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第5章
第72話 言葉にすることの大事さ
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(そういえばお兄様とフェイ様って、昔から何を張り合っていたのかしら?)
「それでは私も先に失礼するわ」
「お母様の今日のご予定は?」
「グエン国王との会議です。その後は第六王子の母君のお茶会に参加する予定よ」
母様の笑みは凛々しくてカッコいい。堂々として威厳もあり、聡明で強い信念を持っている。私の憧れであり、大好きなお母様。「いつか私もお母様のようにカッコいい人になりたいですわ」と言った時、優しく抱きしめてくれた。次期女王の顔をする時は、お母様に真似ているところが大きい。
(会議でお母様のカッコいい姿を見るのは駄目かしら?)
「フェイ、貴方とソフィは何か予定があるの? 一応、後継者候補たちが滞在中はおもてなしをすると聞いているのだけれど」
「あ、えっと……」
「先ほど第七王子から『城内広場の視察に参加してはどうか』と招待を受けましたので、ソフィさえよければ向かおうかと」
(城内広場の視察?)
私にはいまいちピンとこなかったが、お母様は何があるのかすぐに分かったようだ。さすがお母様!
「ああ、ちょうど城に商隊が来ているのね」
「キャラバン……?」
「スペード夜王国の各地を巡って商品の輸送を行う商業組合の一つだ。各地の様々な品々を、定期的に城内で販売している」
「地域の原産品ですか。なんだか楽しそうですね」
ダイヤ王国では国同士の大きな貿易しかなく、個々人や民間などでの取引は殆どなかったので興味が湧いた。
「私が若いころはダイヤ王国にも他国の商隊が訪れることはあったのだけれど、最近は妖精たちの許可が下りる商隊はあまり見ないわね」
「ダイヤ王国の人たちは人を信じやすい。それ故、法外な値段を吹っ掛けられることもあるので、年々商業者の入国審査が厳しくなってしまうのは仕方がないかと」
(お母様もフェイ様も、色々な経験をなさっているからダイヤ王国との相違に気づかれるのね)
二人を尊敬すると同時に、自分が次期女王として他国の知識が乏しいことが恥ずかしかった。今回の旅行がなければ気づかなかっただろう。
時間跳躍を繰り返していても女王として、あまりにも他国のことを知らな過ぎた。それが破滅に向かった要因の一つだと思い知る。
(ああ、本当に私はなんで無力で不甲斐なくて……情けないのだろう)
「ソフィ。知らなかったと気づけたのなら、学べばいいだけだろう」
「フェイ様」
この方は本当に私の事をよく見ている。そしてその時に欲しいと思う言葉をくれるのだ。逆に私はフェイ様に言葉をかけているだろうか。
私ばかり大事にされているけれど、フェイ様に何か出来ること──。
「ソフィが頑張り屋さんなのはみんな知っているわ。知らないものを知らないと認めて少しずつ学んでいけばいいの。貴女の隣には、支えてくれる殿方がいるのだから」
「お母様、ありがとう」
突然の手の甲に重みとぬくもりを感じ視線を下ろした。自分の手にフェイ様の手が重なっているではないか。たったそれだけのことがとても嬉しくて、恥ずかしくて、胸がいっぱいになる。
「王妃がいうように、ソフィには私がいるのを忘れないで欲しい」
「……はい、フェイ様」
次期女王としてまだまだ未熟だけれど、それでもいいと言ってくれたフェイ様に感謝しても足りないだろう。背中を押してくれたお母様の言葉も大きい。
「ふふっ」
「ソフィ?」
「私、これからはもっとフェイ様が好きだって、口にするわ」
「!」
「あらあら」
フェイ様の耳が赤くなり、つられて私も顔が熱くなる。照れたフェイ様も素敵で「フェイ様が好き」だと自分でも不思議なほど惚気ることが出てきた。
「それでは私も先に失礼するわ」
「お母様の今日のご予定は?」
「グエン国王との会議です。その後は第六王子の母君のお茶会に参加する予定よ」
母様の笑みは凛々しくてカッコいい。堂々として威厳もあり、聡明で強い信念を持っている。私の憧れであり、大好きなお母様。「いつか私もお母様のようにカッコいい人になりたいですわ」と言った時、優しく抱きしめてくれた。次期女王の顔をする時は、お母様に真似ているところが大きい。
(会議でお母様のカッコいい姿を見るのは駄目かしら?)
「フェイ、貴方とソフィは何か予定があるの? 一応、後継者候補たちが滞在中はおもてなしをすると聞いているのだけれど」
「あ、えっと……」
「先ほど第七王子から『城内広場の視察に参加してはどうか』と招待を受けましたので、ソフィさえよければ向かおうかと」
(城内広場の視察?)
私にはいまいちピンとこなかったが、お母様は何があるのかすぐに分かったようだ。さすがお母様!
「ああ、ちょうど城に商隊が来ているのね」
「キャラバン……?」
「スペード夜王国の各地を巡って商品の輸送を行う商業組合の一つだ。各地の様々な品々を、定期的に城内で販売している」
「地域の原産品ですか。なんだか楽しそうですね」
ダイヤ王国では国同士の大きな貿易しかなく、個々人や民間などでの取引は殆どなかったので興味が湧いた。
「私が若いころはダイヤ王国にも他国の商隊が訪れることはあったのだけれど、最近は妖精たちの許可が下りる商隊はあまり見ないわね」
「ダイヤ王国の人たちは人を信じやすい。それ故、法外な値段を吹っ掛けられることもあるので、年々商業者の入国審査が厳しくなってしまうのは仕方がないかと」
(お母様もフェイ様も、色々な経験をなさっているからダイヤ王国との相違に気づかれるのね)
二人を尊敬すると同時に、自分が次期女王として他国の知識が乏しいことが恥ずかしかった。今回の旅行がなければ気づかなかっただろう。
時間跳躍を繰り返していても女王として、あまりにも他国のことを知らな過ぎた。それが破滅に向かった要因の一つだと思い知る。
(ああ、本当に私はなんで無力で不甲斐なくて……情けないのだろう)
「ソフィ。知らなかったと気づけたのなら、学べばいいだけだろう」
「フェイ様」
この方は本当に私の事をよく見ている。そしてその時に欲しいと思う言葉をくれるのだ。逆に私はフェイ様に言葉をかけているだろうか。
私ばかり大事にされているけれど、フェイ様に何か出来ること──。
「ソフィが頑張り屋さんなのはみんな知っているわ。知らないものを知らないと認めて少しずつ学んでいけばいいの。貴女の隣には、支えてくれる殿方がいるのだから」
「お母様、ありがとう」
突然の手の甲に重みとぬくもりを感じ視線を下ろした。自分の手にフェイ様の手が重なっているではないか。たったそれだけのことがとても嬉しくて、恥ずかしくて、胸がいっぱいになる。
「王妃がいうように、ソフィには私がいるのを忘れないで欲しい」
「……はい、フェイ様」
次期女王としてまだまだ未熟だけれど、それでもいいと言ってくれたフェイ様に感謝しても足りないだろう。背中を押してくれたお母様の言葉も大きい。
「ふふっ」
「ソフィ?」
「私、これからはもっとフェイ様が好きだって、口にするわ」
「!」
「あらあら」
フェイ様の耳が赤くなり、つられて私も顔が熱くなる。照れたフェイ様も素敵で「フェイ様が好き」だと自分でも不思議なほど惚気ることが出てきた。
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