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第2章
第13話 侍女長サーシャの視点1-2
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「オリビア、私たちの国では《白亜の平和》という意味があるわ。素敵なお名前ね」
「あ、ありがとうございます」
「ねえ、オリビア。魔物討伐はディートハルトに任せて、貴女は私たちの国で暮らさない?」
「うむ。セドリックが懐いているのなら妙案だ」
「え」
オリビア様はたいそう驚かれていました。何せこの数分で彼女の好感度が爆上げされたのですから。そしかも本人は無自覚なようですし、困惑するのも仕方がないでしょう。それにおそらく彼女は自分が求愛されている──というのも気づいていないようです。
今後のことも含めてご説明と、予定を立てようとしたその時でした。
ノックも無しに部屋にやってきたのは、白髪交じりの中年の男でした。身なりだけは上質な布に両手には宝石と貴族というより商売人と雰囲気が強く、贅肉まみれで品性の欠片も感じられない──模範的な下等生物の登場でした。
「オリビア! 何をしておる! 貴族院からの催促も来ているのだぞ、さっさと魔物討伐に行って来んか! この役立たずが!」
イラーナ様たちが見えていないのか、部屋に入ってくるなりオリビア様の髪を力いっぱい掴み、部屋を出ようとしました。
「いっ……。お父様っ……」
「大規模な魔物の大群を退ければ、お前もクリフォード家の末席に加えてやろう。ずっとお前が望んだ家族との時間も作れるんだ。喜べ」
「…………」
若い少女に乱暴を働こうとするのを見るだけで気分が悪いものですが、それ以上にセドリック様の伴侶となられるであろうという女性に対しての扱いだと思うと殺意が湧きました。
そしてそれは、わたくしだけではなく、その場にいたイラーナ様、前王様、ディートハルト様も同じようでした。
一瞬にして空気が凍りつきます。この段階で、他種族であれば命乞いをするレベルでしょう。しかし頭に血が上った中年の男は全く気付いていないようです。トマトのように顔を真っ赤にして激昂しているではありませんか。あまりにも力の差が離れてしまうと分からないのでしょうか。「いっそトマトのように潰して差し上げようかしら」と思った瞬間、部屋を連れ出されようとしていたオリビア様は中年の男の腕を力いっぱい掴み、投げ技で床に叩きつけたのです。
「ぐっ、があああああああ」
「いい加減にしてください、クリフォード侯爵。客人の前でフィデス王国の顔に泥を塗るおつもりですか」
見事なまでの手さばきでした。空気の読めるオリビア様は、このままではこの国が滅ぶとでも判断したのでしょう。実力行使に出た判断は英断だと称賛に値します。本当に素晴らしい。
愚かな中年の男は受け身も取れず、床にへばりつきながらオリビア様を睨みつけました。ああ、本当に何もわかっていない、脳味噌がないのかもしれませんね。わたくしが一歩前に出かけた瞬間、先に割り込んだのはディートハルト様でした。
「この国では他国の来賓の前で、醜態を見せるのがしきたりなのか? ……クリフォード侯爵、だったか」
「誰に向かって──ひっ」
中年の男はソファに座っていたイラーナ様たちにようやく気付いたらしく、真っ赤な顔が一瞬で真っ青に変わりました。面白いぐらい情緒が不安定な方なようですね。今までの醜態を必死で取り繕うと、立ち上がり愛想笑いを浮かべました。なんでしょう、腹が立ってきたのですが。ディートハルト様が「良い」と言えば瞬殺したいのですが。
「こ、こ、これは──竜魔王陛下! も、申し訳ございません! 貴方様がいらっしゃったとは伺っておらず、大変失礼な真似を致しました!」
「お前と話す気はない、早々に立ち去れ」
「ははっ! 失礼しました。ほら、いくぞ。オリビア!」
「いや。出て行くのは侯爵お前ひとりだ。我らは彼女と話がある」
「え、この娘が……ですか? 竜魔王陛下、馬鹿娘は長く辺境の地におりまして、社交辞令や礼儀が全く分かっておらず」
「二度は言わん。それとも侯爵は爵位に興味がないのか?」
「と、とんでもございません! 失礼します」
脱兎の如く中年の男は部屋を飛び出して行きました。最初から最後まで貴族らしからぬ品性に欠けた下等生物でした。静かになった後、オリビア様はディートハルト様に頭を下げて謝罪をします。貴女様が謝罪することなどないというのに。
「頭を上げるといい。謝罪も不要だ。……時にオリビア、そなたは厄介な悪魔族に狙われたものだな」
「え。悪魔族……ですか」
「ああ。何となく──だったが、先ほどの侯爵を見て分かった。そなた幼少の頃より、同族だけに嫌悪感や敵意や殺意を向けられることなどはなかったか?」
「!」
オリビア様には身に覚えがあったようで、ハッとした顔をしていました。それから聞いたところ、妹が生まれてから、いえ魔導士としての才覚が出てきた辺りから、家族を中心に風当たりが酷くなっていったというのです。
確かに先ほどの男はディートハルト様がいるにもかかわらず、オリビア様を貶めることしか考えていなかったように見受けられました。まるで洗脳とでもいうような──そこで、悪魔は『負の感情』をなによりも好む偏食家であると思い出しました。本当にあまりにも昔の事だったのでうっかり忘れていたのです。
「そなたの有能さをうまく利用されたな。だが、そうなると我らの管轄にもなる。……《原初の七大悪魔》の討伐に力を借りたい」
「わ、私の力……ですか?」
「そうだ。そなたに頼みたい」
「……では一つ約束を。悪魔族であっても心根が優しい者に関しては、討伐の対象外にして頂けますでしょうか。悪魔族だからと言って、全ての悪魔が悪い子ではないから」
その瞬間、わたくしは衝撃を受けました。ええ、それはもう。まさかそんな稀有なことを口にする者が、再び現れるなど思っても見なかったのです。だからあの瞬間、オリビア様はわたくしにとってもかけがえのない大切な一人に加わりました。
それとのちにセドリック様と共に悪魔族と天使族を保護していると聞いて、ディートハルト様は爆笑したものです。「三大勢力の一角が揃いも揃って人族に惹かれるとはな! そなたはやはり面白い」と上機嫌でした。言葉通り悪魔族のダグラス様は、セドリック様の友人として成長を遂げ、支えることになります。
百年前のあの日、魔物の討伐に向かったのはディートハルト様、奥様のクロエ様、そしてオリビア様でした。
表向きは大量の魔物が発生したため、最後の手段として国中に石化魔法を施した──となっていますが、実際は《原初の七大悪魔》の一角を打つための苦肉の策でした。フィデス王国とグラシェ国に大きな影を落としていた悪魔の力は、予想の遥か上で百年かけて力を削ぎ、戦力を整え大詰め──と言ったところで、オリビア様を復活させたところまでは完璧でした。安全だと思っていた場内に内通者──いえ、悪魔本人がいたのですから、やられました。
その悪魔はオリビア様を絶望させることにご執心でした。
三年後に戻ってきたオリビア様は、酷くやつれて心が死にかけているようで、見ていて痛々しく、泣きそうになりました。
誇り高かった彼女、脆弱だけれど心根は優しくて、強かった姿はどこにもありませんでした。そしておそらくこれこそ、あの悪魔の望んだ姿なのでしょう。絶望の淵で、哀れで甘美な魂を奪おうとした。
その気持ちが──わからなくはありません。美しいものを自分色に染めて真っ黒に染まった瞬間の高揚感は、筆舌に尽くしがたい。初代竜魔王と出会う前のわたくしなら、そう思ったのでしょう。同じ《原初の七大悪魔》その一角、強欲として──。
(それにしても、グラシェ国と、わたくしの大切な者に手を出したのですから、許す必要はなさそうですね。フフフッ)
「あ、ありがとうございます」
「ねえ、オリビア。魔物討伐はディートハルトに任せて、貴女は私たちの国で暮らさない?」
「うむ。セドリックが懐いているのなら妙案だ」
「え」
オリビア様はたいそう驚かれていました。何せこの数分で彼女の好感度が爆上げされたのですから。そしかも本人は無自覚なようですし、困惑するのも仕方がないでしょう。それにおそらく彼女は自分が求愛されている──というのも気づいていないようです。
今後のことも含めてご説明と、予定を立てようとしたその時でした。
ノックも無しに部屋にやってきたのは、白髪交じりの中年の男でした。身なりだけは上質な布に両手には宝石と貴族というより商売人と雰囲気が強く、贅肉まみれで品性の欠片も感じられない──模範的な下等生物の登場でした。
「オリビア! 何をしておる! 貴族院からの催促も来ているのだぞ、さっさと魔物討伐に行って来んか! この役立たずが!」
イラーナ様たちが見えていないのか、部屋に入ってくるなりオリビア様の髪を力いっぱい掴み、部屋を出ようとしました。
「いっ……。お父様っ……」
「大規模な魔物の大群を退ければ、お前もクリフォード家の末席に加えてやろう。ずっとお前が望んだ家族との時間も作れるんだ。喜べ」
「…………」
若い少女に乱暴を働こうとするのを見るだけで気分が悪いものですが、それ以上にセドリック様の伴侶となられるであろうという女性に対しての扱いだと思うと殺意が湧きました。
そしてそれは、わたくしだけではなく、その場にいたイラーナ様、前王様、ディートハルト様も同じようでした。
一瞬にして空気が凍りつきます。この段階で、他種族であれば命乞いをするレベルでしょう。しかし頭に血が上った中年の男は全く気付いていないようです。トマトのように顔を真っ赤にして激昂しているではありませんか。あまりにも力の差が離れてしまうと分からないのでしょうか。「いっそトマトのように潰して差し上げようかしら」と思った瞬間、部屋を連れ出されようとしていたオリビア様は中年の男の腕を力いっぱい掴み、投げ技で床に叩きつけたのです。
「ぐっ、があああああああ」
「いい加減にしてください、クリフォード侯爵。客人の前でフィデス王国の顔に泥を塗るおつもりですか」
見事なまでの手さばきでした。空気の読めるオリビア様は、このままではこの国が滅ぶとでも判断したのでしょう。実力行使に出た判断は英断だと称賛に値します。本当に素晴らしい。
愚かな中年の男は受け身も取れず、床にへばりつきながらオリビア様を睨みつけました。ああ、本当に何もわかっていない、脳味噌がないのかもしれませんね。わたくしが一歩前に出かけた瞬間、先に割り込んだのはディートハルト様でした。
「この国では他国の来賓の前で、醜態を見せるのがしきたりなのか? ……クリフォード侯爵、だったか」
「誰に向かって──ひっ」
中年の男はソファに座っていたイラーナ様たちにようやく気付いたらしく、真っ赤な顔が一瞬で真っ青に変わりました。面白いぐらい情緒が不安定な方なようですね。今までの醜態を必死で取り繕うと、立ち上がり愛想笑いを浮かべました。なんでしょう、腹が立ってきたのですが。ディートハルト様が「良い」と言えば瞬殺したいのですが。
「こ、こ、これは──竜魔王陛下! も、申し訳ございません! 貴方様がいらっしゃったとは伺っておらず、大変失礼な真似を致しました!」
「お前と話す気はない、早々に立ち去れ」
「ははっ! 失礼しました。ほら、いくぞ。オリビア!」
「いや。出て行くのは侯爵お前ひとりだ。我らは彼女と話がある」
「え、この娘が……ですか? 竜魔王陛下、馬鹿娘は長く辺境の地におりまして、社交辞令や礼儀が全く分かっておらず」
「二度は言わん。それとも侯爵は爵位に興味がないのか?」
「と、とんでもございません! 失礼します」
脱兎の如く中年の男は部屋を飛び出して行きました。最初から最後まで貴族らしからぬ品性に欠けた下等生物でした。静かになった後、オリビア様はディートハルト様に頭を下げて謝罪をします。貴女様が謝罪することなどないというのに。
「頭を上げるといい。謝罪も不要だ。……時にオリビア、そなたは厄介な悪魔族に狙われたものだな」
「え。悪魔族……ですか」
「ああ。何となく──だったが、先ほどの侯爵を見て分かった。そなた幼少の頃より、同族だけに嫌悪感や敵意や殺意を向けられることなどはなかったか?」
「!」
オリビア様には身に覚えがあったようで、ハッとした顔をしていました。それから聞いたところ、妹が生まれてから、いえ魔導士としての才覚が出てきた辺りから、家族を中心に風当たりが酷くなっていったというのです。
確かに先ほどの男はディートハルト様がいるにもかかわらず、オリビア様を貶めることしか考えていなかったように見受けられました。まるで洗脳とでもいうような──そこで、悪魔は『負の感情』をなによりも好む偏食家であると思い出しました。本当にあまりにも昔の事だったのでうっかり忘れていたのです。
「そなたの有能さをうまく利用されたな。だが、そうなると我らの管轄にもなる。……《原初の七大悪魔》の討伐に力を借りたい」
「わ、私の力……ですか?」
「そうだ。そなたに頼みたい」
「……では一つ約束を。悪魔族であっても心根が優しい者に関しては、討伐の対象外にして頂けますでしょうか。悪魔族だからと言って、全ての悪魔が悪い子ではないから」
その瞬間、わたくしは衝撃を受けました。ええ、それはもう。まさかそんな稀有なことを口にする者が、再び現れるなど思っても見なかったのです。だからあの瞬間、オリビア様はわたくしにとってもかけがえのない大切な一人に加わりました。
それとのちにセドリック様と共に悪魔族と天使族を保護していると聞いて、ディートハルト様は爆笑したものです。「三大勢力の一角が揃いも揃って人族に惹かれるとはな! そなたはやはり面白い」と上機嫌でした。言葉通り悪魔族のダグラス様は、セドリック様の友人として成長を遂げ、支えることになります。
百年前のあの日、魔物の討伐に向かったのはディートハルト様、奥様のクロエ様、そしてオリビア様でした。
表向きは大量の魔物が発生したため、最後の手段として国中に石化魔法を施した──となっていますが、実際は《原初の七大悪魔》の一角を打つための苦肉の策でした。フィデス王国とグラシェ国に大きな影を落としていた悪魔の力は、予想の遥か上で百年かけて力を削ぎ、戦力を整え大詰め──と言ったところで、オリビア様を復活させたところまでは完璧でした。安全だと思っていた場内に内通者──いえ、悪魔本人がいたのですから、やられました。
その悪魔はオリビア様を絶望させることにご執心でした。
三年後に戻ってきたオリビア様は、酷くやつれて心が死にかけているようで、見ていて痛々しく、泣きそうになりました。
誇り高かった彼女、脆弱だけれど心根は優しくて、強かった姿はどこにもありませんでした。そしておそらくこれこそ、あの悪魔の望んだ姿なのでしょう。絶望の淵で、哀れで甘美な魂を奪おうとした。
その気持ちが──わからなくはありません。美しいものを自分色に染めて真っ黒に染まった瞬間の高揚感は、筆舌に尽くしがたい。初代竜魔王と出会う前のわたくしなら、そう思ったのでしょう。同じ《原初の七大悪魔》その一角、強欲として──。
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