


「家の仕送りだけじゃ生活が苦しいから。元々、バイトする予定だったんだ。でもすっかり忘れてて」


「そう言えば、四季くんってどこの出身だっけ?聞いてなかったような気がする。私、あんまり風子ちゃんと会わないから」


「言ってなかったかな……?田舎だよ。あまり実家には戻りたくないんだ」と思わず口にする。すると彼女は無言で僕を見つめてきた。


「親と仲が悪いの?」と彼女が気を使うような表情で聞く。


多分、シラフの僕だったら話さないだろう。でも今夜の僕はお酒も入っていた。それに少しだけ寂しげな色が心に滲んでいたんだ。


「親は両方ともいない。五歳上の姉が一人で実家に住んでる。だから仕送りも少ないし、迷惑をかけたくないから……」それ以上の言葉は続けなかった。僕は心の中に気持ちを閉まって、もう一度、缶ビールを飲んだ。


「ごめん。何か嫌な事聞いたよね。私……」と僕の腕に手をおいて彼女は言った。


一瞬、僕はドキッして俯いた。


「真壁さんは悪くないよ。僕の問題だから気にしないで」


それ以上、彼女は何も聞かなかった。そしておいた手を僕の太ももに添えて、小さな声で話し続けた。


「四季くん、こないだ二面性の話しをしたよね。覚えてる?」


「……うん」


「私にも裏の顔があったとして、それを知ったら、四季くんは私から離れるかな?」


「どうかな。誰にだって裏の顔はあると思うよ。僕だって自分の色が」瞬間的に胸が苦しくなった。閉じ込めていた心の色が滲むようだ。


二人とも無言になると、薄暗い部屋に沈黙が漂った。


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