絵画のような人魚

葉桜色人

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絵画のような人魚ー74ー

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僕に話しかけてきた秋人を見て、僕はその場で凍りついた。何が起きたのか理解できないでいる。これは、これは何なのか!?

まるで鉛筆で描いたような秋人が立っていた。その周りの人たちも同じように鉛筆で描いた鉛色の線なのだ!!


「あ、だ、大丈夫」


連続で瞬きをした瞬間、デッサンで描かれた秋人は戻って、周りの人たちも風景も元の世界に戻っていた。今のは幻覚?夢中で集中していたから?訳がわからない。僕は戸惑いながら、自分で描いたデッサンを見た。


「えっ!?なんで!!」


デッサン力に関しては自信があった方だ。でも僕が描いたデッサンはおかしかった。どうしてこんな風に描いてしまったんだ?


「やっぱり!!君も私と同じ世界に入り込んだのね」


後ろからの声に振り返ると、一人の女性が立って、僕を見つめていた。


「そのデッサンを見たらわかるわ。風景がデッサンみたいに見えたんでしょう。違う?」


「えっ、なんでわかったんですか?あなたはご存知なんですか?僕に見えた風景を……」


「わかるかわかんないか?それはどっちでも良いんじゃない。それでも知りたかったら教えてあげるわ」と女性は口角を上げながら言った。


「あっ、始まるみたいよ。それじゃあ授業が終わったらね」女性はそれだけ告げると、僕のそばから離れて自分の席に歩いて行った。


僕に起きた不思議な現象を、あの人は知っている。そして同じ世界に入り込んだと。


それから午後のヌードデッサンが開始されたが、頭の中ではさっき見えた風景のせいで、授業に集中ができないまま過ぎて行った。


「それではこれにてヌードデッサンを終了します。各自、デッサンしたものを提出して下さい」


講師の話も聞かないまま、僕は話しかけられた女性を探した。秋人が声をかけてきたが、僕はバイトに行くからと言って、早足で教室を出るのだった。


「おい、四季!!」と秋人の声が聞こえたが、振り切るように教室を出て行くと女性の姿を探した。


確かデニムのパンツにチョックのポロシャツ姿だった。かすかに覚えていた格好を思い出しながら、僕は廊下を行き交う人々の群れを見渡した。すると丁度、曲がり角を歩く姿を発見した。僕は急いで追いかけて、曲がり角を曲がった。


「待ってたわよ」と女性が壁にもたれながら待ち構えていた。名前も知らない女性が……


「少しお話しましょうか?胡桃四季くん」


彼女は何者だ!?


この出会いによって、僕の人生は大きく左右されるのだった。


つづく……
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2016.10.26 ユーザー名の登録がありません

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