精霊召喚したら、幼女の精霊を召喚してしまいました

アロマサキ

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第2章

水の精霊 シウネ

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「遅いですよ……ポンコツ主」



 目の前に現れた少女は僕を見て、不満そうな表情でこう言った。

 アクアブルー、という言葉が似合うほど綺麗な水色の髪を、頭の右側でまとめている、その髪よりも少しだけ濃い色の青い瞳。
 そして、やはり僕の呼び出す精霊は皆こうなのか、小学生の低学年くらいの身長で、アグニルよりは少し大きいぐらいしか背丈はない。
 だけど他の三人とは違う点が一つある、それは体格には似合わない大きな胸だ。
 大人よりは……いや、大人の平均よりも大きい胸よ彼女、C、いやDはある。

 

「……何見てるんですか、変態ポンコツ主」



 僕の心の中を見透かしたのか?
 と思うぐらいに嫌そうな目で僕を見てくる彼女。

 だけど僕だって彼女には文句がある。
 床を水浸しにさせ、僕達の服は水分を吸って重くなっている。
 まあ、僕が呼び出したから彼女だけが悪いわけではないのだけど。

 そんな中、水浸しになったアグニルが驚いたような表情をしながら口を開く。



「シウネだったんだ、久しぶりだね、元気だった?」

「久しぶりねアグニル、まあ元気よ。それより、まさか本当にあなた達みたいに体が小さくなるなんて……少しショックだわ」



 驚くアグニルとは対照的に、頭の中で聞こえていた声と同じく静かで落ち着いた声のシウネ。
 おそらく、彼女もアグニルやエンリヒートのように元は大人だったのだろう、自分の体を見て、少しがっかりしている。
 その様子を見ていたエンリヒートは笑いながらシウネの肩に手を乗せた。



「体は小さくなったが……相変わらずでけぇ胸だな?」

「これでも小さくなったわ……。もう少し小さくなってくれた方が嬉しいんだけど」



 胸が大きい人はよく肩を凝ると言う、彼女もその悩みを抱えているのだろう。
 エンリヒートの大人の姿を見た事がある、だから彼女も笑っていられるのだろう。

 だけどその言葉を聞いた瞬間、エンリヒートの胸よりも小さい胸の二人が豹変した。



「じゃあその胸をくれ! 主様は胸の大きい女が好きなんだ!」

「そうです! その胸があれば主様を誘惑できるのに……いらないならくださいよ!」

「いやいや、二人とも何を言ってるの!?」

「じゃあ主様、私達の胸とシウネの胸、どちらがいいですか!?」



 胸を張る二人と、冷たい目線を送ってくるシウネ。
 だが、少しだけ両腕で胸を寄せているように見えるのは気のせいか?



「……変態な目で見ないでください、ポンコツ変態主」



 うん、どうやら気のせいみたいだ。

 どちらの胸がいいかと言われてもな……別に二人の胸は全く無いわけではない、ただ膨らんでないだけだ。
 だけどそれを言ってしまうと……。



「僕は……どっちも好きかな?」

「……主様、逃げたな?」

「やっぱり変態ですね、ポンコツ主は」

「いやいや……。それよりこの部屋をなんとかしようよ!」



 そう、別に誤魔化したわけではない。

 現に今も水が滴っていて、ドアの隙間から外に流れている状態だ。

 アグニルとカノンは「まあ、わかりました」と渋々言うことを聞いてくれて、エンリヒートとシウネも手伝ってくれた。

 それから一時間が経ち、ようやく水は無くなって、僕達はテーブルを囲って座った。
 元々敷かれていた絨毯《じゅうたん》は洗濯してしまっているため、座る足が痛い。



「それじゃあシウネ、君は水の精霊って事でいいのかな?」

「そうですよ、ポンコツ主」



 相変わらず口が悪いシウネ、それを見てカノンが、



「ちょっと、主様に向かってポンコツとは何ですか、ポンコツとは!」

「……ポンコツにポンコツと言って何が悪いのですか?」

「主様はポンコツじゃないぞ! まあ、少し抜けたとこはあるがな!」



 エンリヒートは笑って言った。
 ……エンリヒート、それはフォローじゃないぞ。
 でもまあ、なんだろう、ポンコツと言われすぎたからなのか、今ではなんとも思わなくなってきてしまった自分がいる。

 そして、言い合ってる三人を見ながら、アグニルは静かに言った。



「シウネ、これ以上言うのだったら私達にも考えがあるよ」

「……何を、ですか?」
 


 少し脅えたシウネは聞いた。
 どんな考えがあるというのか。
 アグニルは皆に聞こえるように言う。 



「シウネの事を無視します」



 アグニルの言葉を聞いて、エンリヒートとカノンはにっこりと笑う。

 無視をする? 少し幼稚な話だが、シウネは見た事ないほど悲しそうな瞳をみせる、まあ、アグニルの言う事を聞いてみるか。

 そんな皆の表情を見て、シウネは悲しそうな声を出す。



「まさか、本当に無視しないですよね?」

「……主様、何か飲み物でも飲みますか?」

「えっ、ああそうだね。何か飲みたいのある?」

「あっ私が持ってきますよ? 皆さん何がいいですか?」



 カノンは立ち上がり冷蔵庫を開ける。
 アグニルはいつもどおり「牛乳」と答え、僕とエンリヒートは「アイスコーヒー」を注目する。
 そしてシウネは囁くような小さな声で「……ホットコーヒー」と注目した。

 そして、カノンは飲み物を持ちながらニコニコと笑い、その飲み物をテーブルに置いた━━四人分の。



「じゃあ、乾杯でもしましょうか」

「……私のが、無い。私のが無いんですけど!」

「「「 じゃあ乾杯! 」」」 

「私は……私も乾杯」



 何に? と聞くのは、この流れでは愚問か。
 僕達四人はグラスをコツンと鳴らし、飲み物を飲む。

 そして何も持っていない彼女は泣いた、盛大に声を出しながらだ。



「うわぁぁん、なんで無視するの、無視しないでよ!」

「シウネ……主様を馬鹿にしないと約束するなら、私達は無視を辞めてあげてもいいよ?」

「しない、もうしないから、だから無視しないで!」

「えっと……これは何?」

「シウネは人の事をわざと悪く言って、かまってもらおうとする悪い癖があるんです。だからかまってもらえないとこうやってすぐに泣くんですよ、理想郷《シャングリラ》で一緒にいた頃もそうでしたから……」



 三人は呆れた表情をしながら、子供のように泣いているシウネを見ている。
 どうやらポンコツと呼んだり、棘のある言葉を使うのは、誰かにかまってもらいたいからしたらしい。

 まあ、なんとも典型的なかまってちゃんだな。



「シウネ……少しやり過ぎたよ、ごめんね? でも、僕は君と仲良くなりたいんだ、だから、ねっ?」

「あるじ……さま」



 僕は泣いている彼女の頭を撫でた。
 シウネは嬉しそうにしながら僕の事を皆と同じように主様と呼んだ。

 そのすぐ後にエンリヒートは笑いながら、



「あらら、もう惚れられちゃったか……主様、これからが大変だぜ?」

「えっ? 何が?」

「かまってちゃんのシウネに惚れられたらさ。下手したら恋を初めて知ったカノンよりもめんどくさくなるぜ?」

「なっ! 私がいつめんどくさい事をしましたか!?」

「いや、あの時のカノンはめんどくさかったぜ? 二人は私とアグニルのように大人じゃないからな、そんなカノンとシウネに挟まれて……これからが面白くなりそうだな、主様!」



 カノンは顔を赤くさせながらアグニルとエンリヒートに反抗する。
 エンリヒートが何を言っているのかわからなかったが「まっそのうちわかるぜ」と親指を立てたエンリヒートは自信満々だった。

 そしてドアをノックする音が聞こえ、扉が開いた。
 そこにはここまで運転してくれた男性が立っていた。



「如月さん、本部まで一緒に来てもらっていいですか? これからの作戦の内容で少しお話が……」
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