精霊召喚したら、幼女の精霊を召喚してしまいました

アロマサキ

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第2章

リドーニャ捜索 2

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 周りでは皆が戦っている、だけど僕とエンリヒートとカノンは陸地を走っていた。

 かっこよく出てきたはいいが、いったい何処から探せば良いのか、そもそもこの地域には詳しくないから、今自分達が何処を走っているのかすらわからない。
 正直お手上げ状態だった。



「いやいやー、何処にいるか全くわからないな」

「そうだね、そもそも僕達はリドーニャの特徴しかわからないからね」

「はい、私の霊力術には捜し物を見つけるような便利な術は無いですからね」



 二人も困った様子、手掛かりすら見つけられないまま時間だけが過ぎていく中、僕はこういうのに向いてる人物を思い出した。



「そういえばカノン、雫にも精神感応《テレパシー》を使えるようにしてたよね?」

「はい……あっそうですね! あの精霊なら」



 カノンは少し経ってから気付く。
 エンリヒートは全く気付いていないのか、ポカンとした表情で僕とカノンを見ている。

 雫はボートに乗っている時に麻帆の居場所を見つけてくれた。
 彼ならきっと見つけてくれるかもしれない。



『雫? 聞こえる?』

『……えっ? 如月さんですか!? びっくりした、どうしたんですか?』

『雫に頼みたい事があるんだけど、今大丈夫かな?』

『はい、自分達は車で移動中なので大丈夫ですよ!』



 少し驚いていたが、移動中ということでゆっくりしているみたいだ。



『リドーニャっていう重力の精霊を見つけてほしいんだ、大きさが僕の手ぐらいって事しか情報は無いんだけど……どうかな?』

『リドーニャですね……わかりました。少し時間を貰ってもいいですか?』

『うん。よろしくね』



 雫は『わかりました』と言って話をするのを止めた。

 それから五分程してから、再び雫の声が聞こえた。



『如月さん?』

『ああ、聞こえてるよ。それでどうだった?』

『そのリドーニャという精霊の場所はわからなかったんですけど、その精霊の召喚士だと思われる者の居場所ならわかりましたよ』

『本当に!? ありがとう助かるよ』

『じゃあこのまま目的地まで誘導しますね!』



 おそらく精霊と召喚士は同じ位置にいるだろう、なら召喚士の居場所さえわかればそれで十分だ。
 雫からの指示を受け、僕達三人は言われた方向へと向かう。



『そこです! その洞窟の中です!』

『……ここが』



 海岸沿いにある洞窟、それも見晴らしの悪い離れた場所だ。
 ここにいるのか? そう思ったが中には動く光が見える、中に誰かいる、そう思って二人の方を見る、エンリヒートは既に炎を纏った日本刀を手に持っていて、カノンは僕の隣にくっついている。



『……ありがとう雫、それじゃあ中に入るから』

『あっちょっと待って下さい、中に他の人も何人かいるみたいですね、気を付けてください』

『そうか……わかったよ、ありがとう、それに柚葉の事、よろしくね』

『……お任せ下さい!』



 安全なとこにいるかもしれない、それでも、精霊を召喚できない妹の事は心配だ。
 雫に柚葉の事を任せ、僕達は洞窟の中に入る。

 洞窟の中は少し下り坂になっているのだろう、壁に手を当てながら進まないと歩く足が速くなってしまいそうだ。
 それにこの壁の石、というよりも砂か、かなり脆《もろ》い、触っただけで粉々になる。

 そして、奥の方から漏れる光しか僕達の足下を照らす光は無い、こんな事ならライトを持ってくれば、そう思ったが既に遅いか。

 少し奥の方に進んでいくと声が聞こえ、僕達は足を止また。



『……ロシア語かな?』

『おそらくは……何を言ってるかわかりませんが』

『どうする主様、雫の話だと他にも誰かいるんだよな……この狭い道で戦うのはちょっとな』



 聞き慣れない言葉が耳に入り、頭の中で二人に呼びかける。
 離れた場所にいるであろう連中の小声もここまで聞こえる、という事は、ここで僕達が声を出したら響いてしまうはずだ、向こうにばれるリスクは少しでも下げておきたい。

 僕達はゆっくりと奥へと進む。
 すると広く明るい場所が見えた、そこには三人の男女、男二人に女一人……だが精霊の姿が見えない。

 薄紫色のローブを身に纏い、顔はフードから少し見える程度だ、そして、



『駄目だ……何を言ってるかわからない』

『ああ、どうする主様、一人ぐらいならばれないで殺れるが、後の二人には精霊召喚されると思うぜ』

『私の弓矢も放った時に光が出てしまいます、おそらく気付かれるでしょう、どうしますか?』



 指示を仰がれるが、全く考えが浮かばない。
 エンリヒートは一対一には強いが、一対多だと厳しいのか。
 カノンの出してくれた弓は確かに光が出てたし……どうするか。

 そんな時、カノンが何かを思い出した。



『いけるかどうかわかりませんが……眠らせてみましょうか?』

『……ああ、そういえば。他に良い方法も無いし、やってみようか、無理だったら力業で、ねっ』

『主様らしくないな……力業なんて、いつもみたいに完璧な作戦を用意してくれると思ったんだが』

『……僕をどんな人間だと思ってるんだい?』

『んー、頭がいい私の旦那様かな?』

『な……なっ』



 エンリヒートの言葉にカノンは勢いよく反応する。
 声を出さなかったから良いが、ちょいちょい二人は緊張感が無くなるな、まあ、それのお陰で落ち着けるから良いけど。
 
 カノンはエンリヒートを睨み付けてから、僕に頷く。



「眠れ眠れ、静かなる永久に、響け歌声━━精霊達の子守歌《ララバイ》」 



 詠唱は声を出さなくてはいけない、いくら小さな声で詠唱したからといって、おそらく彼らの耳にも声が聞こえていたのだろう、すぐにこちらに振り向くが、一瞬にして意識を取り除けた。

 三人……いや二人だけだ、女性はまだ意識がある、すぐに精霊を呼ぼうとしていた。



「━━炎蒼刃《えんそうじん》!」



 だが、エンリヒートの動きの方が速い。
 青い炎を纏った日本刀を振り降ろし、一瞬にして地に伏せさせる。
 なんとかなったが、



「誰がリドーニャの召喚士なんだ?」

「誰も精霊呼んでなかったからわからねえな」

『━━如月さん!』



 不意に雫の声が僕達の頭の中に響く。



『どうしたの!?』

『リドーニャの居場所がわかりました、もうそこにはいません! 入れ違いで外に出ました!』

『えっ!?』



 まさか、見落としていたのか?
 僕達はこの召喚士を置いて、来た道を外に出る。

 別に油断していたわけじゃない、暗かったから見落とした可能性が高い。

 だけどどうやって?

 足を滑らさないように下を見て歩いた、なのにどうして。



「主様、おそらく天井を渡ったのかもしれません!」

「天井!? 天井をどうやって」

「私はてっきり妖精みたいのを想像していたんだが、もしかしたら人形とか妖精とか、そんなんじゃなくて、爬虫類みたいな生き物だったんじゃないか?」

「それなら天井を渡って逃げる事は余裕か、くそっ」



 完全に考えてなかった。
 僕も妖精とか小人とか小さな精霊を想像していた、普段見ていた生き物の精霊は大きいから。



「……何処だ!」



 外に出て来たが、広いと全くわからない。
 小さな生き物を見つけるなんてできるのか、もう一度雫に頼もう、そう思った時、



「如月君? 捜し物はこれ?」



 声をかけられた。
 そこには見知った顔の女性、そして手には緑色の皮膚の爬虫類を、つまんでいた?



「星菜さん……どうしてここに?」
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