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第1章

6話

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 蛇とアリと鳥の三つ巴の争いから2日が経った。
 その後、蛇とアリの両軍は睨み合いのような状態に陥っていた。
 というのも、三つ巴の争いで出たアリの死骸がかなりの量があったため、それに群がるように草原にいた全ての蛇が集まったかのような数に——数十匹と——なり、アリは下手に手を出せなくなっていたいて、蛇も無理してアリを倒さなくても十分な量の食料なアリの死骸があったためだった。
 傷ついて飛べなくなった鳥については、トカゲはどうなったか知らなかったが、あの後、他のアリたちに襲われ命を落としていた。
 そんな中、トカゲはというと、蛇たちに混じってアリの死骸を食べていたのだが、2日も経つと大量にあったアリの死骸も残り僅かとなり、蛇に追いやられてしまい、自力で餌を確保しなければならなくなった。
 ただ、それまでの間に、かなりの数のアリの魔石を食べていたため、さらに体は大きくなり、1mを超えるほどまで成長していた。
 もちろん、ただ単に体が大きくなっただけではなく、皮が厚くなり爪が伸び、そして、牙が生えてきた。
 その影響か、以前よりも余裕が見られるようになった。
 というのも、今のトカゲならば、体の小さい——2m未満の——蛇1匹ならば倒せる程の力を得ていた。
 なので、蛇たちに追いやられても焦ることはなく、のんびりと餌を探しに歩いていた。






 場所は変わり、以前トカゲと遭遇した童女のリリィの住む村では、アランが口にした不安が的中してしまった。

「くそ、また出たのか」

 アランはそういうなり、腰に差していた剣を抜き、草原から飛び出してきたビッグアントへ振り下ろす。
 アランが振り下ろした剣は、素人目から見ても鋭く、ビッグアントの頭を綺麗に真っ二つにする。
 頭を二つに割られたビッグアントは、しばらくの間動いていたが、力尽きたのか動きが止まる。
 完全に動きが止まったことを確認したアランは、剣を鞘にしまう。

「全く。これでは、危なくて子供は家から外に出せないな」

 アランがそういうのも無理はない。
 まだ昼前だというのに、草原から現れたアリの数は、数十匹と登り、そのうちの10匹近くの数をアランが仕留めていた。
 唯一の救いは、日が沈んでいる間はアリが村には現れない、ということだろう。

 だからこそ、今のところなんとかなっているが、それもいつまでもつのか。
 村長が冒険者ギルドに依頼を出したそうだが、冒険者が来る前にこの村が滅んでしまうかもしれない。
 いっそのこと、俺たちが草原に出て、ビッグアントの巣を潰しに行くか?

 そう考えたが、すぐさま否定する。

 ダメだ。そうすると、村を守る者が足りなくなる。
 今でさえギリギリなのに、ここから人数を割いては村に被害が出る。
 多分、ビッグアントの巣を潰すよりも、アリに襲われる確率の方が高い。
 となれば、やはり冒険者が来るのを待つしかない。

 アランは、そう考えた。
 その後も、アランは村人たちと一緒に草原から現れるアリたちを退治し、昼を少し過ぎた頃、待望の冒険者たちが村に訪れた。
 村に訪れた冒険者は、以前トカゲが見かけた4人組の冒険者たちだった。
 冒険者たちは、村にたどり着くなり村長の家に案内され、村長と話となった。

「なるほどな。草原の方からビッグアントが現れている、と。で、その原因を突き止め排除すればいいんだな?」

「はい、その通りですじゃ。現在もかなりの量のアリたちが村にやってきて、村の者もそれを倒すのがやっと、といったところですのう」

「まあ、アリの巣を潰すのはそう難しいものじゃないが、もし、アリたちを追いやっている者がいるとしたら厄介だな」

「ですね。単独なのか、それとも複数なのかはわかりませんが、追いやれることができるとなれば、アリたち以上の力を持っている、ということになりますからね」

「と、言いますと?」

「その場合は、その追いやっている者がどれくらいの力を持っているか調べてことになる。俺たちで対処できるならいいが、無理そうならば、援軍を呼ばなければならない。その分料金が掛かるが、村長、大丈夫か?」

「……仕方がありませんのう。村の存続に関わることですじゃ。何とかして工面しましょう」

「ならば、早速向かうとしよう。行くぞ」






 その頃、トカゲはというと、目に入ったアリを見つけては、襲いかかり食らっていた。
 もちろん、アリたちも反撃をしていたのだが、トカゲはアリに噛み付かれて平然としており、アリの攻撃が全く通っていないことがわかる。
 トカゲは、体のあちこちをアリに噛み付かれながらも、他のアリを襲い食らっていく。
 すると、アリたちは文字通りに歯が立たないことがわかると、トカゲに噛み付いているアリを残して、逃げいく。
 トカゲは、逃げたアリを追うことはせず、自分の体に噛み付いているアリを引き剥がしては、食らうことにした。
 食らう場所は、魔石のある胸部のみだけで、他の部位は残していた。
 そして、体に噛み付いていた全てのアリを喰らい終わると、十分に腹が膨れたのでその場に伏せて休み始める。
 この時トカゲは、少し前では脅威と感じていたアリが、ただの餌でしかないと思った。
 そして、アリは大量にいるので、餌に困ることはないだろう、とも。
 今、この場所で脅威となるのは蛇と鳥くらいだろう。
 しかし、今のトカゲにちょっかいを出せば、タダでは済まないことは蛇と鳥たちは理解している。
 トカゲに手を出すくらいならば、それよりも弱いアリやスライム、虫などを食らえば十分である。
 だからだろう。
 トカゲは、危険はないと判断しそのまま眠りへと落ちていった。
 事実、地面の上に寝ているトカゲを目にしても、蛇や鳥は手を出そうとはしなかった。
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